デシベル(dB)の話

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デシベルという言葉を耳にすることは少なくないと思います。デシベル(dB・・・デービー、或いはデシと読まれることも多い)は何倍あるいは何分の一というような意味を持つ対数の単位記号です。しかし、電子機器等の規格にはdBの後にもう一つか二つの文字のついた単位がよく使われますが、これがなんのことか分からない方は少なくないのではないでしょうか。ここではこのdBがどういう意味を持つものかを理解して下さい。
写真は対数を利用したアナログ計算器(計算尺)です。計算尺はかつて「ヘンミ計算尺株式会社」で殆どが造られていました。この会社のシェアは国内90%、世界でも80%だったそうですから驚きです。いま、計算尺は造られていませんがこの会社は今もあります。

技術者の必需品だった計算尺
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 dBは対数、つまり基準値と比較して何倍、或いは何分の1であるかというような表現のための単位記号です。だからこれを使って大きさや量を表すには基準になる大きさや量が必要です。
例えば電圧をdBで表すために1ボルトを基準にする場合の単位記号はdBVです。基準とは0dBのことであり、この場合0dB=1ボルトです。
そして電圧の場合、2倍は約6dBです(電力、つまりワットを表す場合は6dB=約4倍・・・電圧の二乗です・・・電圧が2倍になれば電力は4倍になります)。だから2ボルトは約6dBVです。また、10dBVは約3ボルトです(10dBは約3倍)。マイナスが付いて−10dBという場合は3倍ではなく約1/3です。

 dBを単位として使用する場合、上記のようにdBの後に何らかの記号が付いているものですが、単にdBとだけ表示して絶対的な数値を表すこともあります。dBだけで絶対数値を表す場合、本来は0dB=○○とどこかに記載するのが原則です。しかし記載されてないのを時々見かけます。

 次は電子機器でよく使われる単位の例です。

dBV:
 0dB=1Vとした電圧表示単位。

dBm:
 600Ωという条件で0dB=1mWとした電力表示単位及び電圧表示単位(この場合電圧では0dB=0.775Vになりますがこれは0dB=1mWと同じことです)。

dBs:
 0dB=0.775Vとした電圧表示単位(dBmの0dB=0.775Vという関係だけを使ったもので、某電気メーカーの独自単位でしたが、このメーカーの技術者が転職などで別のメーカーに移り使用したため一般的な単位となりました)。

dBμV/m:
 0dB=1μV/mとした電界強度の単位(もう少しくだいて言うと、1mの高さの標準アンテナが1マイクロボルトの電圧を検出する電波の強さを0dBとした電界強度単位です)。

dBHL:
 0dB=0HL(ゼロ hearinng level)とした聴力レベル単位(ゼロHL:正常聴力の成人がもっとも良い条件のもとで聞こえる最小音量の平均値、JIS T1201に規定されている)。オージオメーターによる測定に用いられる。聴力レベルの0dBは音圧レベルの4dBに相当。

dBSPL:
 0dB=振幅圧力の実効値が20μP(マイクロパスカル・・・物理的に測定する場合に用いられる・・・20μPは人間に聞こえる最小の音圧とされている)の音とした音圧レベル単位。


 難聴に関連が深い部分をもう少し詳しく説明してみます。

 聴力の測定などに用いられるのは「dBHL」という単位ですが、「dBHL」の中の「dB」は何倍、或いは何分の一のような意味の対数です。また「HL」は「健康な人に聞こえる最も小さい音であるヒヤリングレベル」を意味します。
つまり「●dBHL」という大きさの音は、「健康な人に聞こえる最も小さい音」の「●dB」倍であるという意味です(dBは本来、倍という意味を含んでいますから、それに倍をつける説明は間違いですが良い表現が見つかりません)。例えば「50dBHL」は「健康な人に聞こえる最も小さい音」の約300倍の音量のことです(50dBは約300倍)。

