融。‐前編‐
written by Miyabi KAWAMURA
2006/0913
お願い溶けて。
心も全部、不安も全部溶かして、二人で融けて。
もうこのまま。
どろどろに融けあってしまうのも、いいとすら思う。
「……、ぁっ、ぅ」
グリムジョーの肩口に顔を伏せたウルキオラが漏らす声が、鼓膜を揺らす。
白く色を失う程に力の篭められた指先。
ウルキオラの爪が掴まれた両肩に喰い込むが、そんな痛みに気を払う余裕など、グリムジョーにも無かった。
目の前に晒された……否、晒させた肢体。
一方的に弄られる感覚に堪える喘ぎ、そして我慢しきれず、こぼれる声。
釦を全て外され、肌蹴られた制服の白いシャツ。
引き抜かれたベルト。無防備に暴かれた下衣。
「ウル、……っ、」
「ぅ……んんっっ!」
左手でウルキオラの腰を掴むと、グリムジョーは右手をウルキオラの下腹に滑らせ、五指全てを使ってウルキオラ自身を扱いた。
「!!……っやぁ」
「イ、ケよ……、」
「……っ、ぁんん!!」
促されるままに溢れた白濁が、二人の体の上をどろりと流れる。
「ウルキオラ……」
脱力したウルキオラがグリムジョーの肩に額を押し付けた。
「も、ぉ……っ」
開放の余韻に、細かく震える体。
常より酷く高い体温が、ウルキオラの背に回したグリムジョーの掌からも感じられる。
汗で張り付いたシャツ。自分の身体よりも一回り細い肢体の感触。既にニ度も追い上げられ、脱力してしまっているウルキオラの唇が、グリムジョーの首筋に触れる。無意識なのかもしれないが、それはウルキオラが時折見せる仕草だ。
……好きだ、と思う。
ウルキオラの、声、身体、特別に手入れしている訳でもないだろうに綺麗に整った爪、そして自分の名前を呼ぶ声。
「ウル……、」
「……な、に……っ?」
グリムジョーはまだ、ウルキオラを開放するつもりは無かった。
塗れたままの掌で、ウルキオラを引き寄せる。椅子に座るグリムジョーに向かい合う形でその膝の上に座らされている為、ウルキオラの下肢とグリムジョーの下肢とが、お互い自身を擦り付ける様に触れ合った。
「!!?……ッ」
「……っ、エロい顔」
そう言って、ウルキオラを揶揄してやった。
立ち上がり、ぬるつく器官がぶつかり擦れる、不確かな……けれど確実に淫らな感覚。ウルキオラの吐き出したものと、グリムジョーから溢れたものは、前を寛げただけにしていた制服の下衣まで汚している。その濡れた布が擦れるのもまた、快楽の元になった。
「ヤ、……っだ!!」
背が震えた拍子に身体から力が失われ、ウルキオラは咄嗟に両手をグリムジョーの肩に突いた。しかし、既に陥落させられた下半身は、グリムジョーのそれとより深く密着してしまう。
少しでもグリムジョーから離れようと動くウルキオラの腰を両手で掴み、逆に下から押し上げる様に身体を動かすと、立ち上がったままの部分が互いにぶつかり弾きあい、淫らな液を下腹に塗りたくる動きに変わる。
「グ、!!!……っ、」
全体重をかけられたとしても、グリムジョーよりウルキオラは随分と軽い。
「ぅ……、ぁ」
「ウルキオラ」
「……っ、グリムジョー」
呼びかけに、乱れた息のままウルキオラが伏せていた顔を上げる。
間近な碧と水浅葱。
瞳の表に揺らいでいた生理的な涙が、ウルキオラの瞬きに合わせて眦に滲む。……グリムジョーは、ウルキオラの顔の中でも、その左目がなんとなく好きだった。はっきりとした理由は自分でも解らないが、おそらく、右利きの自分が触れるとき、最初に指が届くのがウルキオラの顔の左半分だからかもしれない。
……だから、今もやはり。
