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さくら舞う
written by Miyabi KAWAMURA
2007/0208
(2007/0207〜3/28迄のWEB拍手御礼文)






 いざなわれ、訪れた場所は、薄桃色のあかりに満ちていた。

千鳥ヶ淵は、都心でも有数の桜の名所だ。
堀の水面に浮かぶ花びらと、そして見上げた空を覆い尽くす花の風情は正に繚乱と言うに相応しく、景色を甘く淡く、染め上げている。


足を進めると、さく、と細かな音が立った。


「なんか、勿体無いな」


隣を歩く相手が漏らした言葉に、雲雀はゆっくりとそちらを見遣る。

「何が?」
「花びら。綺麗だから、踏みたくない」
「……じゃあ、そこにずっといれば」

僕は帰る。

そう言うと、一人で歩き出す。


「待てよ、恭弥」


無視しても重ねて呼ばれ、脚を止める。
久しぶりに顔を合わせた相手に、来て、と言われ引かれた腕を払いきれなかったのは確かに自分のミスだった。

小さく息をついて振り返る。と、其処には。


「……、」


一面の、霞。
視界を染めるのは、音も無く舞い落ちる、薄く色付いた花。

まるで吹雪く雪の様に数えきれなく舞う花びらに、風も無いのに何故、と一瞬訝しく思うが、ディーノがその左掌で掴んだひとかたまりの薄桃色に気付いて、雲雀は眉を顰めた。


「ほら。やっぱすげー綺麗だ」


掌いっぱいの花びらを雲雀の方に向けて高く放ると、ディーノはひらひらと降るそれを見て、満足げに微笑った。


「恭弥も、やってみろよ」


ゆっくりと近付いて来たディーノは、ほら、と言って雲雀の手を取ると、その上に薄桃色の柔らかなかたまりを、そっと乗せた。

ふわり、と舞った風が、雲雀の掌から花びらを吹き散らす。

そのひとひらの行方を目で追う雲雀の黒髪に、枝から離れたばかりの薄桃色が、幾枚か散り落ちた。

「こどもみたいなことして、楽しい?」
「楽しい」

雲雀からの問いかけに、ディーノは迷うことなく答えた。

「楽しいっつーか、嬉しい、だな」
「嬉しい? 何が?」
「それは、恭弥には秘密」
「……意味が分からないんだけど」

一向に噛み合わない会話に飽きたのか、雲雀は跳ね馬の掌から掴まれた手首をするりと抜くと踵を返した。


動きに連れて、ゆらと揺れた黒髪から、花びらが滑り落ちる。


受け止めようと伸ばした指先を掠めて逃げるその様はどうしようもなく雲雀を連想させて、ディーノは苦笑すると、先を歩く相手を見遣った。


雲雀の黒い髪は、薄桃色に霞む空気の中で、くっきりと綺麗に映える。


……日本人に一番似合う花は桜なのだ、と。
以前誰かに聞いて知識として知ってはいたが、しかし。


「恭弥、」


手を、伸ばして。

今度こそ捕まえた小柄な肢体を抱き締め間近に見詰め、ディーノは自分の思いを確信に変えた。


……日本人に、という部分は少しだけ、間違っている。




桜の花は多分、恭弥に、一番似合う。










>>fin.


春にうかれた馬鹿っプルディノヒバ。拍手ありがとうございましたvv
 
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