8/22 Aruzua
/ 39.5km
8/23 Monte do Gozo / 4.4km
8/24 Santiago de Compostela / 0km
8/25 Santiago de Compostela(the 2nd night)
8/22 Aruzua
/ 39.5km
朝もやの中に浮かぶ修道院は、それはそれは幻想的だった。
見とれて進んでいくと、曲がるべき角を見落として、もう一度戻ろうと引き返した時、車からクラクションの音。
こういう応援はよくあるが、車内からニコニコ顔で手を降っていたのは、あの、「なんちゃって巡礼隊」ではないか?!
歩いていると、後ろから賑やかな声。
「なんちゃって巡礼隊」の4人だ。
「あれ?さっき車に乗っていたでしょ?!」
「うん、今日は所定の位
置まで車できて、昨日の場所から歩き始めたんだ。」
4人はホリデーで来ているので、巡礼宿には泊まらない。
どこかのホテルに泊まり、車を回しているようだった。
いつものように、マリアとヘスースは、早朝に出発。
これから、ペラとウリ、クリストフやエスメラルダも後から来るだろう。
今日はいよいよ『フランスの道』に入っていく。
これでサンティアゴまであともう一息。
でも、あの巡礼渋滞の『フランスの道』に入るのは気が重い。
ベッド争奪戦には参加したくない。
ゆっくりペースで、みんなと一緒に行こう。
10kmほど歩くと、見慣れた四つ角に出た。
一昨年もここを通った見覚えがある場所。
すでに『Santiago』と書かれた標識が出てきている。
角のBarに入ると、「なんちゃって・・・」の4人が朝食を食べてわいわいやっていた。
いつものことながら、その中の一人のおじさんは、私を見つけると大歓迎をしてくれる。
カフェ・コン・レチェを注文。
支払いをしようとすると、おじさんが払ってくれたという。
「ごちそうさま!」
外に持ち出して、のんびりとコーヒーを飲む。
そして、出発!
「歩きがゆっくりなんで、先に行きますけど、すぐにまたお会いできますね!」
そう言って歩き始めた。
歩いて5分。
忘れ物に気がついた。杖をさっきのBarに置いてきてしまった。
巡礼二日目から、ずっと私のお伴をしてきてくれた二本の枝。
もうここからは平になるから、要らないのかもしれないが、Santiagoまで一緒に連れて行きたかった。
Uターンすると、さっきの「なんちゃって・・・」四人組が、向こうから歩いて来た。
「杖を忘れたので、戻るんです。また後で!」
四つ角の道を渡ろうと、信号待ちをしていると、女性の巡礼者の影が見えた。 エスメラルダじゃないかな?!
彼女は私に気づかずに、さっきのBarに入っていく。
「エスメラルダー!」
私も、もう一度Barに入り直して、カフェ・コン・レチェを注文。
これも旅は道連れ・・・、杖のお陰でエスメラルダとコーヒーを飲むことができるのである。
コーヒーを飲んでいると、そこへやってきたのは・・・・・ウリとペラだった。
巡礼者ってのは、考えることが一緒なので、打ち合わせなしでもこうして常に再会する。
ウリは、
「二足しかないソックスを、昨日洗っちゃって、あの天気で乾かなくってさ、今は素足で歩いているんだ。」
そう言って、ソックスを取り出し、トイレの乾燥機に乾かしに行った。
あ〜っ、こんな二人が来ちゃったら、またここも長くなりそうだ。
しかも、ペラは携帯の充電を始めた。
何時間ここにいるつもりなの?!
