◆ちょっと説明◆

こちらは、ミヤビが頂いた「盲目バトン」の回答です。
私がフツウに答えるより、跳ね馬の一問一答形式にした方がおもしろいかな、と思ったんですが、せっかくなのでディーノ視点の小話風に回答してみました。…とはいっても、ミヤビめの力不足故、うまく質問を活かしきれてない部分も結構ありそうです(苦)。

頂いたバトンの元の形は以下の通りです↓

【盲目バトン】  お題…雲雀

1:いつからあなたはこの方が好き?
2:この方の魅力について語ってください。
3:この方の属性を一言で!
4:この方の周りの人に1日なれます。誰になって何をしますか?
5:この方のイメージカラーは?
6:この方に似合いそうな季節は?
7:この方のイメージフラワーは?
8:最後に一言!
9:好きな人を聞いてみたい人を5人と言わず10人(お題つき)

↑この8つの質問(9はアンカーということで…)について、お話の中でディーノが何かしらの答えを出してくれている筈です。筈なのです…。順番は順不同になってしまっておりますが、「どの部分がどの質問の回答なのかなー」とか、ちょっと気にしつつ読んで頂ければ幸いでございますvv



高度一万メートルの告白

written by Miyabi KAWAMURA
2007/10/19
(盲目バトン…お題「雲雀」回答)

 




 ぼんやりと目を開けると、白と青だけの世界が窓の外に見えた。


静かな中にも、絶えず低く鈍い空調の音が聞こえている。飛行機を使い国と国の間を行き来するのはオレにとって日常のことで、機内で過ごす時間も実は嫌いじゃない。……特に、今は。


この、密閉された鉄のかたまりの中で過ごす時間は、オレにとって、特別なものになっているのだ。






 離陸して、上昇する。


大陸も海も、眼下に見えていた全てが雲海に没し視界から消える位の高みに辿り着いたとき、オレの頭に浮かぶのは何故かいつも、恭弥のことばかりだ。
見渡すばかりの雲と、青い空。雲の刻印の有る指輪を持つ思い人をどうしようもなく連想させる色彩に満たされた世界の中で彼のことを考えていると、溢れてくる思いは、とめどないばかりで。……自分でもどうしようもない、と思う位のこの状況は、もしかしたら、高高度の世界にいるが故の現象なのかもしれない。

陸も海も見えず、余計なものは一切目に入らず。そして、進む前後に、道がある訳でもない。――言い換えてみれば、自分以外の何物からも切り離された状態。

ほんのひととき、全てから解き放たれた擬似自由(という言葉が本当にあるのかどうかは、定かではない)を得た人の脳味噌が、一番気持ちを傾けたい相手のことばかりを思い描きたがるのは、当然じゃないだろうか、とオレは思うのだ。





 初めて言葉を交わしたときには、もう惹かれていた。

惹かれた理由も解らないまま、ただ彼の全てを知りたいと思って、「家庭教師」として許された権利の枠を、あの時のオレは簡単に乗り越えてしまった。

浮雲と称される、人の心を否応無しに引き付ける存在であるくせに、時折気紛れのように自分から近付いてくるくせに、なのに決して他者と交わろうとしない恭弥の存在そのものが、オレにとっては奇跡みたいに思えてならなかった。

彼の生き方とオレのそれとは、余りに違っていたからだ。

年齢差とか立場の差だとか、ましてや人種の差であるとか、そんなことじゃない。もっと、そう、根本的な部分でオレと恭弥は生き方が全然違って、そして……もしかしたら、全く違うものだというのに、ほんの少しだけ、どこか僅かに似ているところがあったのかもしれないせいで、多分オレ達は、惹かれあうことが出来たんだと思う。



 出逢ってから、数年が過ぎる頃には。

途切れ途切れの機会ではあったにせよ、秋も冬も、春も夏も、その季節の全部を、オレは恭弥と一緒に、彼の国で過ごした。

自分の目で他国の四季の全てを見届けることになるなんて、恭弥に出逢う以前のオレは、考えてもいなかったに違いない。けれど今は、極東の国の四季の風景のひとつひとつに、恭弥の姿を映し、思い描くことが出来る。

