水ものオフ会毎年恒例の俺SFメカコンテスト、2008年のテーマは… 「俺テルスター」「俺ホーネット」だ! |
コグレモケイは我が国のプラモデル発展期である1960年代に大活躍をし、当時群を抜いて洗練されたキットで一世を風靡したメーカーです。コントラスト彗星や透明零戦、1/12の大型モデル「ロータス33クライマックス」などを覚えている方もいらっしゃるかもしれません。 さてそのコグレが最盛期でもあった昭和40年頃、日本ではスロットカーの大ブームで、ゲームセンターから模型店、あるいはホテルの一角まで使ったレーシングコースが登場しました。それはまるで日本中が一大遊技場と化した感さえあり、当時のプラモデル業界でスロットカーのキットあるいは自社設計のパーツに手を染めなかったメーカーを上げるほうが難かしいほどです。 コグレも例に漏れず各種のレーシングカーをリリースしていましたが、結局この夢のような業界大繁盛は、また始まった時と同じように「夢のように」急速に萎んでいったのです。 1966年といえばまだスロットカーブームが盛況だった時期ですが、一方で遊技場に出入りする子供達の非行化の懸念なども言われ始め、当時の雑誌や業界紙でも既に「このまま浮かれていてはイカンのではないか?」といったようなスロットカーバブルに対する直感的危惧が語られ始めた時期でもありました。 そんな中で各社とも、静かに「次の戦略」を模索し始めます。それは各社夫々の眼力と分析と思惑で進められましたが、スケールモデルのような緻密なリサーチも、キャラクタープラモのような版権取得も必要としないJOSF(日本メーカーオリジナルSF)プラモデルは、その中でも最もポピュラーな”次の一手”として各社が一斉に方向転換をしたアイテムだったのです。 | ||||||||||||||||||||||||||||||
コグレのSFプラモといえば原作モノである海底科学作戦シービュー号(大、小)や、JOSFものとしての不朽の名作「サイボーグ」などが有名ですね。特にひざを曲げて歩く!という「サイボーグ」のギミックは、マニアの間でメーカー名とセットで「コグレのサイボーグ」として知られるようになります。 が、コグレの空想科学キットはそれだけではありません。ここでちょっと右の表を見て下さい。これは手元のキットのシリーズ名とキット番号、それに幾つかの資料を基にまとめたものです。(SFシリーズで一つか二つ抜けているキットがあるような気もしますが。(^_^;)>ぽりぽり) 同社は業界紙や雑誌ではあまりシリーズ名を明記していませんが、ランデブーシリーズとレインボウシリーズのキットは1966年の業界紙に単体名で載っており、SFシリーズの多くのキットは1967年の雑誌広告に載っていますので夫々その時期のラインナップだと考えられます。 また、表はキット番号による便宜的なもので、コグレのキットは他のメーカー同様キット名を変えて再版され、またその時にキットの発売時期とは無関係にシリーズaAキットbェ付与されている為、オリジナルキットが本当は何時発売されたかと言う特定が非常に難しいのです。 例えばSFシリーズの後半に位置づけられる「ピラニヤS800」は既に1966年の早い時期に「TR−3作戦海底パトロール」として発売されていますし、一方同じ1966年に発売されているランデブーシリーズとレインボウシリーズでは隔世の感を感じるほどパッケージデザインの「時代感」が違っており、前者はもっと早い時期に既発売されていたキットをこの時期に再版したような印象があります。 ともあれ、少なくとも1967年までにはコグレのSFキットのラインナップはこうして完成しました。 日本のJOSFキットブームは1966年ごろから勢いをつけ、1967、8年頃に大ブレイクして69年にピークに達するというのが概ねの流れですが、コグレは将にこのJOSFビッグバンの立役者の一人として活動し、そして一気に完結したメーカーだったのです。 |
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秘密潜水艇
両艇を語る上でまず御紹介しなければならないのが左の画像です。これは少年サンデー66年10月16日号の表紙ですが、ここに興味深いメカが描かれています。 艇体下部に二つの補助フロート様のものを装備したこの「秘密潜水艇」は水中機動翼のようなパイロンにミサイルを装備し、短いダクテッドファンのような強力な推進器で水中を突進しています。 艇内のパイロットはうつ伏せの姿勢で操縦していますが、これは航空機のような高機動時の対G姿勢というよりは正面投影面積を極力押さえる為のようで、重武装と相まって強烈な敵防御を冒して肉薄強襲する為の兵器のように見えます。 バックでは母艦と思しき潜水艦から後続の艇も発進しており、恐るべき未来戦の一コマを活写しています。これはある意味で当時の少年雑誌のノリの、一つの典型ともいえるでしょう。 そして…。 |
