続編 モロッコの旅
自称ガイドの有効な利用のしかた
先の旅ですっかりモロッコが気に入った私とるみこさんは、数年後、再びこの地に
戻ってきた。
二度目の旅はもう少し時間をとって、更に奥地(サハラ砂漠の近く)まで足をのばし
たり、フェズといった古都も付け加え、前回訪れたタンジェ、カサブランカ、マラケ
シュにも行った。
カサブランカではハッサンの家を訪ね、妹のサミエルに会って家に泊めてもらったり
と、お世話になった。 今回私が学んだ事は、自称ガイドの有効なつきあいかたであ
る。ずいぶんと、意地の悪い言い方だが、そのぐらいの余裕がなければここでは生き
ていけない。
ガイド達は私たちが街に 着くやいなや、どこからともなく姿をあらわす。
その街に着いたらまず、その日の宿を確保しなければならない。ここでは、ガイドブ
ックなどは役に立たない。地元の自称ガイドが一番良く知っている。 ただし、法外な
ガイド料を請求されたら困るので、なにげなく、 『ホテルはどこかな〜?』 なんて
、一人呟くように日本語で言ってみる。すると、耳のいい彼らは『HOTEL』という言
葉を聞き取って〈あっちだ、こっちだ!〉と、その方向に指を指してくれるので、な
にげなく(あくまでもなにげなく) その方向に行くと、その場所から一番近くて安い
宿がそこにある。
迷路のような街を歩くとき、やはり何人ものガイドがしつこくやって来る。
前回は、迷子になったらどうしよういう恐怖感があって、ガイドを見失わないように
一生懸命ガイドの後をくっついて行ったが、モロッコ人は正直で親切。特に女の人は
信頼できるので、いつでも人は助けてくれる。だから心配の必要はない。
ただし、ガイドはつける。そうしないと断っても断っても、とぎれずやって来る。
一人、頼むと不思議なことに、ピタッとガイドのお誘いはなくなる。ガイド達の情報
網は驚くほど行き届いている。仕事の横取りなんてない。 迷路を歩いていても、迷子
の心配はない私たちなので、ガイドと離れ離れになっても困らないから、好き勝手に
急に面白そうな店に入るのだが、必ずガイドは私たちをみつけてしまう。まるで背中
に目があるみたいだ。迷子はいいけど、るみこさんとはぐれると、面倒である。彼女
はいったい何処に行ってしまったのだろうか?と探していると、ガイドは、あそこに
いるよ!と教えてくれる。ガイドとしては捕まえた客を逃がしたくないだけなのだろ
うが・・・親切である。
今回のモロッコの旅で感心したことは、この国の人達のしたたかさである。決して
悪い意味ではない。
ガイドにしてもかゆいところに手が行き届くサービスにはほとほと感心してしまう。
前回と比べて目をみはるほど、生活が向上して、持ち物や身なりが現代的になってい
た。 できれば、伝統的な服装や、謎めいた独特の雰囲気を失って欲しくないが、私の
好みなど、おかまいなしにこの国は確実に変化をしつつある。
そしてこの国の人は語学が上手だ。前に来たときは、英語を話す人と言えば、一部の
ガイドのみだったが、今回は通りがかりの人も、英語が通じた。 英語ばかりではない。
片言の日本語も覚えてしまった。まあこれは、日本人観光客が増えたためで、観光地な
ら何処でもそうだが、タンジェで街を歩いていると、コンニチハとかサヨウナラなんて、
店先に座っているお兄さんが呼び掛けてくる。最初はこれに反応したら、店のっ品物を
売り付けられたり、ガイドするなんて言ってきたら面倒なので無視していたら、あまり
あちこちでうるさいので、一度返事をしてみたら、ただ、言葉が通じたというだけで喜
んでもらえたので、私たちは挨拶しまくって街を闊歩した。
この国に対して、先入観や誤解が多くて、私たちは構えてしまうが、こちらが恐れて
いるような人達ではないし、やっぱり同じ人間なんだなぁと思う。