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透明と赤と白
written by Miyabi KAWAMURA
2007/0224
DH_R15.M12>2月のお題>流血でびしょびしょ。







 シャワーを浴びて部屋に戻ると、大画面のテレビには、見覚えのある映像が映っていた。


「恭弥。恭弥恭弥」
「……何してるの」
「いいから」


 手招きして自分を呼ぶディーノは、ソファに座ってクッションを両腕に抱き締めている。雲雀が近付いていくと、彼はぽい、とそれを放り出し、代わりに雲雀を自分の膝の間に座らせて、後ろから抱いた。

「やっぱお前が、一番抱き心地良い」

雲雀の身体の前で組んだ腕に、ぎゅう、と力が篭められる。
離せと抗っても意味は無さそうな雰囲気なので、雲雀はそのままの体勢で手にしていたペットボトルのキャップを捻った。
冷たいミネラルウォーターは、ガスの入っていないタイプのものだ。硬水のかちりとした風味が、シャワーを浴びて熱を帯びた咽喉を滑り落ちていく。

「濡れるよ」

 雲雀の黒い髪は未だ濡れていて、毛先から零れた雫が、厚いタオル地のバスローブに吸い込まれていく。

ボンゴレが新しい幹部の為にと用意した居室を早々に抜け出し、自分で選んだ住処で暮らし始めた際、必要なものは適当に調達すればいいと考えた雲雀だが、柔らかな肌触りのこれだけは持ってきてしまった。着心地の良さを気に入ったのがその理由で、けれど改めて自分で探して用意する程の手間を掛けたくなかったのも大きい。

滴る雫はバスローブだけでなく、ディーノの袖をもかなり濡らしているのだが、しかし本人は気にしていない様だ。雲雀の右肩に顎を乗せ、時折首筋に唇を寄せながら、テレビに映る映像を目で追っている。

「ひとりで観れないくらい怖いなら、消せば」
「んー、あと少しでラストだしなー」

最後まで観る、と言い切って、けれど自分を離そうとしない跳ね馬に溜息を零すと、雲雀も画面に目を遣る。


 有名な、映画だった。
宇宙船の乗組員である主人公が、凶暴な異星人と遭遇し、戦う話。
仲間が次々と殺されていく中、生き残った彼女は地球へと生還するのだが、確か第四作目で、彼女も命を落とすのではなかったか。
今映っているものはその第一作目で、二十数年前、雲雀が生まれる以前に作られたものだ。シンプルだが確実に観客の恐怖を煽るその作風は絶賛され、主人公は「ハリウッド史上最も強く美しいヒロイン」と称された名作である。特に映画に興味を持っている訳ではない雲雀ですら、あらすじ位は知っていた。


ガガガガ、と機関銃の破砕音が響いた後、沈黙を挟み聞こえる、人外の不気味な呼吸。


突然背後の暗がりに引きずりこまれた仲間を主人公が振り返った瞬間、ばしゃ、とその顔に血飛沫がかかる。叫び、逃げ惑う仲間。そしてそれを叱咤し指揮を執る彼女。
当然だが、セリフは全て英語でそして、画面下部に添えられた字幕はイタリア語。日本語の字幕に馴れた雲雀の目には少しばかり違和感が有るが、此処はイタリアなのだから仕方無い。

……キャバッローネファミリーのボスであるだけでなく、一企業のトップも務めるディーノは母国語以外に英語も能くするが、こういうときは、どちらの言語で話を理解しているのだろうか。

ふと他愛無い疑問にかられ、先刻から自分の右肩に懐いているディーノの方を見遣った雲雀は、その思いがけない近さに一瞬、戸惑った。


彫りの深い横顔に、金色をした長めの前髪がかかっている。
琥珀色の目に時折被る睫毛は、髪よりも少し昏い色味をしていて長い。
二人の身長差故、ディーノの横顔を同じ目線の高さで、しかもこんな至近距離で見る機会は、普段あまり無いのだ。


 視線を感じたのか、不意にディーノが雲雀の方を見た。

「なに? 恭弥」
「……別に」

琥珀色の目の中に映りこんだ自分に気付いて、雲雀は目を逸らした。……が、髪と髪が触れる程に顔を近付けられて悪戯の様に耳を舐められ、びくり、と肩を揺らしてしまった。

「……ッ、……っ」
「わかった。本当は、恭弥も怖いんだろ?」
「誰が……っ」

的外れ且つ不名誉な事を決めつけられて、反論しようとした瞬間、ディーノの左手が背後から雲雀の顎を捉え、テレビの方へ向けた。

タイミング良く・・・否、悪くだろうか、雲雀の目に飛び込んで来たのは、乗組員の一人が絶命するシーンだ。異星人の長く尖った尾で鳩尾を刺し貫かれ、画面が赤く染まる。……しかしそれを観て、ぅわ、と声を漏らしたのは、雲雀ではなく跳ね馬だった。