今日の目的地、アルスワは『フランスの道』に入ったところにある。
この『フランスの道』は、世界遺産にもなっていて、毎年大勢の巡礼が歩いている。特にサンティアゴまでの100kmは、巡礼の数が多い。
公営の巡礼宿はとてもじゃないけど入れない。
この辺りでは、12時には遅くとも巡礼宿に着いて、受付までの時間にリュックを並べ、順番を待つ。
運が良ければベッドがもらえる。
でも、私営の巡礼宿なら、電話で予約ができる。
「ねぇねぇ、私営の巡礼宿を予約しておこうよ!」
ウリのガイドブックに書かれている宿に、ペラが電話をしている。
「取れたよ!」
お〜、良かった!これで安心してゆっくりできるわい。
ここのBarのおねえさんは、私たちの会話を聞いて、大笑いしている。
そして話に参加してきた。
こうやって、さらにまた1時間がたった。
やっと充電もできたし、ソックスも乾き、今夜のベッドも確保。
さあ、出発だ。 ソックスを履いたウリはの足は早く、先を歩いている。
エスメラルダとペラと私は、ずっとおしゃべりしながら歩く。
「エスメラルダ、何でリュックにカバーをつけているの?雨でも降ったっけ?」
「これはね、車が来た時に目立って安全だからなの。」
彼女はこう言った。
「今日はアルスワに行くでしょ。私はこのアルスワに住む友人の結婚式に呼ばれているの。今日からその友達の家に泊まって、一旦巡礼から離れて、三日後にまた歩き出すの。」
そうか〜、せっかくいい友達になれそうだったのに。
じゃ、アルスワまで一緒に歩こう。
「日本のことをテレビで見たんだけど、銀杏の木が、原爆の後でも残っているって聞いたわ。
すごい生命力がある木なのね。」
そんな風に、彼女が知っている日本のことを話してくれた。
「今日のお昼は何を食べたい?」
「一皿目は、ミックスサラダ、二皿目は・・・・魚介類!」
そんなたわいもない話をし・・・・
アルスワに着く直前は、日差しが強く、厳しい歩きになった。
『フランスの道』に、直角に入って行く道。
いつのまにか、最後はウリ、ペラが先を行っていた。
私はエスメラルダの黄色い背中を見失わないように頑張って歩いた。
やっと、アルスワの公道に出た。
ペラが待っていてくれ、プルペリアという、たこ専門店に案内してくれた。
そこには早く着いたウリと、ダニエルおじいちゃんと美人フランス人のカップルが座っていた。
エスメラルダとは、ここでお別れだった。
もしかしたら、サンティアゴで会えるかもしれない。
さあ、私も、プルポ(タコ)を食べるぞ〜!
すでに皿の半分以上食べている、ダニエルおじいちゃんが、ずっと一人で話をしている。
我々は、到着したばかりで、疲れもあって、黙々と食べながら、その話にうなづく。
ワインが、ダニエルおじいちゃんからも、ウリからも回ってくる。
う〜ん、何かが足りない
!ビールだ!
「すみませ〜ん、ビールください!」
ダニエルおじいちゃんは、
「ビールは好きかい?」
「喉が渇いているので、何でもいいんだけど、やっぱりガリシアのエステージャが一番だよね!」
「こりゃ、わしが好きなタイプの女性じゃ・・・」
私は男らしく(?)おじいちゃんには目もくれず、ビールを飲み干す。
「ダニエルは何でカナダに渡ったの?」
「そりゃあ、なんつうか〜、よくある若者の話じゃ〜」
カナダには、奥さんが帰りを待っているらしい。
スペイン語の会話に、気の毒に思ったのか、キャロルがウリとドイツ語で会話をする。
そこへ、
「食後のコーヒーは要らんかね〜」
と、おじさんが回ってきた。
コーヒーを入れる時、透明の液体も希望で入れてくれる。
「あっ、オルッホじゃない!?たくさん入れて!」
私はこのオルッホがけっこう好きで、コレを飲むと元気になるのだ。
ウリも試しに入れてみる。
「わっ、なにこれ〜、すごいアルコール!」
ここでオルッホ好きがバレて、後々まで、ペラは私に 「オルッホ!」と言うようになってしまった。
ダニエルおじいちゃんたちの宿も、やはり私営のものだが、私たちが取ったものとは別
だった。
さあ、私たちはこれから、予約しておいた宿を探さなければならない。
ここ、アルスワには、いくつもの私営の巡礼宿が出来ていた。
初めて巡礼した2004年には、なかったことだ。
私たちが予約した巡礼宿には、偶然にもクリストフがいた。
他にも、イビキのドイツのご夫婦、アフロヘアーの姉弟。
マリアとヘスースおじさんは、例によって、早くここに到着して、公営の巡礼宿にしっかりチェックイン!
