まずは今回のLSカップのきっかけにもなったカイリュウ。このキットはシンプルな作りながら1964年
から1970年代まで、パッケージ替えをして同社の中堅キットとして夏の模型シーンの常連として活躍
しました。
船体の中央部に位置する水中翼は、実艇の発想そのままに船体に高い機動を与え、驚くほど小さな
舵角(翼前縁の実測で数ミリ程度か?)で、十分に自動浮沈を実現していました。
筆者もそうですが、このキットで「海竜」という名の特殊潜航艇なるものが存在した事を知った模型少年
も多かった事でしょう。初版は1964年の大変古いキットです。
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カイリュウの翌年に発売になったPT−109。古いエルエスの船と訪ねれば、先のカイリュウとともに、
真っ先にこのPT−109を思い出す人も多いでしょう。
PT−109のキットと言えばタミヤのセミスケールボートである魚雷艇シリーズのPT−109が有名です
が、こちらはタミヤの商品戦略のキモである、分かり易い愛称を付けた商品名「ケネディ」で御馴染み。
ケネディとはPT−109に乗ってソロモン諸島で作戦中に、日本軍の駆逐艦雨霧と衝突して船体を真っ
二つにされながら生還した、後のアメリカ大統領ジョン・F・ケネディその人から取った「日本のプラモデ
ルだけに冠されたニックネーム」ですが、同時期に発売されたこのキットの初版は、純粋に艦番号だけを
記したものでした。
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タミヤのキットを参考にして雨後の筍のように魚雷艇「ケネディ」の玉石混交のキットが乱立した我が国
ですが、そのブームには勝てず、LSのキットもその後は「PT−109ケネディ」としてリリースされました。
パッケージイラストはいくつかありましが、最終版まで使われたのがこの秀逸なボックスアートの作品。
船外モーター装着可能というバージョンは同社の最終版より数年前のものですが、初版が1965年とい
えば、間もなく生誕50周年を迎えようという古い商品ですから、半世紀も第一線で活躍した事になりま
すね。
このキットの息の長い命脈は、それ自体の当時としては群を抜いた精密さに拠るところが大きく、他社の
タケノコキットが数年で商品戦列を離れたのに比べて、如何に桁違いの精密さレベルでLSが模型化して
いたかが伺われます。
同社廃業後、このキットは他のLS商品の金型とともにアリイに受け継がれ、船水モーターという「なんだ
かなあ」な名前のアリイオリジナル水中モーターとともに販売されましたが、その後中国の数社から全く同
じパッケージイラストでリリースされています。
海面の質感は、高速パワーボートの迫力を余すところなく捕らえたパッケージイラストの白眉といえます。
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船のエルエスは、1970年代以降、スピードボートのシリーズ化に力を入れます。
これはその中でも中型キットの花形だった「デルタ」です。その後エルエスはイッコーなどのメーカーと
歩調を合わせて、より大型のパワーボートシリーズも手掛けます。
今ではこういったモーターボートプラモデルの市場というのは少々馴染みの薄いジャンルですが、当時
は夏と言えば”ネコも杓子も”あらゆる水ものキットをむさぼるように楽しんだ時代でした。
このキットは1975年発売で、日本プラモデル工業協同組合のメーカー賞を獲得した、栄えある商品で
もあります。
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出た!出ました。ジュニアセブン!!!このキットもパッケージ替えと成型色替えを繰り返しながら、長く
市場に君臨した懐かしいキットです。
筆者は1966年の初版パッケージ以来、21世紀に入って会津若松で最終版を購入するまで、5個ほどこ
のキットを買っているジュニアセブンフェチであります。
安価(初版100円)でいながら、緩やかにカーブしたスリムな船体はコケティッシュですらあり、どれ程見
ていても見飽きない、オンリーワンにして秀逸なボディを持つスーパースピードボートです。
エルエスではボートキットの試作品が出来ると、社長と設計陣が会社近くの川に繰り出して、必ず走行テ
ストをしたというほどボートキットに真摯に向き合ったメーカーです。
分る!わかるよ!このキットを手にすると、メーカーの愛のあるキットというものがどういうものか、万人が
スピリッツを感じられる素晴らしいキットでした。
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JOSFの世界ではとあるキットをベースとして、幾つかのパーツ替えで同じシリーズの別キットとして発
売される事が少なくありません。また、優れた設計のシャーシなどを活用して全く別の商品に生まれ変
わるものもあります。イマイのジェットモグラタンクのクローラー部分の基本設計は、将に「クローラー」
の名で連結戦車として生まれ変わっていますし、同じ車体設計はその後もゲッターロボにも使われるな
ど、基本的には中小企業であるプラモデルメーカーは色々な創意工夫で経済的なキット開発をしていま
した。
エルエスも例外ではなく、SF戦車からSFボートまで、武器やウィングなどの外装パーツを多くのキット
で共有して商品のバリエーションを増やしていました。その思い切りの良さは他社の比ではなく、単なる
パーツ替えというより、1枚のランナーをユニットとして捕らえ、ユニットのあらゆる組み合わせで大胆に
新キットを増殖させていったのです。
子供心に「このパーツは○○の流用だ。」と気が付くと若干興ざめだったのは否めませんが、このポニ
ーなどはエルエス独特のワイドボディの船体にウィングを付けた突出したカッコよさを演出していました。
尾翼はフレンドシップなどにも流用された人気者「ユニット」ですが、何とキャノピーは同社のポルシェカレ
ラ6のものですね。
