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scherzando; (戯れる)の進行法
written by Miyabi KAWAMURA
2007/04/30
DH_R15.M12>4月のお題>抽象的お題「交わる学問」






 抱き上げられて、ベッドの上に降ろされた。

 キスが終わったばかりの身体ではろくに抗うことも出来ず、かといって、真正面にいるディーノを見返すのも躊躇われ。
反射的に目を伏せた瞬間、伸びてきた手に顎を取られる。

「どうした?」

こっち見ろよ、と促されるが、それを素直に聞く理由は無い。
黙ったままふい、と首を振って手を外させると、相手がひとつ、息をつくのが分かった。

 可愛くないやつ、とぼやくディーノの声は半分溜息じみていて、だったらもう自分に構うのは止めればいいのに、と雲雀が内心答えたそのとき、左肩を掴まれた。
そしてすぐに、右肩も同じようにされる。

「嘘だって。すげー可愛い」
「……なに言ってるの」

両肩を引き寄せられて、髪に口付けられる。
髪に触れる吐息を感じながら、雲雀は僅かに眉を顰めた。
「可愛い」などと言われて嬉しい訳がない。少なくとも雲雀の中で、それは男に対する誉め言葉ではない。

そんなこと言って何か意味があるのか、と。
繰り返し甘い言葉を吐く相手に、以前問い質した記憶があるが、ディーノはそのときも微笑っただけだった。

「お前、ホントに細いな。……細いっつーか、骨自体がまだ育ちきってないのか」

 まだ十五だもんな、と一人で納得しているディーノからは、やはり今日も疑問の答えは得られそうにない。

「もう少しして筋力がついたら、今と戦い方が変わるぜ、きっと」

 肩、二の腕、そして手首と、まるで触診するように確かめていきながら、如何にも「家庭教師」らしくそう言葉を続けたディーノの態度に、先に焦れたのは雲雀の方だった。

 意味があるのか無いのか分からないような遣り取りで、時間を潰す趣味は持ち合わせていない。並盛の見回りや、下らない群れの狩り。雲雀からしてみれば、風紀委員長としてしなければならない事、そしてしたい事は沢山あるのだ。
「ねえ……」
伏せていた目を上げて、これ以上用が無いなら帰りたいんだけど、と告げてやろうとした刹那、雲雀は自分の失策に気付かされた。


視線が重なった、と思った瞬間、唇が触れていた。


濡れたものが歯列を割って口腔の中に入り込み、その感触に思わず雲雀が身体を退くと、それ以上の逃げは許さないとばかりに、含まされた柔らかな肉をゆっくりと抜き差しされた。
息苦しくなり唾液を飲み込んだ瞬間、舌と舌がざらりと擦れる。
ちゅ、と舌先を吸われ、僅かに唇が離れると唾液が糸をひく。


「もう帰る、とか言うなよ?」


雫を舐め取りながら言ったディーノの声は、先刻迄と完全に色を変えていた。
下唇を噛み、舐める行為を繰り返されて、そこがじわりと痺れた頃、ゆっくりと体重を掛けられた雲雀の身体は、ベッドに沈み込んだ。








 一つずつ丁寧にシャツのボタンが外されて、雲雀の頬に触れていたディーノの唇が、肌蹴たシャツの合間から覗いた肌に滑らされていく。

未だ目立たない咽喉仏の上、そして鎖骨の上。

組み敷いた身体が描く稜線に沿うようにしながら、ディーノはそこかしこを悪戯な強さで齧っては、その度に身体を跳ねさせる雲雀を宥めるように、付いた痕の上に口付けた。


 「痛、……ッ」

自分の身体を辿る唇と、そして柔らかな髪の感触。
天井を見上げ、息を詰めるようにしてそれに耐えていた雲雀が思わず声を上げたのに気付いて、ディーノがゆっくりと身体を起こした。

「ごめんな。痛かったか」
「……別に」

素っ気無さを装ってそう告げると、顔を覗き込まれ、掌で両頬を包まれる。
組み敷かれたまま見下ろされてする会話は余りに相手との距離が近過ぎて、雲雀は未だ慣れることが出来ない。

「……続き、してもいい?」

甘い慰撫の篭った鳶色の目と、声音。

そんなことを聞かれても、何も答えられる訳がない。
顔ごと背けたくてもディーノの掌に阻まれてそれは無理で、雲雀はせめて視線を外そうとしたがしかし、そうする前に唇を啄ばまれた。


恭弥、と幾度も名前を囁かれながら、再び胸の尖りを指先で弄られる。


「ゃ……だッ」
「本当にやだ?」

笑みの混じった声で返すと、ディーノは赤く色付いた箇所を撫で、指で押し潰す。

「……っ、んんっ!!」
「恭弥、敏感」
「や……ッ、ぅあ!!」

舌と指先で繰り返し擦られて固くしこった胸元は、信じられない位に敏感になっていた。
伝わる刺激は、ずきずきとした鈍い痛みを伴い、雲雀は嫌がるように表情を歪めるが、その瞬間、突然下肢に走った快感に声を押さえることが出来なかった。

「痛い、っていうのはもう無しな」
「んっ、んんっ!!」

今まで雲雀の胸を弄っていた指で、ディーノは立ち上がり始めていた幼さの残る部分を撫ぜた。先端にじわりと滲んでいるものを掬って指先で捏ねると、くちゅりと濡れた感触がする。