それぞれシャワーを浴びたりして、中庭に出る。
広くはないが、くつろげるスペースになっていた。
だんだんに仲間が集まってきた。
ウリとペラ、クリストフと話をする。
何の話をしていたのか、忘れたけど、ウリがこう聞く。
「Hiromiはティピカルな(典型的な)日本人なの?」
「う〜ん、そうでもないかな。どちらかというと、標準より真面目でおとなしいかも!」
ここでどっとみんなが笑う。
「ねぇ、日本人てそんなにみんな面白いの?」
それを聞いていたのが、アフロヘアーのドイツ人の女性。
「私の学校にも、日本人の男の子が転校してきてね、最初は何もしゃべらずおとなしかったの。英語(インターナショナルスクールか?)が話せなかったからなんだけど、だんだん頭角を現して、とっても面
白いことを言って、みんなを笑わせて、人気者になったのよ。」
彼女と初めて話した。
そして、ペラが読んでいる本を見て
「その本、最後まで読んだ?」
彼女はスペイン語は話せない。ウリがペラの代わりにこう言った。
「これは彼が巡礼中に買った本で、今読んでいるところなんだ。」
すると彼女は
「その本、私も読んだけど、すごくおもしろいわよ。読み出したらやめられない。」
この姉と弟は、本をたくさん読んでいる。
自分も含めて、我が国の若者たちって本を読まないなぁ。
明るい将来はあるのだろうか?! 日本人は、これからどうなるのだろう?!
クリストフは
「さっき、マリアがいる巡礼宿に訪ねて行ったよ。」
そうだ!そろそろマリアに電話してみよう!
「マリア、何してるの?」
「うちの宿の前のBarで飲んでいるのよ、すぐにこっちに来て!待ってるわ!!」
さっき彼女に会いに行ったばかりのクリストフにも、どうするか聞いてみる。
「あ〜、どうしよう!?今夜は買ってあるパスタを料理しなくちゃならないから・・・、じゃ、ちょっとだけ行って、すぐに帰るよ。明日持って歩くのには重すぎるから。」
ウリもペラも誘って外に出ると、エスメラルダから電話。
「さっき友達の家には着いたんだけど、みんなに会いたくて、アルスワの街の中に戻ってきたの。もし良かったら、一緒にBarに行かない?」
マリアのBarに行くと、最近マリアが仲良くなったカップルと一緒だった。
外の席は少ししかない。 マリアと話した後、私たちは、広場のBarに行くことにした。
そこで、エスメラルダとも落ち合う。
飲み始めると、フランス人のソフィが、知らない男性と一緒に来た。
私たちに挨拶だけして、別のテーブルに座る。
会いたかった人に会えたのだろうか?!
「明日はどうする?どこまで行く?」
作戦会議だ。
「公営の巡礼宿は絶対に取れないし、こうなったら、確実にベッドがある、モンテ・ド・ゴソまで行っちゃおうか。」
モンテ・ド・ゴソまでは35kmある。 それもいいかもしれない。
モンテ・ド・ゴソには泊まりたくない・・・最近は、敬遠されていた。
なぜかと言うと、800人収容の巨大アルベルゲだから。
私も初めて歩いた年以来、素通りである。
このメンバーも、少し前まで、ここには泊まりたくないと話していたのだが。
ここ、モンテ・ド・ゴソは、初めてサンティアゴの塔が見える丘がある場所で、もうサンティアゴから4,4km地点にある。
しかし、発想の転換だ。
マリアに電話して聞くと、彼女たちもモンテ・ド・ゴソに行くという。
決まりだ!
「じゃあさ、もしはぐれた場合を想定して、いろいろ決めておこうよ。」
まず、お昼ごはんの場所を決めた。
時間は決めないが、必ずその場所で食べる。
誰かを待つ必要はない。ただ、ここで食べればいい。
次に、モンテ・ド・ゴソに着いてたら、カフェに集合しよう。
時間は6時。その時もし到着できなかったら、8時にもう一度集まろう。
4人は、この約束を、頭に叩き込んだ。
「クリストフはパスタを作るんでしょ。」
「うん、たくさんあるから、良かったら一緒に食べてね。」
「は〜い!」
でも、ペラとウリは、ハンバーガーを注文している。
早く帰ると言っていたクリストフ。なんだか辛そうに座っている。
先に戻るとは言い出しにくいのだ。
「ねぇ、クリストフ、もう帰ってパスタを作ったら?」
頷きながらも、じっと待っている様子。
あまりにかわいそう。
「先に帰って作っておいて、私の分も。」
やっと席を立った。
私たちが宿に着くと、
「ちょうどいいタイミングだよ、今、パスタが茹であがったところ!」
うれしそう。そして・・・
「ワインも買ってあるんだ。パスタとワイン、最高の組み合わせだと思って!」
かわいいやつ。
でも、ペラもウリもお腹がいっぱいと見えて、寝る準備をしている。
私もそんなに食欲はない。 それでもつき合う。
一袋茹でちゃったパスタは、大量にあった!
