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dis ; Poison
written by Miyabi KAWAMURA
2007/02/16
(無料配布グリウル本「dis;Poison」再録)







 正面の空席が、何故か気になった。



 召集された十刃は、未だ姿を見せていないウルキオラを除けば、もう全員がそれぞれの席に着いている。

「何だ。サボりか、ウルキオラの奴は?」

ウルキオラの隣に座る男が、物珍しげにそう言う声が聞こえた。
確かに、こんな時間になってまで、彼が現れない事などこれまで無かった。

「おい。6番。」
「・・・知らねぇよ。」


雑に番号で呼ばれ、グリムジョーも同じく雑に返す。
事実、自分も知らないのだ、ウルキオラの不在の訳を。

十刃同士だからといって、全員が常に互いに与えられている任務の内容を把握しているという事は無く、ましてやその在不在に気を配っている訳も無い。同胞、と称される間柄ではあっても、それは馴れ合いの関係とは違うのだ。・・・だが、今此処にいる全員は、つい昨日、今と同じくこの部屋に召集され、ウルキオラからの報告を受けたばかりだ。・・・昨日任務を終えたウルキオラは確実に今虚圏に居る筈で、なのに、姿を見せない理由は何なのか。



・・・嫌な予感がした。



既に、主が現れる時間間際になってしまっている。が、しかし。
グリムジョーが席を立とうとしたその時、大扉が重い音と共に開いた。

「おはよう、皆。」

そう言いながら、背後に統括官を従え入ってきたのは、藍染惣右介だった。

・・・やはり、ウルキオラは現れない。

十刃を見渡す主の目。そしてその視線が、ひとつの空席を見遣った後に、グリムジョーの上で、止まった。

「・・・何か?」
「いや、」

くすり、と微笑され、グリムジョーは表情を険しくする。

藍染の思考は読み辛く、穏やかな顔を見せたからといって、決してその内面が比例している訳では無い。その事を、上位の破面ならば皆知っていた。
「気にしないでくれ。ただ・・・、」
水浅葱が露にした警戒を逆に愉しげにあしらうと、藍染は言葉を続けた。



「お前が、此処にいるとは思わなくて、ね。」



言われた言葉の意味を理解するより先に、身体が動いていた。


「・・・失礼します。」


立ち上がり、部屋を出る。
一応入れた断りの言葉も、殆ど無意識だった。
掛けられて然るべきな静止の声も叱責の声も、水浅葱の背に向けられる事は無く、それが更にグリムジョーの意識に警鐘を鳴らす。


嫌な、予感がした。









 ウルキオラの自室近くまで来て、グリムジョーは探査神経を僅かに尖らせた。グリムジョーの推測・・・最悪の状況の推測に反し、ウルキオラの霊圧は、室内に確かに感じられる。が、常とは微妙に違和感があるそれに背を押され、グリムジョーは躊躇い無く扉に手を掛けた。

「・・・入るぜ?」

鍵は掛けられておらず、ドアノブは簡単に回ったが、しかし。
扉を開こうとした途端、阻む力に押し返された。

「っ、おい!」
「・・・来るな!」
「!? 何言って、」
「帰れ。」
「・・・っ、」

 やはり何か妙だ。
声を掛けても、戻ってくるのは埒も無い拒絶ばかりで、扉越しに押し問答するよりも、実際にウルキオラを見た方が早いと判断したグリムジョーは、力任せに扉を押し開けた。・・・瞬間、意外な程簡単に扉が開く。
ついた勢いのまま、室内に脚を踏み入れると、扉近くに立っていたウルキオラにぶつかる結果になってしまった。
反射的に相手の二の腕を掴んで引き寄せると、碧眼に間近に見上げられた。

「・・・馬鹿が。来るなと言った・・・、」
「黙れ。」

それだけは普段とは変わらないウルキオラの素っ気無い物言いを遮ると、グリムジョーは掴んだ身体から直に伝わる相手の異常に、眉を寄せる。

「・・・何だ、お前?」
「・・・っ、」
「あったんじゃねえか、何か。」
「・・・訳の解らない事を言うな。」
「ざけんな。」


腕に力を篭めると、ウルキオラを扉に押し付ける。
感じる霊圧が酷く荒い。・・・まるでささくれ立っている様な。


「言えよ。」

水浅葱の視線が碧の双眸を捕らえ、そしてその時、グリムジョーは有り得ない事に気が付いた。
「・・・その目。いつ治った?」
つい昨日抉られたウルキオラの左目が、再生している。
本来なら数日の猶予を必要とする筈の完全再生。なのに、その目は色彩までもが鮮やかな碧を取り戻していた。

