甘い甘いはじまりを、あげる。
written by Miyabi KAWAMURA
2008/0105






 穿たれていたものが引き抜かれていくときの感触が、雲雀は苦手だ。

もっと。まだ、もっと奥に欲しいと、自分の中がディーノに追い縋る感覚。それは、雲雀の意思ではない。自分では、どうにも出来ないことだというのに。……なのに、その勝手な内襞の甘える仕草に応えたディーノが、あやすように再び腰を揺らすと、雲雀は堪らなくなってしまう。

「……っ、――ッ、ぁ」

次第に固さを取り戻しつつある切っ先に、内側から突かれ、ぞくりとした快感が走った。

もう、互いに何度も達している。
くちくちと、雲雀の胎内を満たしている液体が、掻き混ぜられて音を立てる。繋がったままの身体、ディーノを飲み込んでいる場所からもそれは滲み出し、二人の間でぬるついて、皮膚を濡らし、汚している。

雲雀は、嫌がるように首を振った。
おかしくなる。もう、どんなに気持ちが良くても、感じても、吐き出せるものは残っていない。一番奥の、更に深いところを何度も突き上げられた。自身を弄られ、ディーノの掌を濡らして、どんな声で自分が啼いたかなんて覚えていない。――咽喉が今、ひどく枯れていて痛い。それが、答えだ。

ず、と、ぐずついた感触と共に、肉塊が退いていく。


「――ッ、っ!」


いつまでも、この感覚にだけは慣れることが出来ない。ディーノもそれを知っているらしく、雲雀の唇を、ディーノのそれが塞いだ。

二人でくるまっているブランケットの中で素肌が擦れ、雲雀の腰の左右を掴んでいた大きな手が、離れる。狭くきつい、濡れたところから全て抜ききった後、ディーノの身体が、雲雀の上に覆い被さった。


少しだけ、重い。けれどこれは、嫌な重さじゃない。


息を漏らした雲雀の身体から力が抜けて、背がシーツに沈む。ゆっくりと瞬きをする黒い目を満足そうに見下ろして、ディーノは、雲雀の唇の上に、触れるだけのキスをした。

「uno ……」

少しだけ離れた吐息が、もう一度触れて、次は頬に移る。

「―― due、tre ……、quattro」

下唇を食むように吸われ、ちゅ、と音が鳴った。ディーノが囁いている単語の意味。その見当は雲雀もつく。

「や、だ……」
「避けるなよ」

悪戯を楽しむような、如何にもディーノらしい表情で微笑って、しかし甘く眇められた目の淵は、行為の名残で色付いている。ずきり、と、鈍い重い熱が彼を受け止めていたところで疼いて、雲雀は眉を寄せた。

「も、ぅ……、本当に、嫌だ」
「じゃ、これが最後な」

舌、出して、と囁かれ、僅かな躊躇いのあと差し出すと、白い歯列に挟まれた。

そのまま、二人分の舌が、雲雀の口腔に潜り込む。強く絡み、噛み扱かれて、口移しにされた唾液を飲み下す。いつの間にかディーノの首に回ってしまっていた自分の腕に気付いて、一瞬それた雲雀の意識を、しかしディーノは歯列の裏を撫ぜる舌先で引き戻した。

「っ、は……っ」

息継ぎの為に離れた唇、舌先から、唾液が糸を引く。

「キス、好きだよな、恭弥は」
「……何」

伏せていた目を上げると、瞼の上に吐息が触れた。思わず閉じてしまったその薄い皮膚の上を、濡れたものが、なぞっていく。


「何度でも、してやるよ」


恭弥が欲しいだけ、何度でも。好きなだけ、好きなところに。

「……次は、どこがいい?」
「いらない。もう、したくない」
「じゃあ、オレの好きにする。――いいのか?」

問いながら、しかし答えを待つつもりはないらしい相手に、手を取られる。指先を齧られ、掴まれた肩。黙ったままでいると、ディーノはまた、微笑った。

――鳶色の、目。

自分の、黒い色のそれとは違う、透けるような明るさをもつそれが、溶けるみたいに甘い艶を浮かべる瞬間が、雲雀は好き、で。



「……いいよ」



僕もしたい、と。



もし告げてやったなら、どんな色がそれに浮かぶのか。
少し愉しみに思いながら、雲雀は、ゆっくりと、唇を動かしていった。




>>fin.


 今年もよろしくおねがいいたしマウス(笑)!
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