スペインだから、夜の10時を過ぎても、これから食事という人は多い。
ワインを飲みながら、クリストフのパスタをいただく。
彼は、困ったと言いながら、残ったパスタを全て平らげてしまった。
さすが、若者!!
















































8/23 Monte
do Gozo / 4.4km
『フランスの道』の人は朝が早い。
一番早いのは『銀の道』の人。午前中に距離を稼がないと、午後は太陽との戦いにいなる。
『北の道』から来た我々は、一番遅い。 なぜならば、さほど暑くないからだ。そしてベッド争奪戦も、それほどまでではない。
今日もみんなより一足先に出ていくことにした。
まだ暗い道を歩いていたら
「あれ、Hiromiじゃないの?」
背後から話し声が聞こえる。
何でまっ暗闇の中で、私の後ろ姿がわかるんだ?
ヘスースおじさんと、マリアだった。
「暗いのに、なんで私ってわかるのよっ!?」
「スペシャル・ペリグリーナ(巡礼)だから!」
なぁ〜に適当なことを言っちゃって!
やっぱりこの二人、どこまでも一緒だ!
『フランスの道』の人ったら、元気いっぱいである。
最後の100kmしか歩かない人もたくさんいるからだ。
かなりの人数が、ぞろぞろと、延々と、修学旅行のように歩いている。
向こうからおじさんがやってきて、すれ違う人ごとに
「二軒目のBarにはおいしいタルタ・デ・サンティアゴ(ケーキ)があるよ。」
と囁きながら歩いている。
お〜、やっとBarがあるのだな。 わかった、二軒目だね。
私は必死でタルタ・デ・サンティアゴを目指して歩いていく。
一軒目のBarがあった。
うん、ここじゃないんだな。二軒目ね!
しかし、この後は一向にBarがない。
そのうち、ウリとペラが追いついてきた。
彼らはアルスワでゆっくり朝食を食べてきたので遅いのだ。
私はすでに、疲れていた。
人をたくさん見て疲れてしまったのかもしれない。
「二軒目のBarがないんだけど・・・。」
「さっきあったじゃない?!」
私は一軒目を見過ごしてしまっていたのだった。
二人は心配そうな顔をしていた。
やっと、出発して13kmのところにBarを発見!
ちゃんと入口に、ウリとペラのリュックが置いてある。。
カフェ・コン・レチェとクロワッサン。
テレビのニュースで、マドリードの飛行機事故が映し出される。
ペラが新聞を読んでいると。ウリが事故について質問をしている。
ペラも大変だ。新聞を見ながら、質問の答えを探す。
店を出る時、クリストフがやってきた。
さあ、次はランチの場所、約束したのはAMENALという所。
今日はだんだん暑くなってきた。
いつのまにか、ウリとペラとははぐれてしまった。
そりゃあ、あんなに足が長い人達だもの。
もうすぐ約束のAMENALに着く直前という時に、ペラから電話が入る。
「今どこにいる?」
「AMENALの町の少し手前。」 「じゃ、国道に出たら、巡礼路に入らずに、400メートル右に行くんだよ。」
電話を切り、途中でわからなくなりまた電話。
「AMENALに入ったんだけど、坂を登っていいの?」
「そう、どんどん登って!」
日照りが強い国道を登るのはきつい。
しかもAMENALの町は終ってしまった。不安だ。
そこへまた電話が入る。
「だいじょうぶ?」
「何にも見えないよ。店の名前をもう一度教えて!」
こうした電話を何度もして、ようやく辿り着いた。
レストランは奥にあり、二人のリュックも置いてある。
Barで靴を履き替え、ふとテレビを見ると、ハポン(日本)という声が。 男子400メートルリレーの、メダルの表彰式が行われていた。
顔は日本人ぽいがまさか陸上でメダルを取るわけがいないかなー。
そばにいた5年生くらいの男の子に、
「この人達、日本人?中国人?」
「わからないけど、日本人じゃない?」
もう一度、テレビを見たら、胸には日の丸が。
私は二人への挨拶も忘れてテレビを見て、そしてトイレを済ませ、レストランに入った。
席にはペラだけが座っていた。
