鍵付きの檻に
じ込めて、
誰にも見せてなんてあげない。

2007/0109
written by Miyabi KAWAMURA
special thanks>>D/H BIYAKU Fes.






 その部屋の扉の前にいた黒服の男は、雲雀の姿を見るなり、咎めるような渋い苦笑を、浮かべた。


「ボスには、会えないぜ。――誰も通すなって命令だ」
「……それで?」


問い返し、少しの沈黙の後、雲雀はドアノブに手を掛けた。
その勝手を阻む言葉は、案の上、無い。


「あなたは、行っていいよ」


横に退いた相手の方を見るともなしに、雲雀が言った。



「朝まで、誰もここに近づけないで。……じゃあね」




開いた扉の隙の中に細い身体が消え。
錠の落ちる音が、響いた。








 透明なグラスの中に仕掛けられた「罠」の存在には、皆が気付いていた。
しかしあの状況で回避することは、既に誰にも、出来なかった。

先日、ボンゴレ十代目として襲名披露を終えたばかりの青年に向けて、祝杯だと差し出されたグラス。銀色のトレイの上に並べられた幾つかの内、如何にもこれを手に取れと言わんばかりに差し出された一つに、ボンゴレが伸ばしかけた手。……それを、全く不自然を感じさせない動きで制したのは、傍らにいた、キャバッローネ十代目だった。


取り上げたグラス、揺れる赤色の液体。


僅かなためらいの素振りも見せず、そして周囲に止める時間すら与えず。
ディーノはその「罠」を、彼の咽喉の奥へと、滑り落としたのである。








 暗い寝室の中、浅い呼吸の音が響く。ベッドヘッドに背を預けたディーノに向かい合い、その身体を跨ぐようにして、雲雀は金色の髪を胸の中に抱き込んでいた。

「……ッ、ァ」

シャツ越しに胸の尖りを齧られ、濡れた布が肌に張り付く。
舌を擦りつけるように形を辿られ、弄られて、雲雀は身体を震わせると、ディーノに体重を預けた。肩口に顔を埋め、黒いスーツの、上質な固さに歯を立てる。

「恭、弥……、ッ、――っ」

耳に押し当てられた唇も、注ぎ込まれた吐息も、酷く熱い。

「ン……ッ、ぁ、ッ」

密着した二人の間で、水音が鳴る。
雲雀の腰に左腕を回し、強く引き寄せながら、ディーノは掴み出した自身を、嬲っていた。屹立し、固く質量を増した肉塊を、右手で握り扱く。それは既に一度、逐情していた。白濁が、雲雀と、そしてディーノが着たままにしているスーツを、べたりと濡らし鈍く光らせている。

「お、前の……ッ……」
「――ん、ぅっ」

ディーノの語尾は、もはや湿りきった吐息の塊だ。
耳を舐め弄られ、時折頚動脈の上を強く吸われながらの言葉に、雲雀は耐えるように首を振った。


「恭弥、の、匂いだけで……っ」


何度でもイケそうだ、と。


咽喉の奥で甘く笑みながら、しかし常の彼には無い張り詰めた声音で囁かれ、雲雀の体温も否応無しに上がっていく。

「……ッ、好きに、すれば……っ」

腰をくゆらせ、雲雀は呻いた。


「あ、なたの……っ、好きなだけ……」
「――ッ、く」


自身をきつく握り扱くディーノの手が、雲雀の身体の中心に、ぶつかる。
雲雀自身も膨らみ、衣服の中で熟れ始めていることに気付いて、ディーノの中の劣情が煽られ勢いを増していく。びゅる、と、再び先端から白濁液が溢れ出た。濡れそぼった右掌と、そして雲雀の腰を抱き寄せていた左手で黒い髪を掴むと、ディーノは雲雀の唇を、己のそれで覆った。

深く舌を突き入れ、引き抜き、また突き入れる。

歯列を抉じ開け、咽喉奥まで達する挿入。
唾液が混ざり口腔を掻きまぜられて雲雀がくぐもった声を上げても、許さず口腔を犯し続ける。……上の口だけでなく、本当は下の口もこうして犯してやりたいのだと伝えるその動きに、雲雀の腰奥で痺れるような疼きが湧いた。

