この世界で、一番甘いあなた。
written by Miyabi KAWAMURA
2007/10/30

DH_R15.M12>10月のお題>味覚





 脈打っている心臓は確かに胸の位置にあるはずなのに、その音は何故か、自分の頭の中から響き渡っている様な気がした。



 雲雀は、噛み締めていた唇を僅かに緩めて息を逃がした。
崩れそうになる膝に力を篭めると、寄りかかったコンクリートの壁に、羽織っている学ランの繊維が擦れる。ざらり、ぷつりと、糸が切れるのに似た音。背に感触が伝わる度、風紀委員の証である制服が傷んでいくことに気付いてはいたが、けれど今の雲雀には、どうすることも出来ない。

「ッ……」

あがりそうになる声を、相手の髪を掴み身を捩ることで堪える。……が、途端深く咥えこまれ、自身の先端が最奥に――ディーノの咽喉の奥尽きに、ぶつかる感触がした。

「ん……っ!!」

びくりと身体を震わせると、正直なその反応を誉めるかの様に全体を舌で撫でられる。熱く湿った口腔の粘膜と、そして生き物の様に動く舌で施される愛撫に、雲雀自身はとっくに固く腫れてしまっていた。

当てられた歯できつく緩く扱かれ、その度に腰に溜まった熱が身体中に広がっていく。

「……っ、ぁ……」

視界がぼやけるのは、眼球の表に張った涙のせいだ。
自分の下肢に寄せられた金色の髪が揺れる様を、雲雀は浅い息を零しながら見詰めた。

 雲雀自身に纏わりついた唾液を唇で削ぐ様にしながら、ディーノが顔を退いていく。時折ぶつかる硬い歯列は勿論わざと、で。それに感じた雲雀が、金色の髪の絡んだ指に力を篭めると、始めからやり直し、とばかりに、再び深く飲み込まれてしまう。

「――っ!! ゃ、め」

緩慢に続けられる口淫に、雲雀は一番弱いのだと知っているくせに、ディーノは止めてくれようとしない。熟れた肉塊の先端からはとっくに透明なものが滲んで酷くぬるついているというのに、唾液と混じったそれを飲み下しながら、ディーノは殊更丁寧に、雲雀自身を味わっている。

雲雀が見ている前で、先端が吸われた。

ディーノの唇と雲雀の間に糸がひき、それを赤い舌先が舐め取る。ぴちゃ、と生ぬるい水音が立ち、充血しきった窪みにじわりと液が浮いた。――前だけを寛げた制服の中からそれだけを引き出され、施される行為。どうしようもなく淫らで不埒なことだと思う反面、けれどそう思えば思うほど、雲雀の体温は上がっていく。



 今朝、雲雀が登校すると、もう正門の前には赤色の車が停まっていた。
この車に乗っているとき、ディーノは大抵、ひとりなのだ。護衛の為に一人だけ腹心の部下を連れてはいるが、このときばかりは、公的な――簡単に言えば、「仕事」絡みの、大勢の部下を伴う必要のある要件で動いているときではないらしいことに、雲雀はいつの頃からか、気付いていた。


「……、……っ」


ぴくりと震えたところから、蜜が滴った。

「……イイ?」
「んッ……」
「恭弥の、ココから……」

顰められた声に混ざる笑み。
雲雀自身をゆっくりと握り込みながら、ディーノは充血し剥き出しになった先端の窪みに人差し指を掛けた。

「ッ……、んんっ、ぁ」
「……イキたい?」

爪と指の腹で、熟れた器官の形を細かに探られる。濁り始めた粘液が指を伝い、時折悪戯の様に握ったものを上下に扱かれる度、ぬちり、ぬちりと音が響いた。

「ゃ……んぁっ、もう、や、だ……っ」
「出せよ」
「! ……っ」

伸ばした舌先で裏筋を辿り舐め上げ、先端にまるで唇にするような仕草で口付けると、ディーノは顔を傾け、雲雀自身を甘く噛み始めた。

「……ッ!」

強い刺激に、雲雀の身体全部が震える。拒む様に首を振り、唇を噛んで堪えようとしても、相手はそれを許してはくれなかった。ディーノを己の下肢から引き剥がそうと動かした手を逆に掴まれ、雲雀の黒い目が揺れる。

「大人しくしてろよ」


ひどいことなんて、絶対しないから。


甘い声で囁かれる甘い言葉に絡め取られ、抗いを止めた相手の様子に、ディーノは浮かんだ苦笑を噛み殺した。……これだから、啼かせたくなるのだ。許されるなら、際限の無い位に。

 自分のものより一回り小さい、戦いには長けても性技を施される事には不慣れな細い指先に、ディーノは雲雀自身にしているのと同じ愛撫を交互に与え始めた。

咽喉奥まで咥え、唾液を絡ませて唇で扱く。
当てた歯列で挟み齧り、顔を前後に動かしながら纏わり付く粘液を舐めとり、飲み下すときに動く口蓋にわざと相手を擦り付けて、感じることを強いる。

「は……、……ッ」

がくがくと膝が震えて、雲雀は耐え切れず背を壁に擦り付けた。
腰の奥に溜め込んだ熱い塊がざわりと揺らぎ、見開いた目を、空の青色が射る。――誘われ、連れ出された屋上。最初からこうなることを予感していて、けれど拒まなかった自分の迂闊さを呪いながら、しかしそんな思考も片端から快楽に飲まれて散りぢりになっていく。と、そのとき。

突然強く吸われ、雲雀の咽喉が枯れた音を漏らした。

「――ッ!!」

びくりと腰が跳ね、溢れ出す液の感触にすら、敏感になった肉塊は悦んで震える。

「……ぁ、……」

全て飲み下したディーノの舌が、尚愛撫する様に蠢いた。
壁に凭れたまま体勢を崩した雲雀の背にディーノの腕が回されて、そのまま横たえられる。達した余韻で黒い眦からは透明な雫が溢れ、それを見下ろし微笑うと、ディーノは雲雀に口付けた。薄く開かれた唇の隙に、白濁した残滓にまみれた舌先を差し込む。ぶつかった雲雀のそれに擦りつけ、内側の湿った柔らかな壁を探った。


「ン、ん……っ」


自分の吐き出したものを口移しにされながら、けれど雲雀は、組み敷かれた身体をディーノに擦り付ける様に身じろがせた。



「……続き、してもいいだろ?」
「――っ」
「恭弥の、すごく甘かった。……もっと欲しい。駄目か?」



ひたすらに甘く求められ、頷くしか出来なくなる。



熱く重く心地良い体温を掛けられた細い肢体がしなり、雲雀と冷たいコンクリートの間で、肩から外れ落ちた学ランが、ぐしゃりと潰れた。




>>fin,




 
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