注文も私が来るまで待っていてくれたようだった。
しばらくして、ウリが戻ってきた。
「あれ?いつ来たの?」
「少し前に。ウリはどこへ行ってたの?」
「君を探しに、外で待っていたんだよ。おかしいなぁ。何で会えなかったのだろう?」
そこへBarのおかみさんが来て、
「ちょうどトイレに入った時に、すれ違ったのよ。」
二人はメインにお肉を注文し、私は魚のフライ。
デザートは、オルッホのケーキ! 二人はプリン。
さあ、ここからあと10kmもない。
しかし、ここからの10kmはキツかった。 暑さが厳しいからだ。
『北の道』組は、距離と高低差には強いけど、暑さには弱い。
さっきの、国道を更に上へ1km。 そこで巡礼路と合流。
ここには、『Santiago』と書かれた碑が立っている。
私より先に到着した二人は、木の枝の上にカメラを一生懸命セットしている。
セルフタイマーで撮ろうという試みだ。
細い枝しかないから、なかなかうまくいかない。
何度も繰り返し、やっと写す。
『銀の道』で鍛えた私は暑さにも強い、
ここから音楽のスィッチも入れた。 急に早くなった私にペラは、
「オルッホ・パワー!」
そのせいかどうかはわからないが、二人をぐんぐん引き離して歩くのだった。
他の巡礼も、どんどん抜かして歩く。
アルスワからサンティアゴまでの道は三回目なのだから、よく知っている。 (「銀の道」だけは別
の道を通る。)
やっとテレビ局に着いた頃、私のスピードが止まった。
そしてペラとウリが追いついてきた。
いよいよモンテ・ド・ゴソの、丘の上のモニュメントに立つ。
あーっ、疲れた! こんなに疲れてこの丘に立つことも珍しい。
ここでコーラを買って飲む。
売店のおばさんが
「今日のミサは7時からだよ。こっちへ来て!」
礼拝堂を案内される。 そして、
「アルベルゲまでの近道はこっち。二分とかからないよ。」
受付にはイタリア人の団体。
そして私たちの順番が回ってきた。
受付の男性は、ちょっと女性っぽい話し方。
知っている限りのドイツ語と、日本語を駆使して歓迎してくれる。
「あら〜、あなた、日本のコインを持っている?後でユーロと交換してくれないかしら?」
「は〜い、後できます!」
使い捨ての紙のシーツと枕カバーをもらって、部屋に行く。
8人部屋が、たくさん並んでいる。
受付を終えて部屋に入った時には、6時を過ぎていた。
結局、三人は朝からほとんど一緒に行動していたので、昨日の取り決めは意味がなかった。
クリストフはだいじょうぶだろうか。
8時になったら約束のカフェへ行ってみよう。
シャワーを浴びて、洗濯をして戻ると、ウリが気分が悪いと言って、受付のお兄さんから、薬をもらってきた。
とりあえず寝ると言う。
私はペラと、小さい店があるBarに行った。
何かを買うのかと思ったら、ボカディージョにすると言う。
チーズとハムのボカディージョと、コーラ。
そこで食べてしまうと、何も買うものがない。
ペラは、ウリのために買い物をして行くと言うので、一足先に宿に戻ることにした。
廊下ですれ違ったのは、イタリア人の、若者早足三人組の一人だった。
彼らは、最初はろくに挨拶もしてくれなかった。
笑顔を見せることもなかったのに、だんだんに笑顔になってきていた。
この日は向こうから声をかけてくれた。
「僕たちの部屋はここなんだよ。」
ウリの様子を見ると、静かに寝ようとしている。
熱もあるみたいだ。
「八時になったら、クリストフが心配だから、カフェに行ってくるからね。」
「うん、ありがとう。」
日記帳を持って外に出る。 今日はまとめて書かなくっちゃ。
外に出ると、ペラが氷で足を冷やしていた。
どうも、甲の部分が腫れて痛いらしい。
私も歩くのがツライ。 午後の暑さはひどかった。 みんな今日は元気がない。
「クリストフを探しにバルに行ってくるね。」
「うん、僕は後で行くよ。」
一人でこの巨大アルベルゲの中心へ向かった。
お土産やさんで小さな買い物をし、銀行でお金をおろす。
そしてカフェで、ビールを飲みながら、日記を仕上げてクリストフも待つとしよう。