「怖がってるのは、そっちじゃないの」
「怖くねーよ」
「潔く認めたら。見苦しいだけだよ」
「なんだよ。信じてねーだろお前」
「べつに。……僕はもう寝るから。ここからは、あなたひとりで観ればいい」

自分の身体の前で組まれたディーノの腕を掴んで外させると、雲雀は立ち上がった。……つもりだったのだが、背後から腰を掴まれ、再びソファに引き戻されてしまう。

「何する……っ」

勢いで、雲雀の手の中のペットボトルの水が波立った。
羽交い絞めに近い体勢に身体を捻るが、自分より一回り以上体格に勝る相手の腕に、抱きこまれているのだ。その上後ろを取られてしまっていては、如何に雲雀といえども、抜け出るのは困難だった。

「……今日の恭弥は、生意気だな」

揶揄を過分に含んだ声が耳元で聞こえた、と思った刹那、雲雀の両膝が掴まれ、左右に割られる。

「ディー……ッ、!!」
「もう少しだけ、此処にいろよ」

乱れたバスローブの合わせから入り込んだ指が、雲雀の脚の内側、柔らかで薄い皮膚の張った箇所を撫で上げる。
シャワーの名残の湿り気を帯びたままの肌は、触れられ馴れた長い指から加えられる刺激に従順だった。

雲雀の理性を裏切って、好き勝手に探る指に吸い付く。

ディーノが両腕で捕らえた肢体が細かく震え、浅い吐息を零し始めるのに、そう時間は掛からなかった。











 「……、ゃあ……ぅ」

胸元の、固くなった部分を押し潰す様にされて、雲雀は仰け反った。
舌先で耳を探られ、それに息を詰めると、今度は敏感になった胸の飾りを爪で弄られる。

「痛・・ッ……、!」
「……でも、気持ちいいんだよな、恭弥は?」

痛みを感じた瞬間、下肢に這っていたディーノの左手が、下着の上から雲雀自身を強く擦った。

痛みと快感、背後から回された腕によって交互に与えられる感覚に、びくびくと跳ねる身体。雲雀が痛みに身体を捩ると、それに合わせてディーノは指の腹で雲雀自身を捏ねる様に嬲る。薄い布の下で、身体が熱を持ち始める過程全てを指で探られる。

「恭弥……、分かるか、今……」

わざと声を潜めた跳ね馬が耳元で囁いた酷い言葉に煽られ、息が詰まる。

「痛いのも、こうされんのも、どっちも気持ちいいんだろ?」
「うぁ……っ、や、っ」
「”潔く認めろよ”、恭弥」

耳元で囁く声は、頭に来る程に愉しそうで、雲雀は愉悦に潤んでいた目をきつくすると、ディーノに寄り掛かりきっていた背を起こした。

「離、……せ、殺すっ……」
「どうやって? 無理だろ、こんなに……」
「!! ッ……、んんっ!!」

下着の内に滑り込んだ掌が、粘液を滲ませた先端を掴む。
上下に扱かれ、途端量を増した透明な液は、ぐちぐちと湿った音を立て始めた。

その刺激に、ディーノの腕から逃れかけていた雲雀の上半身がかくんと崩れる。
ソファの前に置かれたテーブルの、透明なガラスで出来た天板の上に肘をついて身体を支えるが、乱れきった呼吸を整える間すら、ディーノは雲雀に与えるつもりは無いらしい。

「音、聞こえる?」
「そ、んな……の……、っ!!」

先端の小さな孔に爪をこじ入れられ、かろうじて身体を支えていた腕まで力を失う。

腰の奥から背にまで走る、刺激。

透明なガラスの表面には、いつの間にか倒れていたペットボトルから溢れた水が浅い水溜りを作っていて、うつ伏せた雲雀の頬と、ようやく乾きかけていた髪を、再び濡らした。

雲雀の身体を包むバスローブがどんどん水を吸い、重く湿っていくのを見遣ると、ディーノは下肢を弄っていた手を止めた。
濡れたローブの後ろ襟首を掴み、剥ぐ様にして脱がせる。既に緩く乱されてしまっていたそれは簡単に雲雀の肩から滑り落ち、腰の辺りでわだかまった。