「……っ、はっ」

ず、と、絡み合わせたままの舌が、鈍い擦過感を残す。離れた唇から漏れた、互いの息。



「恭弥、もう、……っ、いい」

雲雀の唇を歯で挟み、宥め、掠めるような口付けを繰り返しながら、ディーノが言った。

「今日は、帰れ。……お前に、何するか、自分でも分かんねえ」

言葉の合間に動いた手が、雲雀のシャツの襟を掴む。強い力で左右に引かれ、糸が千切れ布が裂けた。言葉とは真逆の行為。けれど、ディーノの手は止まらない。


「――抱き、たい。犯したい。お前の、中に……っ」
「……ぁ……っ」


無理矢理掴まされた肉塊の、固く濡れた感触に、雲雀が咽喉を震わせた。

「――ゃ、ばいんだよ。……お前のこと、グチャグチャにしてやりたくて、……っ、堪らねえ」

雲雀の指ごと自身を上下に扱きながら、けれどディーノは、吐息の合間に鳶色の目を眇めた。



「お前が、嫌がって、も……ッ、止めてやれない、だから」



帰れ、と続く筈だった声を、雲雀の唇が、塞いだ。


ディーノの唇に噛み付き、隙の中に舌を捻じ込む。
そうしながら、掌の中の肉塊を擦り、掻いた。途端、びくりと跳ねたそれの先端に爪を当てる。

「……恭――っ!」

雲雀の手を覆うディーノの手に、痛い位の力が篭った。それに構わず身体を伏せ、下肢に顔を寄せる。

「! 恭……っ、弥――ッ!」

ディーノと、そして自分の指ごと、雲雀は肉塊の先端を口腔に咥え込んだ。まみれた液体を掬い、舐める。ぴちゃりと音を立て、上目遣いにディーノを見遣ると、一瞬苦しそうに顰められた鳶色と、黒色の瞳が交差した。

「――ッ!」

左右の手で頭を掴まれ、思い切り引き寄せられた。
猛った肉塊が容赦なく咽喉を突き、口の中をディーノ自身と、そして苦くぬるついた粘液が満たす。

「ン、んん……っ」

先端で奥を擦られ、雲雀の咽喉が蠢き震えた。その締め付けと、熱く湿った粘膜に包まれた歓喜に煽られ、ディーノの下肢が大きく前後する。

「……悪、ぃ――ッ……ッ!!」


濃く濁る大量の液が、雲雀の口腔に吐き出された。


「――っ、ッ!」

嚥下する咽喉の動きが間に合わず、唇の端から溢れ出したものに思わず雲雀が顔を退いた瞬間、その眼前で肉塊が跳ね、白濁が弾け飛び散る。

ディーノの体温そのままに熱い、独特の匂いを持った、液体。

滑らかな線を描く頬と、黒い前髪。そして睫毛にまで絡んだ白濁が顎先から滴り落ち、雲雀は閉じた瞼を震わせた。



 息も整わないままの身体を引き起こされ、貪る強さで口付けられる。
雲雀の口腔に残る己の精液に構わず、ディーノは舌を入れて唾液ごと掻き混ぜ、ぬかるむものを飲み交わした。そうしながら相手のスーツを脱がせ、ネクタイを乱暴な手つきで緩め引き抜くと、細い肢体をベッドに組み伏せる。

熱に浮かされたような、艶のある底光りをする鳶色の目が、雲雀に据えられる。


出逢ってからの、この数年間。
どんなときにも、戦っているときにすら向けられたことのなかった表情を――獰猛な、欲情に裏打ちされた表情を目の当たりにして、雲雀の目が、甘苦しく眇められた。


肌に落ちる唇の弾力と、その熱さ。
掠めるように触れたのは最初だけで、胸の尖りと、腹筋の窪みとを探るように這った舌が、雲雀の身体に薄らと浮いた汗を、まるで獣のような仕草で舐め上げる。
ざらざらとしている、濡れた熱いもの。下肢をもどかしげに揺らすと、雲雀はディーノの髪を掴んだ。胸を擽るそれに、指で縋る。


ディーノの手が、雲雀の下肢に掛かった。衣服を寛げ、剥ぎ取る動きを、雲雀は腰を浮かして助けた。空気に晒された素肌に、鳥肌が立つ。大腿に感じた、掌の感触。柔らかな肉と薄い筋肉の張ったそこに、ディーノの指が食い込んだ。


力ずくで開かされた両脚の間に、受け入れさせられた体躯。


掴まれた脚が畳まれ、押し上げられる。身体が二つに折れて、自身と、後ろの口すら露わになる姿勢に、細い肢体が軋む。――雲雀の中心は、先刻まで耳に流し込まれていたディーノの押し殺した喘ぎと、熱い呼吸、そして口腔に受け止めた淫らな味のせいで、もうとっくに立ち上がり、先端を充血させていた。