まだ、顔見知りは誰もいない。
そこへマリアから電話が入る。
「どこにいるの?」
「カフェよ。」
「あっ、ビールを飲んでいるのね。がはは!」
「クリストフを見た?うん、いたわよ。それよりこっちへいらっしゃいよ。」
すぐには動きたくない。
今日はマリアには会わずに、日記を書き終えてから部屋へ戻った。
ペラが
「カフェには人がたくさんいた?」
「ううん、いなかったよ、」
「じゃ、僕は後で、一杯だけ飲みに行くよ。」
私はベッドの上で、我が足の裏を見つめて(!)いた。
今日、とうとう出来かけた、マメをじっと見ていたのだ。 感慨深げに。
すると、それを見ていたペラが、その、まさにそのマメの部分に、爪でおはじきのようにポンとはじいた。
「ぎぇ〜〜〜〜っ!」
すごい悲鳴に、寝ていたウリもびっくり。
マメがあるのを知らないでやったペラは、恐縮しながら、
「マッサージ、マッサージ」
とつぶやいていた。
私は今日は疲れたので、早めに休むことにした。
外は賑やか。 ギターを弾いている。
ウリは 「ただでこんな子守唄が聴けていいねぇ。」
少し回復した様子だった。 ペラは一人でBarに行ったが、本当に一杯だけ飲んで帰ってきた。
「明日は8時にカフェに集合だよ。」
カフェでマリアたちに会って、決めてきたのだろう。
他にも寝始めた人がいたので、電気を消した。
ペラは、頭に懐中電灯をつけて、本を読み出した。
彼は、この格好のまま、寝てしまうことがある。
すでに今日も寝ているみたい。

















































8/24 Santiago
de Compostela / 0km
8時にカフェに集合!
行ってみると、クリストフしかいない。
「ペラ〜、マリアはどこよ?」
「彼女たちは7時半に出発だよ。」
なるほど〜〜〜〜〜!そういうわけか。
体調が悪かったウリに配慮して、遅めに時間設定をしたらしい。
ここでゆっくり朝食をとる。
ちょうど、オリンピックのバスケットの決勝戦が放映されており、スペイン対アメリカ戦だったので、食事が終ると、全員椅子をテレビに向けて座り、観戦。
結局出発したのは、9時半だった。
サンティアゴまで4,4km。
一時間で着けるから、余裕。
それにしても、あゆみが遅い!
インフォメーションで、地図をもらい、巡礼宿について聞く。
公営は、夕べ泊まったモンテ・ド・ゴソのみ。 あとは、私も泊まったことがあるが、街から遠かったり、急坂があったり。しかも門限がある巡礼宿がいくつか。
「サンティアゴには安宿はたくさんあるから、今日はカテドラルの近くに泊まろうよ。」
「そうしよう!!」
『Santiago』という標識をみつけて、写
真を撮る。
今度は自分たちも入って、セルフタイマーをセット。
四つのカメラが並ぶ。 ちゃんと写ったかな?
あら、半分しか写っていない。 人に頼んで撮ってもらう。
後でカメラをチェックしたら、コマ送りのように、10枚以上同じような写真があった。
やっと街の中心に入っていった。
あれ?三人が来ない。
戻ってみると、『昔の巡礼の写真』が張ってある店で、じっくり見ている。
動かない。
やっと歩き出した。
「もう、カテドラルが見えてくるよ。」
私は少なくとも、7回はこの道を歩いているから、先輩ぶらずにはいられない。
三人は、初めてなのだ。
やっとカテドラルの北門に到着。
ここからトンネルをくぐって、オブラドイロ広場に行き、カテドラルを正面から眺める・・・・・というのが常なのに、この人達ったら、北門が見える階段に登り、座り、そして呆然としている。
「ねぇ、早く広場に行こうよ。」
「1分待って。」
ウリが言う。1分てことは、30分のことだってもうわかっているから、私も覚悟を決めて座る。
三人は、カテドラルを眺めながら、そばで演奏するフルートの演奏に感動している。
30分経った頃、
「そろそろ行こう!」
やっと立ち上がった!!
オブラドイロ広場に行き、歩いて広場の真ん中を目指す。
あらっ!ヘスースおじさんじゃないの!!