「・・・っ、触るな、」

伸ばした指がウルキオラの眼窩に触れる寸前、張り詰めた制止の声が飛ぶ。が、止まらなかった指がその肌に触れた瞬間、ウルキオラは大きく震えると、ぎゅ、と目を閉じてしまった。
「ゃ・・・、っ、」
「・・・ウル?」
白い肌に辿り着いた指先から、湿り気と、震えが伝わってくる。
そのまま両掌で頬を包む様にしてやると、グリムジョーの手首の辺りに、ウルキオラの吐息がぶつかった。
浅く早く、そして高い温度を持ったそれ。
「お前・・・、」
先刻からの予感が、確信に変わる。
「・・・言えよ。何が、あった?」
言葉を切って問い詰めると、刹那の逡巡を挟んで、掠れた声が戻された。

「・・・っ、飲んだ、」
「・・・何、」
「薬、・・・、再生を、早める・・・っ、」
「・・・っ、馬鹿か!」

ウルキオラの言葉の断片から、事態を察したグリムジョーが呻いた。

破面である自分達は、高密度の霊子体だ。
この身体も何もかもは霊子の結合によって構成されていて、その造りが複雑になればなる程、個体の構成密度は高くなり、比例して有する能力も上がっていく。しかし、それは諸刃の剣とも言えた。高密度、そして且つ複雑であるが故に、一度波長を狂わせてしまった霊子体は、酷く不安定になってしまうのだ。・・・無論、破面上位にある者ならば、そんな状態に陥る事など皆無に等しい。・・・が、今のウルキオラは、訳が違った。

彼が飲んだ、という薬。

霊子の強制蘇生を促すそれが、本来の目的である左目の再生を終えた後も、ウルキオラの中に残留し、彼に何らかの影響を与えているに違いなかった。

先刻、ウルキオラの霊圧を「荒い」と感じたのも、その所為だろう。
霊力は、霊子に付随する物だ。その構成を律する部分が暴走すれば、結果として霊圧は乱れ、揺れ幅も大きくなる。
そしてその結果の、過剰反応。
元来、鋭敏な感覚を持つウルキオラだからこそ症状が酷いのだと思われた。

「んん・・・っ、ぅ、」

触れた身体が保つ熱の意味を理解して、グリムジョーは思わず舌打ちした。

敏感になり過ぎた五感が拾う全ての感覚をそのまま受理していては、神経が疲弊し、最終的には精神が壊れてしまう。
おそらく、それを回避する為に、ウルキオラの身体が有する防衛本能が、彼が受ける外的刺激を、何か別なものに・・・最も解り易く、そして昇華し易い感覚である「快楽」に変えてしまっているに違いなかった。

だが、しかし。
自分を守る為の本能こそが、ウルキオラの事を今、確実に苦しめている。

「ウルキオラ・・・、」
「・・・も、離せ・・っ、」

割れた仮面の名残が無い、無防備な右耳に注ぎ込まれた声。呼ばれたのは、聞き飽きた自分の名前に過ぎない筈なのに。・・・何故か、まるで行為の最中に囁かれる淫らな言葉を耳にしたときの様に、腰の奥に溜まった重いどろどろとした情欲が意識を灼いて、ウルキオラの反応を危うくさせる。

「・・・ったく、タチ性質悪ィ物、飲みやがって。」
「な、に・・・っ、んん!」

外的要因で無理矢理引き出された快感は、只このまま自然に治まるのを待っていたのでは、無駄に長引きウルキオラの神経を消耗させるだけだろう。・・・だとしたら。

グリムジョーは、ウルキオラが僅かに見せた抗いを無視すると、その顎を捉えて顔を寄せた。唇が重なった途端に互いの口腔に舌が滑り込み、表面の敏感な粘膜が擦れ合う。

「・・・っ、ふぁ、」

ぞくりと、ウルキオラの身体が撓った。
グリムジョーがキスの角度を変えると、ウルキオラもそれに応えて動く。僅かに生まれる隙間から息を継ぐ度、ちゅく、と唾液の立てる音が洩れ聞こえた。グリムジョーの唇が離れると、ウルキオラの舌先がそれを追う様に伸ばされる。