 デシベルは音の大きさを表すために適しているとされていますが、その数値は耳の感覚に一致していなくてあまりピンときません。
耳の感覚は音の大きさが3倍になると、2倍になったと感じるそうです。3倍は約10dBですから10dB異なると倍の差に感じることになります。従ってデシベルと耳の感覚は次の様に対比出来ます。

 10dB大きいと  2倍
 20dB大きいと  4倍
 30dB大きいと  8倍
 40dB大きいと 16倍
 50dB大きいと 32倍
 60dB大きいと 64倍

 10dB毎に2倍ですから覚えなくても分かると思います。これを見ると最大60dB増幅出来る難聴用電話機XL50は、音量を最大にすると増幅しない場合の64倍の大きさで聞こえることが分かります。60dBは1,000倍ですから、音の大きさを1,000倍にしても、耳には64倍にしか聞こえないという訳です。

 反対に60dB増幅する補聴器はその場の音を60倍近く増幅していることになりますが、それは約1,000倍であり大変ハードな増幅をしていることになります(ホワイトイヤーがどれ程の増幅をしているか想像してみて下さい)。

 ブログで、健康な人の耳は「聞くことの出来る最小レベル」からその100万倍までを楽に聞くことが出来ると書きました。しかし喧しく感じ始める音が100万倍であるとまでは想像出来にくいのは耳の感覚が上記のような特性をしているからです。
上記を当てはめてみると、喧しく感じ始める音が120dBHLだとするとそれは、聞くことの出来る最も小さな音である0dBHLの約4,000倍に聞こえる音量ということになります。これならそうかもしれないという気がするのではないでしょうか。

 聴力のための音量には「dBHL」という単位が用いられますが、音響機器などでは「dBSPL」という、音圧を表す単位が用いられます。これは0dB=振幅圧力の実効値が20μP(マイクロパスカル)とした単位です。
そして、20μPの音は人の耳に聞こえる最小の音圧とされています。だから「dBHL」と「dBSPL」は同じであってもいいような気がしますが、実際には4dBだけ異なります。つまり0dBHL=4dBSPLです。

 デシベルはこの他にも様々な分野で使用されますが「dB」とだけ表示されている場合は単に倍率の意味しか持ちません。しかし「dBHL」のようにdBに別の文字が加えられたものは基準値があってそれの何倍、或いは何分の一であるというように絶対値を表す単位です(加えられた文字が異なると全く違った単位です)。
ところが、聴力を表す絶対値音量なのにdBのみの表示をいたるところで見かけます。これは聴力のことだと分かりきっているのでHLを省略しているのだと思いますが、書いた人がデシベルの理解をしていない場合も少なくないようです(0dB=○○とどこかに表示してあれば間違いではありません)。

【対数表示の特徴】

 電気や音のレベル表示等は通常の数値で表現可能にも関わらず何故対数が使われるのでしょうか。
それは、耳が対数的に音量を感じていることと、電子回路上のレベル計算では対数の方が便利だからです。 例えばレベル10の音がスピーカーから出されていたとします。そして、アンプのボリュームを絞ってスピーカーの音レベルを5にすると、音は半分になります。反対にボリュームを上げて音レベルを20にすると、音は2倍になる訳です。
この時10と5のレベル差は5ですが、別の言い方(つまり対数的な言い方)をすれば1/2です。また10と20の差は10ですが、2倍とも言えます。つまり10は5の2倍、20は10の2倍です。だから、10と5の差と10と20の差は同じだとも言えなくはないのです。対数ではこの差はどちらも6dBであり数値として同じです。また、人は音の大きさをこのような感覚で捉えています。

 もう一つ、アンプ(増幅器)の増幅度計算では掛け算を足し算の形で楽に行える利点が有ります。
今、信号を56倍(約35dB)に電圧増幅するアンプと、9倍(約19dB)に電圧増幅するアンプが有ったとします。 そして56倍のアンプの出力を9倍のアンプの入力に加えると、9倍アンプ出力には、56倍アンプ入力の504倍の出力が現れます。つまり(56×9)倍です。しかし、デシベル計算なら足し算で35+19=54(dB)と暗算で楽に出来ます。
割り算を引き算として計算出来るのは勿論です。


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