右手が無意識の内に動き、ウルキオラを引き寄せていた。
重なる寸前にお互い僅かに唇を開き、初めから深く口付ける。
ウルキオラの舌が、グリムジョーの上口蓋に触れる。グリムジョーは、その舌裏を追う様にして弄る。
「……ん……っ」
ウルキオラ自身は解っていないかもしれないが、彼の身体の内側は酷く淫ら、だ。
「……ウ、ル」
腰を支えたまま、右手を下肢の更に奥へと差し入れる。
伝った液体で既に濡れている秘所の入り口に、ぐ、と指を掛けると、ウルキオラがびくっと跳ねて、その身体があからさまに逃げた。
「イ、やだ……、っ!!」
「何が嫌だよ?」
言葉とは裏腹に、逃げる身体を更に追えば、その入り口は、肉の抵抗を感じさせながらもグリムジョーの指を受け入れる。言葉だけの拒絶。そんな事では、触れる手を止める役にも立たない。
ごく浅い位置に沈めた指で、内側から壁をなぞる。
「……っ、痛」
「息止めんな。……ほら」
「っ、グリムジョーっ!!」
蕾を押し開き、強引か、と思いつつも指を更に増やそうとした刹那、水浅葱の髪を掴んだウルキオラの指が、それ以上は許さないとばかりに引いた。
「んだよ……?」
「ヤ、だ……、」
流石に手を止めて、僅かに高い位置から自分を見下ろしているウルキオラを見る。紅潮した、本当ならば白い肌。浅い息を吐き出す唇。……嫌、とは言っても、どう見たところで身体は既に限界である筈なのに。……しかし、こうまで頑なに拒まれてしまえば、グリムジョーも一応手を止めざるを得ない。……無理にして、傷つけたい訳ではないのだ。
「どうした?」
下肢を弄っていた手を背に回し、ぽんぽん、と叩きながらそう問い掛ける。だが、あやす為に添えた手を、背筋に沿って下肢へと滑らせてやれば、想像通り、ウルキオラの身体は過敏に反応した。
「こんなんなってんじゃねえか。何が嫌だって?」
「……駄目だ。絶対しない……っ」
「……オイ」
「こんなところ、で……、」
絶対に、嫌だ。
潤んだ目のままそう言いきるウルキオラの言葉は全くの正論で、グリムジョーも苦笑いするしかなかった。
確かに、此処は、学校だ。
如何に放課後の、人の少ない時間帯とはいえ、こんな行為をするのに相応しいかと言われれば間違い無く否、である。
「駄目だ。最後まで、なんて、絶対しない」
動きを止めたグリムジョーの態度を肯定と取ったのか、ウルキオラが身体を起こす。そのとき、僅かに濡れそぼった自身がグリムジョーの制服に擦れた。瞬間、息を詰めたウルキオラの表情に、グリムジョーの身体は反射的に動いていた。
「……っ……!!!」
突然自身を強く握り込まれ、声を上げそうになった口を、ウルキオラは自らの掌で塞いだ。
「……んん!!……っ!!」
ぐちゅ、と、既に溢れていた液だけでなく、更に追い立てる水浅葱の指。
「声出すなよ」
「ん……、ぁっ……!!」
白濁が混じり始めた、薄透明な液。吐き出す寸前まで追い上げた手を止めると、グリムジョーは離れかけていた互いの下肢を、再び引き寄せた。
「……目、開けろ」
ぎゅ、と目を閉じ、耐えていたウルキオラに呼びかける。
薄らと開いた碧が、否応無しに煽られた羞恥で揺れた。……ウルキオラが見ている先で、グリムジョーの掌が、自身とウルキオラを共に掴んで、ぐち、と握り込んだ。
「……はっ……んん!!!」
「そのまま、見てろ」
信じられない行為。有り得ない快楽。
水浅葱が、小さく笑った。
>>next.(please,wait.)
後半に続。本題は後半で…。□Back□
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