『お前が此処にいるとは思わなくて、ね。』


不意に、先刻の主の言葉をグリムジョーは思い出した。
十中八九、ウルキオラに薬を渡したのは、藍染だろう。しかし彼の事だ、決して、それを「飲め」と強制はしなかったに違い無い。
だが同時に、藍染は最初から予想もしていた筈だ。
ウルキオラならば、主から下賜された薬を必ず飲むだろうという事を。
結果、どんな状態になるかという事も。
そしてそうなったウルキオラに、グリムジョーが・・・自分が、どう対処するか、という事も。

「グ・・・っ、リムジョー、」

名を呼ばれ、思考の淵から呼び戻された。

破面の主が時折見せる嗜虐に対する、怒りにも似た感情が沸く。・・・が、今はそんな事よりも先に考えるべき事が有る。
グリムジョーが無意識に腕の中の黒髪に遣った指先が、偶然首を掠めた途端、それを過度の刺激と捉えてしまったらしいウルキオラの身体が、びく、と震えた。

「大丈夫か?」
「ん、・・・、っ、」
「・・・嘘、だな。」

身体がぶつかるだけの、他愛も無い感覚からすら快感を貪ろうと動く身体。どれだけの時間、ウルキオラがこんな状態でいたのかは分からないが、グリムジョーに事態を知られた事によって、彼が独りで耐え、限界まで保持していた自制の枷は、確実に崩れ始めてしまった様だった。

 グリムジョーは、今度は確実な意志を篭めてウルキオラの首に指を掛けた。こんな状況になってまで、一番上まで閉じられていた襟を寛げ、覗いた首元に触れる。・・・やはり、微熱を含んだ肌は湿っていた。

「ぁ、・・・った・・・っ、」
「・・・『足りない』んだろ?」
「んんん・・・っ!」

ウルキオラが、ぎこちなく喘いだ。

問いかけへの答えの様な、そうでない様な、ウルキオラの反応。
きつく抱き竦められたまま、辛うじて崩れずにいた膝が、グリムジョーのそれで割られた。

「・・・ィっ、・・・っあ、」

反射的に逃げようとする背は扉に阻まれている。
下肢が交差し、より深く触れ合う形になった身体は、下衣の布越しに、ウルキオラの欲が限界近くまで熱を溜め込んでいる事を伝えていた。

耐え切れずに零れた液が、衣を濡らして固くなった先端を撫でる。

「・・・は、・・・っ、!」

 耳を齧られ、身体が揺れた。
四肢の細部にまで走る熱に煽られて、身体も、そして思考すらも、常には向かない方向へと感覚を伸ばしていく。無意識の内に腰を揺らし、ウルキオラの身体がグリムジョーの身体に擦り付けられる。明らかに、得られる限りの快感を貪ろうとしているその動きに、グリムジョーは思わず苦笑した。
・・・普段のウルキオラならば、こんな事は絶対にしない。

ふいに腰を引き寄せられ、ウルキオラの息が詰まった。

どくっ、と、淫らなまでに大量の液が自分の身体から吐き出されたのを自覚する。・・・が、まだ、だった。

「んん・・・っ!!」

吐き出した液には、きっともう白濁が混ざり込んではいるだろう。けれど、未だ完全な吐精には及ばない。
衣服越しの、不確かな緩いだけの刺激では駄目、なのだ。

「ぅ、・・・ぁ・・・っ、」

ウルキオラの両腕が、水浅葱の背に回された。
白い装束の上から立てられた爪。・・・直接であったなら、間違い無く背の皮膚を裂いていただろう。

 ぐちゅ、と。

二人の身体の間で、濡れた布の硬さをもって不安定に扱かれる肉塊。互いの視界からは完全に隠れているにも関わらず、その所為で逆に水音すら聞こえそうな淫らな想像を掻き立てられてしまう。