「ん――ッ……っ!」

淫らな場所の全てを視姦されながら肉塊をぎちりと握り締められ、雲雀は息を漏らした。
裏筋に添えた親指で、滲むものを押し上げるように愛撫され、窪みから滴る蜜の量が増していく。

先走りを掬い取り、余さず濡らした右手の五指を、ディーノは雲雀の後孔に添えた。
敏感な箇所は、異物の気配にきつく閉じた後、息づくような反応を見せる。


「……っ……」


ディーノは、掠れた息を漏らし、唇を舐めた。
――この、内側。雲雀の胎内の、柔軟で、そしてきつい締め付け。



今すぐこの狭い中に、自身を捻り入れ、抉り突き上げてやりたい。
痛い程に溜まり膨れ上がった欲望を、組み敷いた身体を貫き揺さぶって。……中に、ぶち撒けてやりたい。


背筋を、ぞくりとした快楽の予感が過ぎる。




 凶暴な衝動に脳を灼かれるまま、ディーノは昂ぶりきった自身を掴み、先端をそこに宛がった。しかし、解されてすらいない小さな口は、それ以上の挿入をきつく拒む。

いつもなら、感じ過ぎた雲雀が啼き声を枯らすほどに指と舌で嬲り、濡らし、蕩けさせてから押し広げて咥えさせる場所だ。無理にこじ開け最奥を抉れば、繊細な内襞を傷付けてしまうに違いなかった。……しかし。

「――ッ……!」

雲雀の後孔を、ディーノは指で暴いた。強く噛み付いて締まり、奥への侵入を拒む中の抵抗にも、雲雀の漏らす引き攣った声にも構わず抉り、中指と人差し指の付け根までを埋める。そして力を篭めて指を開き僅かな隙を作ると、ディーノはそこへ、自身を穿ち入れた。

「……ッ、ンっ、く!」

奥歯を噛み、ぐ、ぐ、とひといきに肉塊を沈め、雲雀の中を犯していく。
真上から体重を乗せ、強張り揺れるままになっている細い両足首を掴んで更に開かせ、腰を打ち付けた。


強引な挿入に、雲雀の内壁がきつい収縮を繰り返す。穿たれた肉塊に絡み、息継ぎをするように蠢き、抗って締め付けて、痙攣した。しかしその全部が、ディーノに愉悦をもたらす、極上の刺激に変わっていく。


奥まで咥えさせた肉塊を引き摺り出し、また捻じ込み、固い切っ先を柔らかな中で擦り立てる。



「んん、ッ、ぅあッ!!」



不意に下腹の奥壁に注がれた熱に、雲雀が高く啼いた。


「――ァ、……っ」

深い息を吐いて、ディーノが身体を引く。
半分程引き抜き、雲雀の両腰を掴み固定すると、肉塊に纏わりつく白濁を確かめるようにしながら、再び律動を始めた。

「っ、はっ、ぁ……ッ」

胎内に吐き出された精液が、ぐちゅりと音を立てる。抉り、突き上げられるのと同じタイミングで、雲雀の唇から喘ぎとも呻きともつかない声が漏れた。

きつく目を閉じ、穿った自身で雲雀の中を抉り、もっと深く感じられる場所を探りながら、ディーノは浅い息を吐き、身体を揺らした。
雲雀を穿つ度、腰奥に重くうねるような快楽が凝り熱を増していく。着たままにしていたスーツが邪魔になり、雲雀を犯す姿勢のまま脱ぎ捨てると、ディーノは雲雀の中を、抉った。





 深く貫かれ、限界まで広げられ揺すられる。

肉塊を咥え込んだ下肢に広がる痛みと、ディーノに犯された場所から生まれる、誤魔化せない快感。耐え切れなくなった雲雀の身体が逃げを打つが、それが叶う訳が無かった。

「ィ……っ、あ、ぁっ!」
「まだ……、だ、恭、――ッ」

自身を不意に掴み扱かれ、雲雀が目を見開いた。

「ゃ……っ、ァうっ、ンンッ!」
「――ッ、ぁ、……ッ」

そこを弄ると、雲雀の柔襞が震え蠢くことを、ディーノは知り尽くしている。
左掌の中に捉えた肉塊を上下に扱き揉んで、先端に爪を立て刺激した。びくびくと、下肢だけでなく全身を震わせて、雲雀が達する。それでも許さず、ディーノは手の甲の青い絵を白濁にまみれさせたまま、雲雀自身を更に追い上げた。

