24:00+
written by Miyabi KAWAMURA
2007/0110
相手の背に回した腕に力を篭めて、雲雀は息を詰めた。
「……っ、は、ぅ」
口付けられて抱き締められて、そのままベッドに引きずり込まれてもうどれだけ時間が経ったのかなんて分からない。
舌先、唇、上顎。
傷付きやすい湿った薄い粘膜ばかりを、口腔に含まされた相手の舌で悪戯されて、呼吸さえままならず苦しい、と思った時には、下衣を剥がれていた。
「は……っ、ぅあっ!」
「引っ付きすぎだ、恭弥」
苦笑交じりに耳元で囁かれ、それにすらびくっと震えて余計に力が篭る。
雲雀の下肢に添えられたディーノの指は、ずっとゆるゆると動いていて、刺激にとろけ、固くなった雲雀の先端に時折爪を立てては、溢れる液の感触を楽しんでいる様だった。
「動かせないだろ、指」
そんな文句を、言いながら。
けれどディーノは、わざと掌全体で雲雀自身をくちゅりと押し潰す様に愛撫を続ける。色鮮やかな絵が施された跳ね馬の左手は、彼の利き手ではない筈なのに、雲雀の弱い部分を器用に暴いていく。
五指にばらばらに力を篭めながら握り、上下に扱き、とろとろと零れ続ける粘液の行き着く先、雲雀の秘所まで指を辿らせるくせに、ひくつく入り口に揶揄する様に触れると、また離れてしまう。
「……、ん、ぅっ」
「ドロドロだな。……舐めてやろうか?」
「っ……!! ぅあっ!!」
此処、と言って、ディーノは雲雀自身をぎちりと握り、先端を親指で抉る様に刺激した。途端、溢れ出した液体の量は今までの比では無く、ディーノの掌に一時溜まったそれは、すぐに彼の手首にまで流れて汚した。
「恭弥、どうしてほしい?」
「……ん……っ」
「手か、口か。……お前の好きな方、選べ」
「ゃ、……っ、ぁ」
ディーノの身体の下で、雲雀の身体が跳ねる。
未だ成長しきっていない細い少年の肢体は、戦闘行為で負う傷に対しては強いのに、反して与えられる快楽にはひどく敏感だった。
散々に煽られた欲は既に弾けそうで、なのに、雲雀はいつも最後の最後まで、自分から続きを強請る言葉を零そうとはしない。
その頑なさこそを崩してやりたいのだ、と。
雲雀を抱くたびディーノは思うのだが、雲雀自身がその事に気付いているのかどうかは、判らないままだった。
「恭弥」
ディーノは一度手を止めると、その掌で、雲雀の頬を包んだ。
濡れた感触に雲雀は一瞬眉を顰めたが、密着した下肢を擦り付ける様に動かれて、途端に上げた声は掠れてしまった。
皮膚の間で立つ濡れた音。
快楽を溜め込んだ肉塊同士が擦れ、不規則に互いを愛撫し合って、ひどく熱く、けれど同じ位もどかしい快感を生み出していく。
「……ディーっ」
雲雀の声を飲み込む様にして、ディーノは雲雀に口付けた。
ぶつかった柔らかな肉を食んで、咽喉奥深くに差し込んだ舌。
下肢は未だ繋げておらず、触れ合わせたままにしながら、雲雀の口腔だけを犯す。
深く浅く抜き差しする舌の動きは、淫ら以外のなにものでもない。
雲雀の身体も、より深い快楽を拾おうと無意識に動いた。
自分に覆いかぶさるディーノの身体に自身を擦り付けようとして、立てた膝に力が篭り、背がシーツから僅かに浮く。
「っ!! ……んぅ」
熟れきった先端が擦れたのか、雲雀の身体は強く震えたがしかし、嬌声は音になる前にディーノに飲み込まれた。
「んっ……」
「恭弥」
ずる、と引き抜かれる舌を追う様に動いた雲雀のそれを甘噛みすると、ディーノは雲雀の頬に伝った汗と、先刻触れた所為で付いた粘液を舐め取った。そしてそうしながら、もう一度強く下肢を押し付ける。
「んぁ……っ!!」
互いの身体の間で扱かれ続けた部分に走った快感に、雲雀の背が震えた。
「今の恭弥の顔……、すっげークる」
囁くと、ディーノは微笑った。
「……っ、な、に?」
時間をかけての緩慢な快楽に蕩け始めた雲雀の反応は、常に無い覚束なさで、ディーノはそれを間近に見遣ると、柔らかく表情を崩した。
黒い髪を撫で、吐息を零す唇に触れ、瞼の上と両頬に順々に唇を落としてから、ゆっくりと抱き締める。
「……ディー、ノ?」
愛撫する動きを止めて自分の首筋に顔を埋め、大きく息をついた相手を訝しんで、雲雀は口を開いた。