「・・・っ、もう、」

苦しげに吐き出された、ウルキオラの吐息。
グリムジョーは、その身体を抱き上げた。









 ベッドに降ろされて、ウルキオラが小さく息を漏らした。

 「っ、ぁ・・・、」

柔らかな敷布に沈んだ身体が身じろぐ。

仰向けにされ下衣を剥がれても、浮かんだ涙の膜でゆらぐ碧眼は抵抗の色を見せなかった。むしろ、零れた先走りで濡れた布に擦られる刺激が無くなった事を厭う様に、もどかしげに下肢が震えている。中空を見つめるウルキオラの顔の横に手を突くと、グリムジョーはウルキオラを真上から見下ろした。
「! ・・・っは、ぅ、」
掌で、熟れ切った肉塊を掴む。
溢れていた液は、既に白い大腿にまで流れていた。
「やっ!! あ、ぁ!」
握り込み、離すだけの単純な動きにすら、喘ぎが零れる。
未だ前を肌蹴させただけにしていたウルキオラの上着の長い裾までが、流れ落ちた粘液にまみれて汚れ乱れていく。
それに気付いたグリムジョーが、手を止め、上着を脱がせようとした時に、ウルキオラの指がグリムジョーの腕に触れた。
「・・・っ待、」
掠れた静止の言葉に、グリムジョーが眉を寄せる。

「? 脱いだ方が楽だろ。」
「ぃ、・・・い、から・・・っ、」
「・・・ウル、」
「いい、から・・・っ、も、っと、」

そこまで言って、耐え切れなくなったかの様に目を閉じると、ウルキオラはグリムジョーの首に腕を回した。

強く、引き寄せられる。
首筋に当たる吐息の熱と、途切れる呼吸。

触ってくれ、と。
強請る声を耳にして、グリムジョーの内を、ぞくりと欲が走った。

「! んんっ!」
ウルキオラの唇に、噛付く様に口付ける。
再びウルキオラ自身を捕らえると、先刻よりも強い力で握り込んだ掌で、扱く様にして刺激した。
纏わり付いていた粘液と、新たに吐き出されたそれが、グリムジョーの手を濡らしていく。
「・・・っ、ぁ、うっ」
「・・・っ、黙ってろ、」
ウルキオラの薄い唇に、傷を付けない程度に歯を立てて喘ぎを遮ると、グリムジョーはウルキオラの脚を開かせ、無防備になった部分に自分の脚を、ぐ、と押し付けた。
「ィ・・・っ! ぁ、っ!!」
立ち上がり濡れそぼった部分を、体重を掛けて圧迫し、摩擦する。
湧き上がる欲に仰のいたウルキオラの喉元。
酷く欲情しているにも関らず、常と変わらず青白いその色に目を奪われた瞬間に、グリムジョーの身体の下で、ウルキオラが白濁を吐き出した。
刹那、硬直した身体が細かく震え、グリムジョーの首に回されていた両腕から、力が抜けていく。
グリムジョーが身体を起こすと、ウルキオラの腕は、水浅葱の肩を滑り落ちて、シーツの上に投げ出された。
浅い呼吸を繰り返し、上下する薄い身体を見遣って、グリムジョーは指に付いた白濁の飛沫を舐めた。