ここで写真を撮ろうとしていたその時、アラゴンの道を一緒に歩き、その後別れてフランスの道を歩いてここまで来た、日本人の友人である、ちあきちゃんが私をみつけて抱きついてきた。
カメラを用意していた私は、その勢いで、カメラを地面に落としてしまった。
レンズを出したままになっていた。
拾ってみると、無惨な姿。 レンズカバーはすっ飛んで、レンズも曲がっている。
え〜〜〜っ!?ありえないよ〜〜〜、こんなの!
私は必死で斜めになったレンズを引っぱり出し、まっすぐにする。
デジカメってのは、衝撃に弱い。
これは、三年前にもカメラを壊した経験があるので、よくわかっていた。 ちょっとのことでも、作動しなくなってしまうのだ。
試しに電源を入れてみる。 すると、すーっとレンズが伸びてきた。
もう一度電源を落とす。 今度はレンズがすーっと中に収まる。
これはサンティアゴ様が起こした奇跡というしかない。
さっそく、このカメラで彼女に集合写真を写してもらった。
そこへ携帯の電話が鳴った。
四年前、初めての巡礼である「フランスの道」を一緒に歩いたパキからだった。
彼女とは、2度一緒にサンティアゴに到達しているが、今日は偶然にも、いいタイミングで電話だ。
電話の向こうのパキは、相変わらず明るく、まるで今回も一緒に歩いてここに到着したようなはしゃぎぶりである。
私もパキと、この喜びを分かち合えて嬉しかった。
今日バスで帰るヘスースおじさんとはここでお別れだ。
明日帰るクリストフに、カテドラルのミサに出るようにすすめ、ウリと今夜の宿を探しに行った。
ペラとははぐれてしまったが、すぐに会えるだろう。
前に泊まった場所は、賑やかな地域で、カテドラルにも近い。
まずはそこへ行ってみよう。
広場に戻る前に、客引きにつかまる。
「部屋を探しているなら、すぐ近くにあるわよ。」
本当に、カテドラルの隣と言ってもいいほど近くにそれはあった。
そして値段も安いし、ペラが一人になっても同じ値段、しかも4人部屋があった。
ウリと、私はとてもここが気に入った。
ミサが終るころ、二人でプラテリア門でペラたちを待った。
ここにいれば、ミサを終えて出てくる彼らに会えるからだ。
そこへ現れたのは、マリアだった!
昨日のカップルと一緒にいた。
記念撮影をする。
ペラ、クリストフ、そして一昨日タコを一緒に食べた、ダニエルおじいちゃんとキャロルも一緒に出てきた。
ダニエルおじいちゃんに誘われて、一緒にランチを食べようと約束をして別れた。
まずは宿に向かった。
カテドラルに近く、活気がある場所が気に入った。
少々外の音はうるさいが、窓から巡礼者が歩いているのが見えるのがいい。
シャワーを浴びたり、昼寝をしたり・・・
二時半。
オブラドイロ広場に集合!
そこには、久しぶりの、マックス6人衆の姿もあった。
あれ以来、フランス人のゴマとサムエルもマックスたちのグループに加わったままだ。
ここに来ると、誰かしらに会えるものだ。
『おめでとう!』
さて、ダニエルおじいちゃんたちと、ランチにでかけよう。
この食事が終った後、キャロルは国へ帰ると言う。
「かんぱ〜い!」
今日は、クリストフの二十歳の誕生日でもある。
「おめでとう!」
「この記念すべき誕生日を、君は生涯忘れないじゃろう!」
ダニエルおじいちゃんの言葉。
私は、サンティアゴさんがくっついた、小さなベルをプレンゼントした。
「もう一度、かんぱ〜い!」
食事がおおかた終ると、キャロルが出発する時間だった。
ダニエルおじいちゃんは立ち上がり、バスステーションまで送ると言って、出て行った。
また夜に会う約束をして。
私たちは、これから巡礼を終えたという証明書、コンポステーラをもらいに巡礼事務所へ行くことにした。
宿のすぐそばにある。 そこへ向かう途中、二人の男がすっごい笑みを浮かべ、迫力たっぷりに、私に近づいてきた。
「ウオォ〜〜〜ッ〜!」
って言われても・・・・。
あっ、わかった!アラゴンの道で一緒に歩いた二人ではないか!
