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風、薫る。
written by Miyabi KAWAMURA
2007/05/16
DH_R15.M12>5月のお題>初夏ならではの爽やかなエロ。






 風紀委員会を終えた雲雀が戻った時、応接室の中には、全くひとの気配が無かった。


油断していた、と言ってしまえばそれまでだが、雲雀の周りで、彼に全く悟らせないほどに気配を消すことが出来る人間など、今のところは片手の指が余る程しかいない。

”犯人”は、そのうちの一人だった。

「いくらなんでも、無防備過ぎだぜ?」

部屋に足を踏み入れた瞬間、掛けられた声に咄嗟にトンファーを繰り出した雲雀の反応は恐ろしく早くて、並みの相手ならば確実に一撃を喰らわせることが出来ていたに違いない。けれど生憎なことに、相手の技量は雲雀のそれを上回っていた。

ぎしりと両手首に巻きついた鞭。

相手の気配に気付けなかったこと、攻撃を躱されたこと、そして両手の自由を奪われたことの全てが雲雀にとっては面白くなかったが、それ以上に神経を逆撫でしたのは、悪戯の成功を純粋に楽しんでいる風な相手の表情だった。

「……それで? 用件は何」
「お前に会いに」

不機嫌を隠しもせず、毛を逆立てた雲雀にさらりと答えると、金色の髪をした”犯人”は鞭を手繰り寄せた。からん、とトンファーが床に落ちる。身体を反転させられて、背に軽い衝撃を感じたときには、雲雀は壁と相手の間に挟まれてしまっていた。鞭で戒められた両手もディーノの左手で掴み上げられ、頭の上で壁に押し付けられている。
こうなってしまえば、事態の打開はほぼ不可能、だった。

「捕まえた」

満足げに呟いた唇が、雲雀のそれに重なる。
歯列の隙を突いてきた舌先に噛み付いてやろうか、と思ったそのとき、雲雀はあることに気付いた。相手が……ディーノが”消していた”のは、気配だけではなかったのだ。

いつも彼と共にある、甘い香り。
名前など知らない、けれど雲雀が匂いだけは完全に覚えてしまった、甘いトワレ。

今のディーノからは、それが感じられなかった。







 両手首を戒めていた鞭が、ばらりと解けて落ちる。

崩れそうになった雲雀の身体を支えたのは、背に回されたディーノの腕と、そして雲雀の膝を割るようにしている彼の膝だった。

最初に唇を触れ合わせたそのときにはもう、ディーノは空いていた右手で雲雀のシャツを乱し始めていた。引き抜かれた裾から入り込んだ指先は肉付きの薄い身体を擽るようにずっと愛撫していて、その感触に身じろぐ度に、雲雀の下肢は自然とディーノの脚に擦れてしまう。

「……ッ」

拒むように身体を退いても、背後は壁だ。
漏らした声ごと追いかける様に、口付けはより深くなる。口腔を探る舌は息継ぎの合間にも雲雀のそれから離れずにいて、一呼吸ごとに互いの唾液と吐息を飲み込むような行為が、ずっと続いていた。

「もう、自分じゃ立ってられない?」
「そんなこと、な……」

揶揄する様に目を覗かれて、視線をきつくした雲雀が反論すると、ディーノは薄い身体に回した腕の力を僅かに弱くした。……途端、かくりと崩れそうになる膝。
咄嗟に両手でディーノの腕を掴んでしまった雲雀を見遣る鳶色の目は、ただ愉しそうだ。

「やっぱり無理なくせに」

負けず嫌いだな、と言葉でも雲雀の退路を絶ってしまうと、ディーノは自分の大腿で、雲雀の中心をわざときつく押した。

「!! ……あッ」
「背中、支えててやるから。そのまま動けよ」
「ゃ……だ」

腕の中の細い身体をもう一度引き寄せると、ディーノは相手が見せた僅かな抵抗を無視して、ゆっくりと揺すり始めた。

直接に撫でられるよりもどかしい刺激が、幾度も幾度も繰り返される。

下肢に与えられる快感は緩いものだというのに、絶え間なく擦られ続けているうちに、雲雀の腰の奥にドロドロとした重い熱が溜まり始めていた。……勝手に揺らぎ始めた自分の身体に気付き、雲雀が唇を噛む。けれど、ディーノはそれを許さなかった。
固い膝で下肢を弄られて、逆に堪え切れない声が雲雀から漏れる。

「離、せ……ッ」
「嫌だ」

固くなり始めた雲雀自身を感じながら、ディーノはくつくつと微笑った。

「つーか、くっついて来てんのは、お前の方」
「ち、がぅ……」

否定する言葉を言いながら、けれど身体は完全に雲雀の意思を裏切っている。
ぎゅっと閉じられた眦は赤く色付き、ディーノの腕をきつく掴んで動く身体は、快楽を貪ろうと懸命だった。細かく震える下肢は、自身をディーノにぶつけるようにしながら揺れている。

「……恭弥、もっとしたい?」

耳元で囁かれた、と思ったそのとき、顎を掴んで仰のかされた。

噛み付くように口付けられて、ぞくりと震える背。
ゆっくりと身体が傾ぎ、深く絡めた舌が離れたときには、床の上に組み敷かれていた。

かちゃ、音がして、ベルトが外された。ファスナーが下ろされる鈍い刺激を耐えるうちに、制服の下衣と下着も、纏めて脚から抜き取られてしまう。その後に続くだろう行為を予感して、雲雀の咽喉が細く息を漏らす。……が、望んだ感触は一向に与えられなかった。

