さようなら、小鳥
written by Miyabi KAWAMURA
2010/0405
未来編終了記念3215ペーパーWeb再録
自分は、自分に与えられた仕事に「成功」した。
……確かにそれは、間違いではないのだ。
十年前の世界からやってきた教え子は、彼にとっての「未来の世界」、十年後の並盛で行われている戦いを経て、本当に強くなった。――雲雀恭弥を、鍛える。それがディーノの目的であったのだから、雲雀が炎の生み出し方を覚え、指輪と匣を扱った戦いに慣れてくれることに関しては、なんの問題もない、むしろ喜ぶべきことの筈だった。……その筈だったのに。
「……っ……、ぁ」
細い腰を左右から掴み、穿っていたものを、ゆっくりと引き抜いた。
身体の中を引き摺られる感触が良いのか、ん、と一瞬息を詰めた雲雀が、甘たるい吐息を漏らした。
ディーノは、鳶色の目を眇めた。雲雀の腰を掴んでいる両手に、知らず力が篭もる。
――時間をかけて解し、掻き混ぜてやった中に注いだ白濁。弄られ濡らされて悦んでいる雲雀の中が、甘えるように噛み付いてくる。
「……もっと?」
「ッ……、ゃ、っ」
達したばかりの性器を、狭く未熟な内襞で締め付けられる快感。それに溺れている場合ではないのに、退きかけていた腰をもう一度穿つように揺らしてしまった己を自嘲しながら、けれどディーノは、雲雀に尚も問うた。
「なぁ。……恭弥、もっと?」
聞きながら、腰を掴んでいた手を大腿に滑らせて押し広げ、組み伏せた幼い肢体を二つ折りのようにしていく。
「ん……っ、ぁ、ァ」
自分より十七歳も年上の、体格も体重も何もかも勝る、完全に大人である相手の肉塊を更に奥まで咥え込まされ、雲雀が呻くような声を漏らした。……けれどその語尾は、眉を顰めた苦しげな表情に反し、甘くとろけている。
「ディー、……っ」
「――ッ、は」
むずかるように雲雀が下肢を捻らせた刹那、犯されている身体と犯している身体との間で粘膜が擦れ、ぐちゅりと音が鳴った。――気持ちが良い。殆ど衝動的に、ディーノは雲雀の身体に、体重を乗せた。
「ひ、ぁう……っ」
ぐずついた擦過感と、水音。細くしなやかな肢体を掴んだ両手でベッドに押し付けると、ディーノは二度、三度と腰を揺らした。
「――っ、ぁ、ん……、ッ」
ディーノが雲雀の中を穿つたびに、ぐちゅ、ぐちゅん、と体液が鳴った。
「ン、ぁ……っ、ぅ」
「……恭弥、の……、中、っ」
ぐ、と思い切り体重を乗せて、再び張り詰めた肉塊の切っ先で、狭い内襞を抉る。
「――ッ……、ぃ、ぁっ」
雲雀の中がどんな風に動いて、どんな風に、咥え込まされた肉塊を悦ばせているのか。殆ど無理矢理に耳元に寄せた唇で囁き、耳をも犯してやると、雲雀の身体が朱を刷いたように赤くなった。
「っ、そん、な……、……っ、ゃ」
淫らな言葉を拒むように首を振りながら、けれど後ろの小さな口は、懸命にディーノの雄を食み、もっと奥に飲み込もうと内側を蠢かせている。
「ディー、……っ」
啼いて、自分を犯す男の名前を呼んだ雲雀の腕が、持ち上がった。
キャバッローネの跳ね馬の、引き締まった体躯。情交の熱で滲んだ汗で濡れている背に、白く細い指が、縋るような仕草で添えられる。
「ぁ、ン、ん……ッ」
喘ぐように下肢を捩らせた雲雀が、また啼いた。ぎゅう、ときつく締まった柔襞に硬く熟れた肉塊を搾られ、ディーノの咽喉からも愉悦の滲んだ吐息が零れる。
「恭弥……、っ」
「ディ、……っ、と」
浅く早い、熱を孕んだ呼吸の音が互いの耳朶を掠め、肌を震わせる。
「ッ、も……っ、と」
背にぎちりと喰い込んだ硬い爪。
「ディー、ッ……もっと……っ」
しなやかに喘ぎ、素直に啼き、甘くねだる。雲雀が見せる、幼さの残る媚態に、ディーノの中で抑えようのない欲情が震えた。……抱きたい。奥を暴き中をぐちゃぐちゃに掻き回して、自分の吐き出したもので満たしてやりたい。その思いのまま、穿つ動きを激しくしていく。
「ぅ、ん……ッ、ぁっ」
柔襞の合間を抉られ、奥を突かれて、雲雀が目を見開いた。黒い目を覆っていた透明なものが眦から滑り落ちる。
「ゃ、あ……っ、ぅん」
深すぎる交わりに、雲雀の零す声に啼き声めいた艶が滲んだ。
肉塊を咥え、限界まで開かれてぎちぎちに引き攣れた後ろの口から、白濁液に混じって薄赤いものが滲みだしてくる。――けれど。
「――ッ……ん、ぁ!」
胎内の深い場所、奥尽きの肉を硬い切っ先で突き上げられて、雲雀の前が弾けた。
「……ぁ、ぅ……、っ、ん」
組み敷いた身体がびくびくと痙攣し、薄く開かれた合間から覗く赤い舌が、とろけきった声を零して震える。それでも。
「ッ、ゃ――、ぁ……!」
それでも尚、ディーノは雲雀の身体を穿った。
止められない。欲しい。相手が欲しがる以上に与えて奪って、自分だけのものにしてしまいたかった。……無理な想いだと解っているのに、それでも。
「……ディー、……っ」
「……っ、ああ、」
ひどい抱かれ方をしているのに、けれど自分の名前を呼ぼうとする相手の背に跳ね馬の証が刻まれた腕を回すと、ディーノは雲雀の身体を抱き締めた。
……十年前の世界からやってきた教え子は、強くなった。
炎を生み出す術を完全に覚え、他の誰よりも強くなった。……けれどそれは、諸刃の剣だった。
覚悟の力。――純粋な想いの、望みの力。より強い炎を生み出すために必要なそれをありのままに感じ、ありのままに吐き出すことを覚えた――未来の世界で再び出逢った家庭教師によって、そのことを教え込まれてしまった雲雀は、今まで以上に無防備に甘く、ディーノの下で啼くようになってしまった。
「……っ……」
キャバッローネの跳ね馬の鳶色の目が、険しく、そして甘苦しく顰められた。
――手放せるだろうか。自分は。
この小鳥のことを、いつか。
そう遠くない将来に必ず来る別れのときに、帰してやることが出来るのだろうか。過去へと。……十年前の、自分の腕の中へと。
「ディーノ……っ」
語尾の掠れた啼き声が耳を揺らして、ディーノは雲雀の黒い髪に唇を寄せた。――愛おしい。その想いのまま、幼い身体を貪り続ける。
……他の、誰にも。
いっそ自分自身にすら、この小鳥を渡したくはないのだと。その願いを、自らに突きつけるように。
〈終〉
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