無防備に晒された薄い肩と、背に浮いた肩甲骨の華奢な造り。

琥珀色の双眸に笑みを滲ませると、ディーノは先刻自分の顎を預けていた右肩に唇を寄せた。肩口から耳元まで口付けながら行き来して、途中の一箇所で甘噛みを繰り返す。

「痕、つけるぜ?」
「駄、……っ目、やだッ……」

水溜りの中で跳ねた雲雀の指が、小さな水音を立てる。
それを見ながら、ディーノはゆっくりと、噛む力を強くしていった。

「……ィ……、ぁ……ッ」
「……もう、ついた……」

ごめんな、と謝る言葉はしかし、計算づくの手遅れだ。


 つけたばかりの所有の証に一度唇を落とすと、跳ね馬は雲雀の身体を一度浮かせて下着に手を掛け、感じきり、濡れて震える部分を晒させた。

散々に弄られ零れた蜜で濡れた布は、下肢に纏わり付いたままのバスローブも邪魔をして、大腿の半ば、中途半端にしか降ろす事が出来ない。
それは逆に雲雀を戒める結果になり、快感を受けた身体は素直に動く事も出来ず、零す粘液の色だけを、透明から、先走りの白濁が滲む色へと変えていく。

僅かに出来た雲雀の内腿の狭間に、ディーノは左掌を捻じ込んだ。

「ぅあ・・っ、や、んん……っ!!」

汗と、そしてぬるつく液にまみれた肌の間で、立ち上がり固くなった肉塊を扱かれる。
付け根の柔らかな部分まで包み込んだ掌と指は、容赦無く敏感な部分を掴み、裏筋に爪を立ててなぞった。

「やッ・・、もぅ……ぁんっ」
「もう、出る?」
「んん……ッ……」
「恭弥、……っ、出せよ」

うつ伏せた雲雀の背に身体を重ねると、ディーノは薄赤に色付いた雲雀の耳朶を噛んだ。
空いている右手を胸に滑らせ、しこり、固くなった部分を爪で潰し、撫ぜる。

「ィ……ッ!! く、……んんっっ!!」
「……、恭弥」


耳に注ぎ込まれた声と吐息に雲雀が目を開けると、目の前でゆら、と揺れる薄い水面に、ちかちかとした光と、赤い何かが映っていた。
……それどころではないというのに、雲雀の頭の中に、そういえばもう少しで映画が終わる頃かもしれないという考えが、不意に浮かぶ。
限界まで溜めた熱を吐き出す事が出来ないまま煽られた身体は、快感からの逃避でそんな事を雲雀に思わせたのだろうが、それを冷静に分析する余裕など、ある訳がなかった。



視界に踊る、せわしなく点滅する光と、交互に映る赤。



それが本当に画面の光の反射なのか、それとも快感に煽られた自分の目の錯覚なのか。
その区別すら付かなくて、雲雀は目を閉じると、考えることを止めた。



「……ディー、ノ」



跳ね馬の左手で弄られた肉塊は、くちゅくちゅと音を立て、熟れきっている。

「っ、……ディーノ……ッ」

触れてくる相手の名前を呼んだ途端、自分の下肢が大きく震えたことに気付いて、体温が上がる。


「恭弥、……お前、可愛いすぎ」


それまで快感に浮かされながらも逃げようとしていた身体が、内股に力を篭めて自分の腕を挟み込んだのを感じて、ディーノは苦笑した。

乱れる呼吸の合間に雲雀が零す、自分の名前。

うなじと、そして背に薄らと浮かんだ汗を舐めとってやりながら、手淫を続ける。
どろどろに濡れた柔肌の隙間に掌を抜き差しし、雲雀が声を上げる箇所を強く擦ってやると、呼吸をすることすら苦しいのか、細い肢体は痙攣する様に震えた。


「もっ、と、……、そこ……っ」
「触ってほしい?」
「……っ、ァ、……さ、わ……ッ、ぁっ!!」

急激に上り詰めた雲雀が、びくりと身体を固くした。




ディーノの掌の中で、ぎりぎりまで熱を溜め込んだ肉塊が、どくり、と欲を吐き出す。




「……っん、んぅ、……っ……」




ぼたぼたと零れた白濁が、雲雀の下肢とディーノの手を酷く汚す。
ゆっくりと弛緩していく雲雀の背から身体を離すと、ディーノは濡れた手を、雲雀の下肢から引き抜いた。

鈍く光る白濁が、腕に彫った絵に纏わりつき滴って、雲雀の背にぽたぽたと落ちる。



「恭弥、……きょうや」
「……ん、……ぅ……っ」



静かに名前を呼ぶと、ぴくり、と反応した身体が、ゆっくりと目を開く。
黒い双眸の表面に張った涙の膜は、幾度目かの瞬きで雲雀の頬を滑り、ガラスに広がる水に混ざって、消えた。

>>fin.


ぬるくてすみません・・・。オチが無くてすみません・・・。ガクリ。
 
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