怖がりなきみは、この初めての恋にすら
written by Miyabi KAWAMURA
2008/0421
(2008/0222〜0421迄の拍手御礼文)
指と、そして掌で手繰り寄せた布を掴む。
背に当たるコンクリート。その冷たさと固さは、身体の下に敷かれたジャケットと学ランの布越しにも感じられた。
纏うものを全て剥ぎ取られ、開かされた脚。身体にかかる重さと、下肢に響く痛み。
「……ぁ、っう」
噛み締めていた唇から、息を継いだ瞬間に呻きが漏れた。
浅い呼吸を繰り返し、雲雀はけれど、それ以上声を出さない。否、出せない。
これ以上、咽喉の求めるままに声を出したら、きっとそれには、聞くに耐えない掠れた喘ぎが混ざりこんでしまうだろうことは、雲雀自身が一番よく解っている。
「恭弥」
真上から注がれた声に、雲雀は瞼を薄らと開いた。
眼球の面には、涙が浮かんでいる。只でさえ揺らぐ視界は、逆光も合わさり薄暗く翳っている。けれどそんな状況下だというのに、自分を見下ろす相手の金色の髪が陽光に透ける様が妙に綺麗に見えて、雲雀は思わず、指を伸ばしていた。
「……そのまま」
「ッ……! ……ぁ」
「オレの、背中に、手……」
手を掴まれ、指先と爪とを、甘く噛まれ。
そして引き寄せられ、相手の背に腕を回した途端、一息に最奥を穿たれた。
「――ん……ッ……!」
胎内の未だ頑なな場所が、咥え込まされた熱に震える。
揺れるままになっていた膝がびくりと跳ねて、身じろぐことしか出来なくなった下肢から、ぞわりと快感が這い上がる。
「ァ、……っ……ぁ」
「――ッ、恭、弥」
「ぅあ……っ、んんっ」
辿り着いた奥尽きで、そこを抉り突き上げるように腰を揺るがされ、雲雀の下腹が痙攣する。
限界まで広げられた後孔は息継ぎに似た動きを繰り返し、その度に蠢く柔襞が、雲雀の意思とは関係無しに包んだ肉塊を擦り扱いた。
「――ゃ……ッ!」
咽喉を鳴らし、目を見開いた雲雀の背が、浮く。
密着した二人の身体の間で、熟れた自身がディーノの衣服に擦られたせいだ。
先端が、熱い。
滲んだ蜜のぬるつく感触。
けれど吐き出すには足りないもどかしい刺激に、雲雀は嫌がるように首を振った。
眦から、温かいものが滑り落ちる。
……と、その流れを追うように、柔らかな感触が、雲雀の頬に触れた。
「好きだ」
雲雀の眦に浮いた涙を寄せた唇で宥め、ディーノはそう繰り返した。
「すきだ、恭弥。……好きだ」
声の途切れる合間に、頬に、額に、瞼の上に、落とされる口付け。
雲雀の身体に快感と無理を同時に強いながら、けれどディーノは信じられないくらいに甘く、雲雀の名前を呼ぶ。
「……っ……」
耳朶を噛まれ、雲雀の口から掠れた吐息が漏れる。
穿たれたままの身体から湧き上がる痛みと欲、うるさいくらいに響く心臓の音。
……そして、重なり合う肌から生まれる、息苦しいような、何か。
「……ゃ、だ……っ」
ディーノの首に回した腕。
拒む言葉を呟いて、しかし雲雀は、相手のことを掻き抱くように引き寄せた。
注ぎ込まれる熱、吐息、思い、言葉。
自分を抱く腕の強さも掛けられる体重も、雲雀は嫌だとは思っていない。けれど。
「恭弥」
……けれど、その声で名前を呼ばれるたびに。
雲雀は何故か相手の腕を振り解いて遠ざけてしまいたくなり、そして。
それと同時に、雲雀は。
自分でもどうしようもないくらいに、何故か、相手の肩越しに見える空の青色が、欲しくて堪らなくなってしまうのだ。
>>fin.
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