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真打登場! 例のイラストが少年サンデーに掲載された翌年、コグレから一つのビッグキットが発売されます。 それまでコグレが発売したSFキットは、殆どがゴム動力かゼンマイ動力、あるいはせいぜいマブチのS−1モーターが使えたというものばかりです。最初からモーターライズで設計されたキットには唯一巨大な空飛ぶ円盤「スペース9」がありましたが、それは如何にもオモチャ然としたものでした。 そこに登場したこの新型原子力潜水艇は、350円という価格もさることながら、パッケージの横幅が355ミリもある威風堂々とした空想科学模型だったのです。ここに「サイボーグ」以来のSFメカの真打「ホーネット」が誕生したのです。 |
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これがホーネットだ そのキットの完成写真がこれです。 少年キング1966年7月9日号コグレの雑誌広告 先のパッケージイラストは艇体上部から俯瞰した構図であった為分かりづらかったと思いますが、(双フロートこそ単二電池を内蔵する為に太くなったものの)これは正しく前年にサンデーの表紙を飾ったメカそのものではありませんか! 現時点では件のサンデーのイラストの出自も、コグレのキットとの関係もはっきりとしませんが、当時JOSFメカをリリースしていた各社は、米国の科学雑誌や戦前戦中の少年向け雑誌などを渉猟して目新しい「超メカ」「超兵器」のデザインを求めていました。 下町の零細模型メーカーの社長が晩酌しながら設計した…ぐらいに思われていた当時のJOSFメカのデザインでしたが、実は何らかのコンセプトを元に描かれたモトネタをベースに、自社アレンジを加えたデザインは少なくなかったのです。 少年倶楽部の地中戦車と「キングモグラス」の関係、巨大なジャイロを内蔵して未知の惑星を倒れずに進むというポピュラーサイエンス誌のコンセプトを具現化した「デスカバラ」。未来海底のコンセプトジオラマの画像に写っていた海中ロケット艇を模した「ロケット艇グレートマリン」。 JOSFはオリジナルとはいいながら、決して荒唐無稽なだけの設計思想ではなかったのです。 |
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ホーネットとテルスター1号 右の画像を見て下さい。上が「ホーネット」、下が「テルスター1号」の箱の中身です。 一部仮組の為に袋から出したり、方や袋詰めのままだったりと、少々分かり難いかもしれませんが、包装は大(共通部品2ランナー)、小(メカ別部品1ランナー)、小袋(金属部品など)の3個で、下の画像で箱の底に張り付いている一枚物ランナー部品が両者を特徴付ける差別化部品です。 …といいましても「だからどうなんだ?」と思われるでしょうから簡単に言うと、本体とフロートが”Λ”の形のステーで結ばれているのが「ホーネット」で、”⊥”型のステーで結ばれているのが「テルスター」と言う事です。 その他「ホーネット」には可動補助翼が付いていますが、「テルスター」ではそれがオミットされた代わりに翼端整流板がついていたり、武装が違ったりというマイナーチェンジが施されています。 また、原作のイラストではパイロットがうつ伏せで搭乗していましたが、どうもキットの設計者はそういったイレギュラーな操縦姿勢に対する知識が無かった為か、イラストの雰囲気はそのままに「座った」姿勢で解釈をしてしまった為、「ホーネット」も「テルスター」も操縦席いっぱいにフィギュアの上半身だけが座っているような造型になってしまったのが興味深い点です。 |
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「俺テルスター」、「俺ホーネット」コンテストの参加要領 ●コグレの「テルスター1号」、「ホーネット」のオマージュ作品によるコンテストです。 勿論本家の「テルスター1号」、「ホーネット」そのものを作って持ち寄る御大尽参加も大歓迎です。 ●動力、サイズに特に制約は設けませんが、安全にデモ走行できる作品に限ります。 ●オリジナルキットではフロート様のものはついていますが、ほぼ水没して走行します。 潜水艇と言うイメージを尊重し、本体は概ね半分以上は水没するものとします。 (本体が水面より上に浮くものはそのうち「俺ハリケーン」として企画しますので今回は我慢して下さい。(笑)) 「何だか前振りが長かった割には、単純なレギュレーションだなぁ。」と思った方へ、以下にオマケ画像をつけました。実は「後振り」も長いんです。 |
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Tachikawa秘宝館コレクション 今回の企画にあたり、実際に「テルスター1号」の完成品の姿形はどうなんだ?という皆様の疑問にお答えするべく、以前の水ものオフ会に秘宝館館長Tachikawaさん自ら制作した完成品の画像を送って頂きました。皆さん大いに参考にしながら、また大いにモチベーションを上げようではありませんか! それでは館長の素晴らしく繊細に仕上げられた「テルスター1号」を御覧下さい。 |
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