「ん、ぁ……」

焦れた膝が、ぴく、ぴく、と揺れる。
雲雀を見下ろしているディーノは全て解っている筈なのに、充血し始めた箇所をわざと外して、指を遊ばせている。

「……全然触られてないのに感じた?」

甘い声はとろけそうに優しいのに、雲雀の耳を容赦なく犯す。

「……ッ、ぁ」
「オレの脚にぶつけてるだけで、恭弥は気持ちよかったんだな」
「うる、さ……ッ、んんッ!!」

必要以上に焦らすつもりは無いのか、不意に雲雀自身に絡みついた長い指が、既に浮いていた透明なぬるみを先端に塗り広げた。途端、固さを増した部分をディーノの掌が包み込む。
緩く強く、握っては離す仕草につれて粘つく液が溢れ出す。
掌の中で捏ね、指先にぎちりと力を篭める仕方は、刺激を待ちわびていた身体には強すぎた。雲雀の咽喉から鳴る音は嬌声じみていて、それが余計にディーノを煽る。

不意に濡れた手で腰を掴まれ、固定された。

下腹を掠めた吐息に、ディーノが何をしようとしているのか気付いた雲雀が、金色の髪をぐしゃりと掴んだ。

「それ、ゃ……ッ」

殆ど力づくで相手を引き剥がし、身を捩る。……が、それを逆手に取られ、うつ伏せにさせられてしまう。

「口より手がいい?」
「違、う……ッんん……!」

大腿の間に差し込まれたディーノの右手が、雲雀を捕まえて裏筋を撫でた。
爪で掻き、たどり着いた先端をこじ開ける様に指を掛けて、また握りこみ上下に扱く。

「や、ぅ……っ、ん、ぁ」

床にぺたりと付いた腕に額を押し付け、手淫に耐える。膝が床に擦れるが、その僅かな痛みも、濡れそぼった自身に加えられる愛撫に紛れて霧散した。

「恭弥、すげぇ汗」
「……んっ」

雲雀に身につけさせたままにしていたシャツを掴むと、ディーノはそれをたくし上げた。
白い背があらわになり、撓る背骨の描く線が鳶色の目に晒される。……いつも冷たい印象のある、未だ幼さを残した身体だ。それが自分の与えた愛撫で欲情し、色付いている。

惹かれるままに、ディーノは雲雀の背に唇を落とした。
汗で濡れた皮膚は吸い付くようで、その感触に誘われて、尖らせた舌で舐める。

恭弥の匂いがする、と、背後から耳に囁いてやると、手の中で雲雀自身がびくびくと震えた。……けれど、素直に蕩ける身体をしているくせに、雲雀はやはり強情なのだ。感じきった吐息と抑えきれない啼き声を零している今ですら、ディーノが指を動かす度に、嫌だと拒絶の言葉を口にしている。

苦笑すると、ディーノは自分のジャケットから小さな瓶を――アトマイザーを取り出した。
歯で蓋を咥えて開けると、雲雀の背にトワレをぶち撒ける。


「!! ……ひぁっ」


背に感じた冷たさと、周囲に立ち篭めたどろりと濃い芳香に、雲雀が息を飲んだ。


「嫌だ、しか言わないなら、お仕置き」
「何、言っ……ッ、殺、すッ……!」
「今自分がされてること、オレが帰っても絶対に忘れるな」
「んっ、…ぅあ、んんっ!!」

充血し、とろとろと液を漏らし続けている肉塊を根本から扱くと、ディーノは掌に溜まったものを、雲雀の背に塗りつけた。

透明なトワレと、白濁し始めた先走りの液が混ざる。

何度それを繰り返しても、甘い匂いは一向に薄れない。どころか、雲雀の肌で温められたそれは、一層その匂いを増していく。

「ゃ、ディー……、んんッ」

荒い息をつく身体の限界を感じて、ディーノはぬるみきった掌で雲雀の背をもう一度撫でた。指に絡んだ粘液を舐め取り、そのまま身体を倒して雲雀の耳を甘く齧る。

「恭弥、解るか?」

囁くと、それだけで雲雀は大腿に挟んだディーノの手をきつく締め付けた。
それに応える様に、先端の一番弱い場所だけを捏ねるようにしてやりながら、ディーノはゆっくりと言葉を続けた。

「お前から、オレの匂いがする」
「……ッ! ぅあ……ッ!!」

粘液を零す先端に爪を捻じ込むようにされて、雲雀の身体が弾けた。
どくどくと溢れる白濁が滴って床を濡らす。

細かく震え弛緩した雲雀の身体から離れると、ディーノは床に転がっていたアトマイザーを拾い上げた。そのまま窓辺へ向かい、閉め切られたままのガラスを全開にする。


ざああああ、と風が鳴り、熱を含んだ空気が室内に雪崩れ込んだ。
薫る緑風が、室内に篭った熱と匂いを、ひといきに洗い流していく。


風に煽られたカーテンをそのままにして、ディーノは雲雀のもとに戻ると、目を閉じたままの相手を抱き上げた。


ソファに横たえ、黒い髪を撫でたその時。




攪拌された空気に混ざって、甘い匂いが名残りを残す様に揺れた。











>>fin.



……爽やかだと思……わないでもないかな、みたいな。
 
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