吐精の余韻に震える箇所を乱暴に嬲られ、雲雀が枯れた息を漏らす。その様を見下ろしながら、ディーノは身体の内から際限無く生まれる劣情のまま、腰を揺らし続けた。

注ぎ込まれた白濁でぬかるんだ柔襞は、少しずつ従順になっていく。

「……ッ、――ィ、ッ、あ」

ディーノを包み、奥へ誘うように蠢いた自分の中に気付いて、雲雀が背を浮かせた。
シーツを掴み震えていた指先が、ディーノの見ている前で、ゆっくりと持ち上がる。濡れた指がディーノの頬に触れ、汗で乱れた金色の髪を掴んだ。

そのまま、雲雀の両腕が、自分を犯す相手の首を、掻き抱く強さで引き寄せる。


「――ィ、い……っ」


穿たれる角度が変わり、切っ先で胎内をきつく突かれる。
その刺激に甘く啼き、ディーノを最奥に飲み込みながら、雲雀は唇で触れた耳朶に歯を立て、齧り付いた。


「――もッ、と……ディ、ノッ……」


紛れも無く欲情の色が滲んだ熱い息を注ぎ込まれ、ディーノの身体が、震えた。
雲雀の肩を掴み引き剥がし、唇を奪う。吐息も嬌声も、何もかもを強引に浚い、舌を絡み合わせた瞬間、雲雀の中を再び、白濁液が満たした。

受け止める限界を越えたそれが、柔襞の隅々までを濡らし広がり、溢れていく。


「……っ、――っ、は」


最奥に穿っていたものをずるりと引き出しながら、ディーノが感じきった吐息を漏らした。
額を雲雀のそれに擦り付け、名残を惜しむように唇を合わせ柔らかなそこを食みながら、また深く重ねる。


「恭、弥……、――っ」


荒い息を吐きながら、雲雀は自分を見下ろす、鳶色の目を見詰め返した。……まだ、足りないのだろう。こんな程度の繋がりで、ディーノの身体を灼く熱が収まりはしないことを、雲雀は知っている。







 先刻、ディーノが敢えて自ら飲み下した、「罠」。
同盟の長たるボンゴレの代わりに彼が飲んだ薬は、そう簡単に、効きを失うものではない。


あれは、理性を犯し、欲情を煽る劇薬だった。


薬を盛った人間の見当は、もうついている。ボンゴレは、確かに強大だ。しかしその為に敵は多く、また選ばれる手段も様々にある。

薬の効きに負けた「獲物」に、あらかじめ用意していた「相手」を宛がい、後から被害者として訴えさせたとしたら。……ほぼ確実に、マフィアの握る金脈と、保持している莫大な資産を「合法的に」取り上げたがっている財務警察が動くだろう。この小さな綻びを利用して、組織の切り崩しに掛かってくるのは、火を見るより明らかだった。

――その事態を、避けたいなら、と。

この「罠」を仕込んだ相手は、あわよくばボンゴレ相手に有利な交渉を持ち掛けようとでも思ったのか。……確かに下らない、ありふれた策だが、用いられた道具は、厄介極まり無い代物だった。そしておそらく、ディーノはその謀り事に、途中で気付いたのだろう。


同盟の、要であるボンゴレの為に、キャバッローネの長は動く。


……動かざるを得ないことを、雲雀は他の誰よりも知っている。








 目を閉じ、吐息を飲み込むと、雲雀は身体を起こした。
下肢を、動きにつれて溢れたものが伝う。それに構わず、雲雀は後ろ手に手をついた。


――そして立てた膝を、ゆっくりと、開いていく。


湿った両脚の付け根で、拭いきれない羞恥に、濡れそぼった雲雀自身がひくりと震えた。



きて、と誘う言葉の形に動かした唇が、塞がれる。


容赦の無い力で抱き竦められた細い肢体が撓った。……それでも、雲雀は相手の背に腕を回した。


再び中に受け止めた熱に目を閉じる。
底の見えない快楽に声を漏らし、穿たれるのに合せて、身体を揺らす。ぶつかり擦れる肌と、混ざり合う息、白濁。――飲み込まされたその全部から、多分自分にも毒が回ったのだと、雲雀は思う。






……朝が、来るまで。


ディーノの傍には、自分だけがいればいい。


顔も見えない敵の策略も、彼を縛る制約も、そんなもの全部関係ない。
自分の中に全て吐き出させ、注ぎ込ませて、それだけで。







せめて、この夜が、明けるまでは。




>>fin.


ディノヒバ媚薬祭提出作品です。
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ディノヒバ媚薬祭(終了しました)

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