どろりと濃く、苦い。

薬独特の、喉の奥でひりつく苦い甘味を感じた様な気がして、グリムジョーはその指で、ウルキオラの唇に触れた。
赤い舌先が、促されるままに己の吐き出した欲望を舐める。

「・・・甘いだろ?」
「そ・・・んな訳、な、っ、」

緩く首を振り、否定する身体を黙らせる為に、大腿から腰骨までを撫で上げた。
「・・・っ!!」
その刺激に、達したばかりのウルキオラ自身が、びく、と反応する。
先端を掠める程度に弄ってやれば、滲み始めた新たな液に、白濁がとろりと混ざり落ちた。
「ぅ、あ・・・っ!」
細かな泡の様に生まれた快楽が、ほんの僅か煽られただけで、息苦しい程に膨れ上がる。
「出しちまえ、全部。」
「ァ、・・・っ、くっ!」
囁くと、グリムジョーはウルキオラ自身を咥え込んだ。
「・・・んんっ!!」
生温い粘膜に包まれて、一気に張り詰めた肉塊の表面に、余さず唾液を絡めていく。唇と舌で緩く噛むと、口腔の中で肉塊が固さを増していく様が直に伝わってきた。
「・・・離っ、グリ・・・っ!」
ウルキオラの下肢に伏せたグリムジョーの顔が、幾度か前後する。
シーツを掻いていたウルキオラの指が、水浅葱の髪を掴んで引いたが、邪魔だとばかりに手首を掴まれ、動きを封じられてしまう。
「や、・・・っ、それ、っ、」
先端だけを、舌先で弄られた。
滲み出す液を吸い、舐め、窪みを擽られる。
「っは、っ、・・・ぁっ!」
腰が跳ねた瞬間、ぢゅ、と音を立ててきつく吸われた。
「う、あぁ・・・っ!」
声を上げたのが先か、自身が弾けたのが先かも解らない内に、どくどくと白濁が流れ出る。
「・・・っん、」
最後に窪みを清める様に舌が舐め取り、グリムジョーが伏せていた顔を上げた。
「ウルキオラ。」
「ぁ、う・・・っく、」
立て続けの射精に蕩けきった碧眼が、水浅葱を見上げる。
脱力した腕は、身体を起こす事すら出来ない。・・・なのに、ウルキオラの体内に残る薬物は、開放の余韻に弛緩した本人の思考すら無視して、その身体を内から煽り続けているらしかった。下腹部が一度緊張した様に震えると、自身の先から再び粘液が零れ始める。
「・・・続けるぜ?」
「・・・っ、駄、目だ、も、ぅ、」
拒絶する言葉に反する、下肢に溜め込まれた熱。
グリムジョーは、ウルキオラの両脚に手を掛けた。膝を立てさせて押し広げると、吐き出された白濁と汗が流れ、皮膚の表面でぬるりとした質感をもって光る。
「・・・っ、お前、」
眼前に晒された光景に、グリムジョーの目が眇められる。・・・自らの欲を満たす為に、今は抱いている訳ではない。けれど、ウルキオラの見せる淫らな様は、否応無しに水浅葱を駆り立てた。
ウルキオラの左足首を掴み開かせると、割った両脚の間に身体を入れた。自らの下衣を寛げ、自身の先端を、ウルキオラの後腔に当てがう。
先刻から、ウルキオラが散々に吐き出していた粘液は秘所まで流れ、その周囲を濡らしていた。前へ与えられ続けた刺激に熟れた入り口が、呼吸に合わせ、小さく口を開いては閉じを繰り返し、くちゅ、と音を立てている。
「っ、・・・!」
慣らす為に僅かに突いた先端に、過敏に反応した肉が噛付く。
思わず息を零したグリムジョーの腰の奥で、どくりと快感が震えた。
「は、っ、ぅ、あっ!」
「逃、げんな・・・っ、」
一息に貫いてやりたい衝動を押さえ込み、きつく絡みつく襞を押し広げながら、ゆっくりと、深く犯していく。
水浅葱の身体に擦られた内壁が、蹂躙する肉塊を拒みつつも受け入れようと収縮する感覚は、グリムジョーだけでは無く、ウルキオラの意識をも灼いた。
「・・・っや、ぅあっ、んん!」
腰を引き寄せられ、二つに折れた身体が軋んだ。
「ウ、ル・・・っ、」
「ぅ、・・・んんっ、」
腰を引き、突き入れ、弱い箇所を先端で抉る。
「そ・・・っ、こ、っ!」
犯された箇所から上がる快感に、無意識の内に強請る声が上がる。与えられる刺激に弛緩して息をつけば、自分の胎内深くに受け入れたグリムジョーの存在を深く感じる結果になり、下肢が震えた。
「あ、ぅ、・・っ、はっ、」
二人の身体に挟まれ、吐き出す液もそのままに扱かれていたウルキオラ自身が、水音を立てる。見下ろすグリムジョーの視界には、自分を受け入れ、限界まで広がった秘所まで全てが映っている。
快楽に蕩け、乱れたウルキオラの表情。・・・しかし、それを見遣ったグリムジョーは、僅かに顔を顰めた。

