☆展示物の無断転載・コピーは一切禁止です☆
☆文字サイズは中か小推奨です。最小だと読めないです多分☆

 

T.T.D.A .
Trick or Treat or Dead or Alive !?
written by Miyabi KAWAMURA
2006/1108(再UP)
(2006年ハロウィン記念、フリー配布SS)


 「服従か死か、どちらかを選べ。」


 自室の扉を開けると、そこには煌く白刃があった。

 何事だ、と思い、グリムジョーは眉を顰める。・・・が、現状を把握する為の一瞬の空白時間すら、目の前の、物騒な台詞と刃を携えた碧眼の破面は、自分に与えるつもりは無いらしかった。

ぐ、と、喉元に突きつけられた刃の切っ先。

「・・・おい、ウル・・・、」
「黙れ。・・・これは交渉じゃない。命令・・・、」
「待て待て待て待て・・・っ!!」

いつかどこかで聞いた様なウルキオラの言葉をそれこそ命懸けで遮ると(当たり前だが、ウルキオラの斬魄刀は抜刀されたままだ)、グリムジョーは反射的に腰に刷いた自らの斬魄刀の有無を確認した。

・・・動機やら理由やらは全く不明だが、どうやらウルキオラは本気、らしい。
返答如何によっては、殺されかねない。


「・・・もう一度だけ問う。服従か死か・・・、」

(聞きてぇのは俺の方だっつーの。)

何だ、この状況は。確かな事は、たった一つだけだ。


・・・絶体絶命。それだけは間違い無い。


 ウルキオラから視線を外さぬまま、グリムジョーが心の中でそう唸った時、廊下に大声が響き渡った。


「ウルキオラちょっと待った!!!!!」


「・・・ロイ。」
廊下の向こうから、全速力で駆けてきたロイの姿を認めると、たった今まで殺気をその霊圧にこれでもか! という程籠めていたウルキオラが、あっさりと刃を退いた。

「何をそんなに慌てている?」
「っ、あわ、てるも何も・・・っ、」

けほ、と息切れして咳き込むと、ロイは未だ状況を把握出来ずにいるグリムジョーを見上げた。

「ゴメン、ウルは多分、悪気がある訳じゃなくて・・・、」
「・・・殺意は十分あったみてえだけどな。」
「・・・そうみたいだね。」

ウルキオラの手にある抜き身の刀を見遣って、ロイの顔にも苦笑が浮かぶ。当のウルキオラだけは、いつも通りの冷静顔で、全くもって意味が解らない。

「お前ら、どうでもいいから状況を説明しろ。」

苦々しげにそう言ったグリムジョーに対して、ロイが頷いた。

「最初から説明するから。・・・ほら、昨日までイールが任務で現世に行ってただろ。で、そこで『はろうぃん』とかいう祭り? ってか、よく解んないけどそういうの見たんだって。で、俺とウルも暇だったから、ちょっと遊んでみようかって事になってさ。」
「・・・『はろうぃん』?」
「そうそう。」

グリムジョーの疑問形の呟きに、ロイが言葉を続けた。

「人間の内何人かがバケモノのカッコして、ひとんち回って、『お菓子くれなきゃ悪戯するぞ?vvv』って聞いて回るんだって。」
「・・・『服従か死か、どちらかを選べ』じゃなかったか?」
「全然違うから!!!」

それまで黙って話を聞いていたウルキオラが、首を傾げ口を開くと、すかさずロイの突っ込みが飛んだ。

「そうか、」

聞き間違えた、と、自分の中で納得したらしいウルキオラが、こくりと頷いた。そしてそのまま、グリムジョーに身体を向ける。

「悪かったな、グリムジョー。」
「・・・いや・・・。」

・・・自分を見上げる大きな碧眼に素直に謝られ、水浅葱がそれ以上、何を言えるだろうか。

「次は気をつける。」
「・・・あー、サンキュな。」

有り得ないレベルの聞き間違いで殺されかけたとはいえ、ここはもう、許すしか、ない。
「次」があるのかだとか、その辺りも、敢えて追求はすまい。


「一件落着?」


取り敢えずの事態の収拾を見届けて、ロイが笑ってそう言った。

「じゃあウル、次はセリフ間違えないようにね。グリムジョーからちゃんとお菓子貰いなよ。」
「分かった。」

ウルキオラに「正しいセリフ」を伝授して、こくりと頷いたウルキオラの様子を満足げに見遣ると、ロイは走ってきた廊下を戻りかけた。・・・と、その時。
ロイの背中に、グリムジョーが声を掛けた。

「おい。ロイ。」
「んー?」
「お前、・・・さっきのセリフ、イールの野郎に言ったのか?」

さっきのセリフ。要するに、


『お菓子くれなきゃ悪戯するぞ?vvv』


・・・で、ある。


「? 言ったよ。当たり前じゃん。でもってホラ、」

破面装束のどこに隠していたのか、大量の菓子を、ロイは取り出した。


「イール、『上手く言えた褒美にこれをくれてやる。』って言って、沢山お菓子くれたよ。」


そう言って。
笑うロイに向かって、やはりグリムジョーは何も言えなかった。否、言わなかった。

(・・・あいつ、)

グリムジョーの脳裏には、只でさえ美貌際立つ破面NO.15が、我が意を得たり、と愉しげに微笑う姿が浮かんでいた。

(絶対確信犯だろ、あの野郎。)


・・・そう確信したが、水浅葱は敢えて何も、言わなかった。


 

>>fin.


 出番が無いくせに、イールフォルトの一人勝ち(笑)。 Back