ちくちく、ときどきにゅるん!

written by Miyabi KAWAMURA
2010/0723
2010/0627発行「ちくちく、ときどきにゅるん!」お試し読み



*御案内*

こちらは、2010年6月27日に発行致しました
「ちくちく、ときどきにゅるん!」のお試し読みです。

御参考程度の本文一部抜粋です。
それでもいいよ、と思って下さる方のみ御覧下さいませ。

尚、web上で読みやすくなるように、改行等、書式を一部変えてupしています。
ディノヒバ以外に、
触手×雲雀要素があります!
お試し読み部分はディノヒバ要素のみですが、同人誌をお買い求めの際はお気をつけ下さい。


*  *  *  *  *  * 




「来てたの」


 さらりと掛けられた声。通信機器を通してではなく、直接に聞くのは久しぶりのその声を愉しみつつも、キャバッローネの跳ね馬は、しばし黙り込んだ。

「何?」

 その反応を訝しく思ったのか、ボンゴレの現雲の守護者にして風紀財団委員長たる雲雀恭弥が、僅かに首を傾げる。
 今や裏社会に隠然たる地位を確保した組織の本部とは思えない、どこか芸術めいた趣すら感じさせる内装の廊下は、雲雀の好みなのか、黒漆塗りの格子に張られた障子から滲む淡い明かりに満たされている。首を傾げた雲雀の、頬の稜線。出会った頃の印象を残す柔らかなそれが、この場所を満たす明かりに照らされる様を実はディーノは密かに気に入っているのだが、しかし。

「なんだそれ。怪我してんじゃねーか」

 ……そうなのだ。雲雀の右頬には、つい今しがた何かで切られたばかりのような、一筋の赤い線があった。否、それだけではない。身に着けている黒いスーツの腕のあたりは裂け、砂埃のようなもので汚れてしまっている。極め付けが、手に握ったままになっているトンファーだ。右手のそれは先端が潰れて欠け、左手のそれは、全体的に削れてしまっている。

――まるで、戦った後のような姿だ。

 というか、戦った後だって、こんな風にはならないだろう。雲雀は、強い。天性の才のある体術に加えて、指輪と炎、匣とを使って戦う術を覚えてから、雲雀は強すぎるくらいに強くなった。その彼に苦戦を強いる可能性がある相手なんて、あまりにも限られている。心当たりのある数人の顔が脳裏に浮かんで、ディーノは僅かに眉を顰めた。真っ先に浮かんだのは、ボンゴレ十代目とその守護者達。そして、かつて大ボンゴレの当主の座を求めて争いを起こした古い知己の顔だった。けれど、まさか。

「違うよ」

 ディーノの考えているところに気付いたのか、短く言ってトンファーを匣に戻した雲雀が、歩き出した。


「あなたに何か言われなきゃならないようなことはしてない」






<中略>






「……っ」

 下肢と下肢とが、重なる。衣服越しでも伝わる互いの欲情の兆しに雲雀が瞼を震わせた刹那、ディーノはまるで繋がっているときのように、下肢を揺すり上げた。

「――ッ、ぁ、ん……ッ」
「……は、っ」

 二度、三度と繰り返す内に、もどかしいばかりだった快感が、だからこそ逆に耐え切れないような刺激に変わっていく。

「……や、ぅ、あっ」

 背の下に敷いた寝具をきつく握り締めて耐えていた雲雀の手が持ち上がり、触れたディーノの背に――未だスーツのジャケットすら脱いでいないディーノの背に爪を立てる。

「恭弥……、っ」
「ン、んん……、ッ」

 雲雀の唇を齧るようにしながら名前を呼ぶと、ディーノは自分のそれで、雲雀の唇を覆った。舌先を絡め、口腔の粘膜を深く交わらせていきながら下肢を揺らす。

「ディ、……ッ、ゃ、あっ」

 いつの間にか潤みきってしまっていた黒い目をきつく閉じた雲雀の下肢は、もう勝手に動き始めていた。もっとして欲しいと言わんばかりに立てた膝で男の身体を挟み、腰を捩るようにして自らの中心を押し当てていく。身に着けたままの下衣の内側で熟れてしまった雲雀自身からは蜜が溢れ、濡れた布に性器が擦られる度にぐずついた感触が生まれて、雲雀の理性をとろけさせた。
 ねだるように喘ぎ腰を揺らす雲雀の眦に口付けると、ディーノは鳶色の目を甘く眇めた。……もっと深く、貪るように奪い合いたいのは、ディーノとて同じだ。けれど敢えてディーノは、背に縋る雲雀の手を引き剥がした。身体を起こし、一つ息を吐いて自らの快感を噛み殺すと、長い指で雲雀の髪を梳いてやる。

「……恭弥、どこが『痛い』?」

 低く掠れた声が音にしたのは、意地の悪い問い掛けだった。
 先刻素直に怪我の在り処を、それを負った理由を話そうとしなかった雲雀への意趣返しだと、簡単に解る言葉。

「……、……っ」

 息を詰まらせ、睨み付けてくる雲雀の視線を、ディーノは臆する気配もなく受け止めた。――シャツを裂かれ露わになった肌も、潤みきった黒い目の眦も、失った刺激を欲しがってもどかしげに捩られる下肢も、全てが雲雀の限界を物語っている。

「教えてくれよ。オレに」
「ふ、ぁ……っ」

 細かに震えている下腹を撫ぜ、下衣の中に浅く指を潜らせると、噛み締めた唇の合間から雲雀が声を零した。

 ――そこじゃない。触れて欲しいのは、あともう少し先なのに。……一方的に嬲られる悔しさと、隠し切れない快感。ディーノによって開かれ余すところなく愛撫され尽くしてきた雲雀の身体は、ディーノの指に、掌に、唇に、そして声に、ときとしてひどく弱い。出会ってから十年近く経た今でも、それは同じだった。

「恭弥」
「っ……、ッ」

 促すように腰骨の内側を爪で掻かれて、雲雀は目を閉じた。息を殺し、躊躇う指を、ゆっくりと己の下肢に向かわせていく。

「――ん、っ」

 かちゃ、と、ベルトの金具が擦れる音が立った。普段なら気にも留めないようなその音が、いやに耳に響く。もつれる指でベルトを緩めて、スーツの下衣の、前立てに手を掛けた。心臓の音が頭の中で煩く、忙しなく響く。……ディーノはもう、何も言ってはくれない。ここから先は、雲雀自身に選ばせるつもりなのだろう。雲雀が自ら前を寛げ、熟れきってしまった肉塊を掴み引き摺り出すまでの全てを、あの鳶色の目で見詰めているつもりに違いない。――そうだ、全て見詰められて、そして……。

「……ッ、ふ、ぅ」

 ぞわりとした熱く濃い快感が、雲雀の腰奥でうねった。……見詰められるだけで、済む筈がない。数えられない位に刻まれた愛撫の記憶を脳が勝手に辿りだして、雲雀の身体を動かしていく。









>>6月27日「じゃじゃ馬再調教2」新刊のお試し読みです。
ディノヒバ+触手×雲雀という、ミヤビの趣味に走った一冊です。

リブレットさんにて委託販売が開始されております。
よろしければ御利用下さいvv


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