共に過ごした時間の中の、失い難い記憶。
そしてその中でも、一際鮮やかなもの。

ひたすらに高く抜ける蒼穹。

初めて直接に言葉を交わした日、彼の国の空に広がっていた青い色。
夏を終え、始まりかけた秋の空色の印象が、オレの中では未だに恭弥と繋がって思い出される。



 かたときも傍から離したくないと思いながら、けれど離別の時間と距離があるからこそ募る愛おしさがあるのだということを、否応無しにオレは知らされた。

恭弥の近くに、隣に在り続けることが出来ないもどかしさも確かに嘘じゃない。しかし、それまで大切にしてきた何もかもを放り出してしまったとしたら、それはもう、オレ自身がそうありたいと目指していた姿でもないし、そして何より、恭弥が思ってくれている「オレ」ですら、なくなってしまうだろう。……結局、オレはオレでしかなく、他の何にも変わることは出来ないし変わりたいとも思えないのだ。

――もしこれを恭弥が聞いたら、勝手な、我儘な言い草だと、彼は怒るだろうか。……怒る、かもしれない。

けれど、もしかしたら、他の誰より自由で独善的なようでいて、実は時折怖いくらいにオレの心の機微に聡い彼は、とっくに全てを見通しているかもしれない。
とっくに全てに気付いた上で、許容してくれているのかもしれない。


凛とした強さと、しかし相反する危うさ。


恭弥の中に垣間見えるその両方が愛おしくて、彼の気持ちを少しでも深く知りたくて。
抱き締め触れた指先で心が読み取れる訳もないのに、オレは彼を抱きながら、ふとそんな風に思うことがある。

強過ぎず、弱過ぎず。しなやかで柔らかな肌を傷つけないように、けれど、内にあるものを、見落とさないように。
まるで咲いた花の花弁を、伸びた茎葉の形と触感を、確かめるように。――以前、そうしながら、恭弥を甘く焦らし、緩く追い上げながら抱いていたとき、ふと思いついて、彼にある花の名前を告げたことがあった。

印象がお前に似てる、と。

別に揶揄するつもりはなかったのに、そのとき恭弥はひどく機嫌を損ねてしまって、苦労した覚えがある。(確かに今思えば、あれは完全にオレの失敗だった。あの恭弥の性格だ。花などになぞらえられて、怒らない訳がない。)


記憶の中の、青紫の綺麗な花。


恭弥に会うために、並盛へ向かっていた途中に見かけた、イタリアではあまり見たことのなかった花。

その花の名前は結局解らず仕舞いに終わってしまって今に至り、機会があれば調べようと思う気持ちと、知らないままでいてもいいか、と思う気持ちが半々になっている。……写真か何かさえあれば、解るだろうか。
ひょっとしたら、他ならない恭弥なら、名前を知っているかもしれない。多分あれは、彼の国の花、だろうから。





 ――ああ、雲が切れた。

ぼんやりと、殆どまどろむみたいな思考の中にいたオレの目の前で、真白い雲海が途切れ、青い海と複雑な色の混じりあった陸が覗いた。


ここまで、だ。


僅かな時間。
オレが自分に赦した、何の躊躇いもしがらみも無しに、ただ想う相手のことだけを考えていられる、僅かな時間は、これで、終わり。



触れていたい。

他のなによりも、誰よりも、大切にしていたい。



手放せない、手放したいとも思わない、思ってはいけない様々なものがオレと恭弥の間には常にあって、けれどそれすらも愛おしいのだ、と。



誰も聞くものが無い、聞かせる必要も無い言葉を、自分自身に、言い聞かせるように。



高度一万メートルでする告白を、オレは自分の内側に仕舞い込み。



――かちりと、鍵を掛けた。






>>fin.



バトンを回して下さった瑠璃さん、ありがとうございました☆
 
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