「ウルキオラ。」
「・・・グ、リ、ぁっ、う」

手を伸ばして、ウルキオラの右頬に触れる。
今まで愛撫に使われていた指には緩く糸をひく液が付いたままで、それはウルキオラの頬を汚した。

・・・薬効に煽られ、とろりと霞んだ碧眼。それも確かにウルキオラの物なのだから、嫌だ、と言えば嘘になる。だが、しかし。

「グ、リムジョー・・・っ、」

掠れた声で呼ばれ、グリムジョーはゆっくりと唇を重ねた。
「・・・ん、ぅんんっ、」
身体を繋げたままのその行為に、より深くまでグリムジョー自身がウルキオラの内へと喰い込んで行く。
ウルキオラの先端から耐え切れず溢れた大量の先走りが、生温く互いの腹部を濡らした。びくびくと、自分を包み込んでいるウルキオラの内壁が引き攣る様に震えるのを感じ、グリムジョーは深く穿った腰を揺すり上げた。途端、跳ねる身体に、離した唇で言葉を掛ける。

「・・・早く元に戻れ。」
「・・・っ、あ、ぅ!!」

水浅葱の声にウルキオラが僅かに反応を返した瞬間、グリムジョーは一度腰を引くと、最奥まで身体を進めた。
「! ・・・っあ!」
ウルキオラを、内側から攻め立てる。
跳ねる腰を掴むと、わざと角度を変えて、先端を敏感な箇所に当てがい刺激した。
「んっ・・・、ぁんんっ!」
同じ場所を、何度も固い先端で突かれ、擦られる。
充血しきったウルキオラの肉塊から流れた液が、二人が繋がっている境目まで溢れ、グリムジョーの動きに合わせて淫らな音を立てた。

「・・・っ、イ、ぁんんっ!」

強く突かれた瞬間、痛い程の快感が走り、息が詰まる。
掲げられていた脚がびくんと跳ね、ウルキオラの内壁が噛付く強さでグリムジョーに絡みつき、欲を溜め込んでいた肉塊が、白濁を吐き出した。

「・・・ぅあっ!!」

身体の中で水浅葱が弾け、溢れた白濁が柔襞に叩き付けられる。
それを、酷く熱い、と思った刹那、ウルキオラは意識を手放していた。







 眼下に晒された喉が痙攣し、くたりと力が抜ける様を見遣ると、グリムジョーはウルキオラの胎内深くを犯していた自身を、引き抜いた。
「・・・っ、」
意識の無いウルキオラの身体はしかし、グリムジョーの動きに敏感に反応した。尚も奥へ誘おうとする襞から、ずる、と肉塊を引き摺りだす。その感覚に、グリムジョーは息を詰めた。
繋がっていた部分から、白濁が零れる。グリムジョーが注ぎ込んだものに、ウルキオラが吐き出したものが混ざり込んでいた。
白濁と汗とで、酷く汚れたウルキオラの上着。
長い裾にはどろりとした液体が染み込み、両脚に絡み付いてしまっていた。
・・・ウルキオラの身体を起こし、衣服を脱がせると、グリムジョーはそれをベッドサイドに放った。湿った重い音を立てて落ちる装束。目を覚ました時、ウルキオラが正気に戻っていたら文句を言われるかもしれないが、どうせもう、着る事は出来ないだろう。

乱れてしまった黒髪を梳いて、白い顎先まで跳ねた欲の飛沫を舌で舐め取る。そのまま力を抜いて覆い被さり、抱き締めると、解放の余韻を残した肌が、吸い付くようにグリムジョーの身体に馴染んだ。・・・相変わらず、常よりは高い体温ではあるものの、先刻抱いていた時の様な、凶暴な熱さとは違う。確実に、ウルキオラの内を灼いていた薬効は、薄れている様だった。

「ウルキオラ・・・、」

名を呼ぶが、返事は無い。
代わりに、ん・・・、と、小さな鳴き声に似た吐息が零れて、水浅葱の肩口にウルキオラの頬が擦り付けられた。
重なった肌から、鼓動が伝わる。
生きる肉体を失った虚である自分達にとって、心臓とその動きにどんな価値が残っているのかは分からないが、ウルキオラの心音は、心地が良い。

間近に見るウルキオラの顔。
深すぎた快感の名残か、僅かに眉を顰めたまま目を閉じている薄い瞼が作る陰影が、滑らかな冷たさを取り戻しつつある肌の上で映えている。



・・・早く、ウルキオラが目を覚ませばいい。



いつもの、彼の。
透明で冷たい碧色の目が自分を映す様を、早く見たかった。


消耗しきってしまった筈の彼に休息を取らせたい反面、グリムジョーは矛盾した事を、ふと、思った。





>>fin.


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