乱れた息を整えながら呼んだ名前は不自然に途切れた上に掠れたが、これ程の至近距離だ。……確実に聞こえている筈なのにしかし、ディーノからの返事は無くて、仕方なく、雲雀も身体の力を抜いた。
かちかち、と、秒針が時を刻む音が、部屋に響く。
ディーノに触れ、そして触れられていた間には気付きもしなかったその音。
スプリングの効いたベッドに沈み込んだ雲雀の視界の外にある時計の針は、きっともう、真夜中を指していることだろう。
ディーノが並盛を訪れたのは、昨日の夕方だった。
そして彼は明日の……否、今日の午前中には、本国へ帰るのだという。
滞在時間は一日どころか、二十四時間に遥かに満たない。
その僅かな間に、雲雀とディーノは戦って、終われば他愛も無い言葉を交わし、そして互いの身体に触れる。
雲雀の内を解しながら、ディーノは普段、雲雀自身も意識していない様な所にまで指と舌を這わせて愛撫する。その刺激にいちいち跳ねる身体を忌々しく思いながらも、けれど気持ちが良いのも本当で。焦らされている内に、思わず「早く、」などと口走ってしまえば、そんな時はもう、ディーノは自分の腕の中から雲雀を逃がそうとはしないのだ。けれど……、
「……足りない」
不意にディーノが呟いた言葉に、天井を見詰めていた雲雀の目が揺れた。
何が、と声音だけは無表情のまま雲雀が聞き返すと、ディーノは肘を突いて上体を起こし真上から、そして真正面から雲雀を見て、続けた。
「恭弥といる時間」
声と一緒に近付いてきた吐息が唇にぶつかり、さらさらとした金色の髪が、雲雀の肌を撫でる。
「二十四時間全部お前といても、全然足りねーって思うのにな」
今日みたいなのは、短すぎだ。
苦笑してそう零した跳ね馬の琥珀色の目は、甘いものと苦いものが同じだけ混ざって融けた様な彩を湛えていて、ひどく感情が読み難い。
ディーノは時々、こういう色の目で、雲雀の事を見る。
並盛で過ごしている間、将来のボンゴレ幹部候補たちに対し如何にも面倒見の良い、そして話のしやすい年長者としての態度を貫き通しているくせに、本来の彼は、自らが率いるファミリーの為なら、手を汚す事も是とされる世界に属する、ひとごろしなのだ。
雲雀と接するときですら、ディーノはその核心に雲雀の手が届かない様に巧く遠ざけていて、けれど雲雀にしてみれば、その「容赦された」状況自体が気に入らない。
「どうして、そんな目をするの」
と、聞いてしまえさえすれば。
ディーノは既に、返す言葉を用意しているに違いなかった。けれど、その答えは多分今よりもっと自分を不愉快にさせる。……その予感があるから、雲雀は敢えて問い質そうとは思わなかった。
そんな、「容赦された」答えには興味など欠片も無いのだ。
「……それで?」
重なっていた視線を外したのは、雲雀が先だった。
「あなたはその時間を、眺めてるだけで浪費したい訳?」
そう言って、視界に入ったディーノの首筋の青い墨に唇を寄せる。
尖らせた舌先で舐め、齧ると、それに応える様に動いたディーノの掌が、雲雀の腰骨から胸にかけてを撫で上げた。
濡れた指先がぶつかった胸の尖りを掠め、途端に固くしこったそこを何度も弄られて、感じた痛みに、雲雀は喉を鳴らした。過分に甘い呻き声と吐息がディーノの耳のすぐ近くで吐き出される。
自分の身体の下で撓る細い肢体。
空いている手でその背を撫でて、何か吹っ切る様に小さく笑うと、ディーノは雲雀の脚に手を掛けた。
膝の裏を掴んで、先刻までの前戯で散々に濡れた部分を晒す様に開かせる。
「確かに……」
言いながら雲雀自身を握り込み、親指で裏筋を幾度も扱く。
先端から溢れた液体を指に絡めると、それを舌で舐め取った。
「こんなにシたがってる恭弥を放っとくのは、勿体無いか」
一度雲雀の胸元に落とした唇を、ディーノはゆっくりと下げていった。
浅い息を付きながら、雲雀は閉じてしまっていた目を開ける。
弱い部分を弄られすぎて浮かんだ涙で、ゆらゆら、と視界が揺れた。
伸ばした指でディーノの金色の髪に触れたときには、もう。
秒針の刻む音など、聞こえなくなっていた。
>>fin.
>>fin.
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