「触られて気持ちよかったから……、」

こうなったんだろ、と、わざと耳朶を噛むようにしながら言ってやると、眼下に見遣った黒い目に睨まれた。


薄らとした涙で揺らぎながらも、きつい色を取り戻した黒い双眸と、快楽で色付いた眦。
雲雀の浮かべるこの表情は、鋭いくせに酷く危うく、そして脆い。


「ほら。怖い顔すんなよ」


ふと息をつくと、ディーノは雲雀の瞼の上に口付けた。

自分が教えるまで、他人を傷つけ壊すことは知っていても、触れ合うことなど知らずにいた雲雀だ。指と掌、そして唇で施す愛撫を覚えさせ、少しずつ柔らかく溶けるようになった細い肢体の見せる反応。……それを愉しむ余裕が自分にはあった筈、なのに。


咽喉の奥で苦笑すると、ディーノは組み敷いた身体に、ゆっくりと体重を掛けた。


「ん、……ぁ」

汗ばんだ肌がひたりと吸い付き、互いの身体の間で自身を擦られて、雲雀が噛み殺した声を漏らす。それをもっと聞きたくて、絡めた下肢をわざと揺らすと、シートを掻いていた雲雀の指がディーノの肩を掴んだ。ぎち、と爪先に篭る力の正体は、おそらく抗いが半分。

「ディー……ッ、ん!!」

いつの間にか、下肢はどろどろに濡れていた。
拒む為に身じろいでた筈の雲雀が、固くなった自身をディーノに擦り付けるように下肢を揺るがせ始めている。不確かなもどかしい刺激でも、慣れない身体にとってはきついのだろう。引き攣る呼吸は浅く、啼き声の合間に自分を抱く相手の名を零してしまっていることにすら、多分雲雀は気付けていない。

「お前の、そういうところ、すげー可愛い」
「……な、に、……ッ」



「恭弥」
「……ッ、ぁ」

雲雀の薄い下腹部が痙攣するように震えたのに密着した肌で気付くと、ディーノは雲雀の腰の下に腕を回し、下肢を引き寄せた。
互いの先端から溢れた粘液がぬるついて、固く熟れた身体がより深く擦れ、ぶつかる。
細い顎を仰け反らせ、咽喉を震わせる雲雀の表情は蕩けそうで、それを間近に見下ろすディーノの腰の奥で、酷い熱を持った欲が疼いた。



……余裕、など。
初めて雲雀と顔を合わせたときには持っていた筈の余裕など、もうとっくに、ディーノの中には残っていない。

このまま、抱き潰してしまいたい。
未だ頑なな身体を押し開き、銜え込ませた身体で、滅茶苦茶に。



「……ッ、ノ、」


そのとき、不意に。
ディーノの肩を掴みそこに爪を立てていた雲雀の指が、震えて動いた。
汗で滑る跳ね馬の肌の上を滑った掌が辿り着いた背の上で止まり、僅かな躊躇いの後に、縋り付くような仕草を見せる。


「……も、ぅ、無理…ッ」


ディーノの肩口に顔を押し付けるようにして呟かれた声は、途切れ途切れに掠れていた。

直接な刺激は与えられないまま欲を溜め込んだ身体は、もう限界なのだろう。
組み敷かれた不自由な体勢のまま、自ら腰を揺らして相手のそれに自身を擦りつけなければ得られないもどかしい快楽は、感じることにすら慣れない身体には負担が大き過ぎたに違いない。

もう全部出してしまいたい。けれど、自分の口からはどうしても「触って欲しい」とは言えない。

堪えきれず揺れる身体と、そして背に回された掌の熱から雲雀の抱える逡巡を感じて、ディーノは一度ゆっくりと目を閉じた。



「分かったから、……」
「!! ……んッ、ぁ!」


握り込んでやった瞬間、ぎちりと自分の背に食い込んだ爪。
ディーノは、途端熱を帯びた細い肢体に、唇を寄せた。
これ以上堪えさせることはせずに、慣れない身体がすぐに欲を吐き出してしまうような触り方をわざとしながら、いましがた自分の内に浮かんだ欲望を、意識の奥へと押し戻す。


鋭いくせに酷く危うく、そして脆い。
過分に大人びた表情と、そして相反する未熟さを持った相手を、今ここで無理に傷付けたくはなかった。


「……恭弥、」


上気し赤くなった耳に、ディーノは自分の国の言葉を幾度も流し込んだ。
けれど只でさえ快楽を追うことで一杯になっている雲雀には、耳慣れない言葉の意味など分かる筈もない。耳朶を擽るディーノの吐息と、言葉の合間に首筋を甘噛みされる痛み、そして自身を弄られる感触だけに反応してびくびくと身体を跳ねさせている。

「……ッ……!!」

先端に爪を立てられた瞬間、雲雀の身体が震えて引き攣った。
生温い液が雲雀自身とそしてディーノの手を濡らしてどろりと広がり、滴り落ちたそれはシーツを酷く汚した。





 弛緩した身体を抱き締め、快楽に溶けた双眸を覗き込んで口付ける。荒い息をつきながら大人しくそれを受けていた雲雀が、ディーノ、と名前を呼んだ。



「さっき……、あなた、何か言った」



何て言ったの、と聞かれ、ディーノは少し考えるように黙った後、口を開いた。


「別に、何でもねーよ。恭弥可愛い、恭弥愛してるって言っただけ」
「……嘘。次は、僕に分かる言葉で言って」
「分かった」


でも聞いてから怒るのは無しな、と苦笑して一応の釘を刺すと、ディーノは雲雀の髪に唇を寄せた。





伝えた言葉は、本当は甘過ぎる位の睦言だった。




「少しずつでいいから、覚えて」

「肌の重ね方、弄られて気持ちの良い場所、そして身体を開いて、繋がる仕方」




「少しずつ、全部、オレがお前に、教えてやるから」





>>fin.



「雲雀が可愛くてたまらない跳ね馬」って、書いててなんかはずかしい…。
オチがディノヒバSSの「私を食べて」とちょっと似た。すいません。
 
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