フレンドシップやグッピーなど、この小さな幅広船体に、無性に懐かしさを感じるおじさんモデラーは少な
くない事でしょう。
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次は1990年ごろに発売されたチャイルドボックスシリーズ。キット自体は全て1974年発売の古いものです。こ
のシリーズのNo.1はイ号400ですが、今回はNo.2〜6を紹介させて頂きますね。
これらエルエスらしい清潔感と精密感のあるキットは、堅実で単純な設計にも支えられて、20年ほど発売されて
いた息の長い”100円キット”です。
チャイルドボックスシリーズはコンビニエンスストアのファミリーマートでも売られていた為、そこで手にした方も多
いことでしょう。
このUボートはゴム動力スクリューの反トルクを抑える為の軟鉄のオモリがきちんと入っている可愛いヤツです。
一般的に潜水艦プラモは空気室で浮力を稼ごうとしていた為に、その部分の接着不良で日本中の海や川で轟沈し
ていました。進水式がそのままその船の最後となっていたのです。お小遣いの少なかった当時の少年達にとって、
この仕打はどれほど辛かった事でしょう。
しかしこのキットは、浮力体に発泡スチロールを使っているため、回収率は非常に高かったと思われます。
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同社のPT−109ケネディは超ロングセラーのキットですが、その弟分も元気なお風呂キットとして活躍して
いました。私事ながら、PT−109大好きな筆者の中でもお気に入りの、可愛くてステキなキットです。
甲板上のパーツは魚雷4本に機銃3個…など合計僅か10個という簡単なものですが、その中に船尾の「旗」
が混じっているのがご愛嬌。エルエスの設計者にとっては、これは外せなかったんでしょうねー。
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チャイルドボックスシリーズのもう一つの魚雷艇仲間、ボスパー。タミヤがミニ魚雷艇シリーズや1/72大型魚雷
艇シリーズで製品化した「ボスパー」が戦後型のブレーブボーダラー級大型魚雷艇だったのに比べ、エルエスの
このキットは1942年から1944年に建造されたボスパー2型と呼ばれる22メートル級の戦時型です。
タミヤが戦時型ボスパーを発売するのはこのキットが発売されてから40年近くたった後のイタレリ版ですね。
ボスパーは戦時中アメリカでも委託生産された為、イギリス海軍の番号とアメリカ海軍の番号の2つを持つもの
があり、この378号はBPT68という別名も持っています。
因みに378号はボスパー2型の中でもクリアな写真が残っている為に各種資料では「売れっ子」の1艇で、この
パッケージイラストもその有名写真をベースにしています。
イラストは実艇通り魚雷発射管は2本ですが、キットには可愛い発射管が4本付いています。これは同僚の「ケ
ネディ」に負けないようにした、エルエスの確信犯的販売戦略、でしょうか?
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今度はポップな配色が目に飛び込んでくるミニレーサー・スピードスターです。この鮮やかな発色は特色のKP
(蛍光ピンク)とか使っているのかなぁ。
ゴム動力のミニミニキットですから機能的にはハテナ?ですが、スピードボートらしく船底にはハイドロ風の段差
が付いているニクイ演出の設計です。
LSはマブチ(学研)、ミツワと並ぶ船外モーターメーカーとしても知られていますが、その船外機をバッチリ描き
込んでいるパッケージです。キットも船外機付きの内容ですが、ただ艇体は全長114ミリとあまりにも小さいので、
LSの船外機は使えそうにありません。
エルエスらしいカッチリした船体に細かな手すりまでパーツ化された好感の持てる逸品です。
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次はミニクルーザー・ビクター。安価なキットですので透明パーツまでは入っていませんが、数が多い窓のピ
ラーまで細く一発で抜けて居るところが流石はエルエス、と感心します。
内陸生まれの貧乏な少年にとってクルーザーなどと言う代物は身近に見た事が無く、個人的な好みの問題
でもありますが、スピードレーサーでも魚雷艇でもSFボートでもなかったこういうフネの人気ってどうだったんで
しょう。
などという余計な心配はさておき、潜水艦2種、魚雷艇2種、民間のボート2種と、ラインナップ的には中々考え
られたカップリングのシリーズだなぁと思います。
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最後はエルエスの水ものキットでも一風変わった…というより、我が国のプラモデル史の中でも非常に珍しい水
陸両用艦船キット、デフォルメ・エンタープライズの紹介です。タイヤをつけて陸上を走らせられる艦船模型って、S
Fプラモデルを除けば、他には古いクラウンだったかの大和と、タカラトミーが数年前に発売した走行洋上模型くらい
でしょうか。
このキットは厳密には水陸両用ではなく水上走行/陸上走行コンバーチブルキットで、スクリュー軸にスクリュー
を付けて水上走行するか、ピニオンを付けて着脱式のクラウンギア駆動にして陸上走行にするかを選択します。
多分当時は汎用ギアといえば、噛み合う回転軸線が同一平面状にある普通のクラウンギアしか流通しておらず、
スクリュー軸と車軸をブッちがいに直交させる事ができなかった為の狗肉の作だったのかもしれません。
軸を十文字に直交させながら回転させると言うのは、模型シーンではタミヤがミニ四駆にヘリカルクラウンギア(ピン
クのクラウンギア)を導入するまでは無かった選択肢だったのでしょう。
甲板上の黄色い牽引車がスイッチになっているアイディアも楽しい、中々ユニークなキットです。
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