ポルトガル人のヌノと、スペインのトゥイに住むエルネスト。
エルネストは、私のお気に入りだったのに、もう忘れてる。
きゃ〜っ!抱き合って写真を撮りまくる。
二人とも、ヒゲも生えて、たくましくなっていた。
近くで一部始終を見ていたペラは、
「友達のことを、忘れちゃったの?!」
まさかこんなところで再会するとは思わなかった。
事務所に行くと、マックス6人衆も来ていた。
外までは並んでいなかったけど、中に入って階段のところで順番待ち。
いよいよ番が回ってきた。 紙に質問が書いてある。
これに書き込んで、質問を受けて終わり。
ここで巡礼をした「証明書」をもらう。
あの、イタリア人の若者三人組が通
りがかる。
そうだ!マリアのために、写真を撮らなくっちゃ。
彼女は、この中の一人のダニエレがかわいい!としきりに騒いでいるのだ。
ダニエレってどの子だか知らないけど・・・。
思いきり、ニコニコしてくれた!
今度は、クリストフがアイスクリームを食べたいということで、探しに行く。
最近は、行く度に進化するこの街。
どんどん新しい店が出来て、おいしいチョコレートを売る店の奥に、アイスクリームがあった。
ここで、一旦解散となる。 クリストフは、お土産屋さんに。
ペラ、ウリと私は宿に戻る。
宿の廊下でバッタリ会ったのは、あの、イビキのドイツ人ご夫妻。
「ウリ、大変だよ〜、またあのご夫妻がいるよ〜。でも、部屋が違うからイビキは聞こえないね。」
「うん、良かった〜、違う部屋で。」
みんな昼寝をしている。
私もうとうとしていると、電話が入った。 ちあきちゃんからだ。
彼女と一緒に歩いた、ソトちゃんが、今日の夜行で帰ってしまうので、宿を抜け出して会いに行った。
二人の楽しい『フランスの道』での珍道中物語を聞いて大笑い。
そして宿に戻ると、あっと言う間にダニエルと約束をした時間になっていた。
待ち合わせ場所には一人の男性が増えていた。
彼は、クリストフが『北の道』で出会ったドイツ人だった。
長い間、会えなかった彼と、ここで会えたと言う。
みんなで一番の繁華な通りを歩き、その終点にある店に落ち着いた。
ソトちゃんを見送って戻ってきた、ちあきちゃんもあとから加わった。
このリラックスしたひととき、いいなぁ。
歩いてきて成し遂げた満足感・・・でも同時に別れもすぐ目の前。
複雑な気分なのは毎度のこと。
サンティアゴまで歩いた長い巡礼は今回で4回目だが、毎回全く違う巡礼だった。
でも、ここに着いた時のこの気持ちはいつも似ている。
そうだ!マリアに電話してみよう。
彼女は明日はここを発つはずだった。 電話をしたが、出ない。
私がマリア、マリアと言うものだから、ダニエルおじいちゃんがこう言った。
「マリアって、そのすてきな女性に会ってみたいね。」
もう一度電話をする。つながった。
「あ〜、Hiromi,ごめんね〜、クリーム味のオルッホを、一瓶飲んじゃって、立てなくなっちゃったのよぉ〜!もうこのまま寝ちゃうわ。ところで、ウリは元気?」
昼間彼女に会ったけれど、最後の食事を一緒にしたかったのに、残念!
クリストフも残念がっている。彼にとっては、マリアは巡礼路の女神のはずだから。
でも、マリアったら、クリストフのことは忘れていて、ウリのことを必ず電話で聞くのだ。
ウリと出会った最初から、彼の行動を見て、彼女はこう言った。
「彼は私にとって、パーフェクトな男性だわ!」
では、最後の晩餐に行きますか!
(ここでは、毎日が誰かとの別れとなるので、『最後の晩餐』になる。)
おいしい海鮮をいくつか選んでシャアーして食べる。 どれもおいしい。
ドイツ勢は、イカやタコを普段は食べないが、すっかり気に入ったようだ。
私のドイツ人が苦手病も、今回の旅でだいぶ克服できた。
もう一軒行こう!
ペラが、
「オルッホを飲みに行かなくちゃ。」
と言っている。
やっとこの時間でも開いている店をみつけた。
ここでは、小さなテーブルを囲んで飲む。
私は期待に応えてオルッホのコーヒー味。 まだ食べ足りないクリストフは、しっかり食べ物を注文。
私はダニエルおじいちゃんに、『銀の道』の苦労話を始めた。 夏に歩けなかった38kmを、冬に戻ってきて歩き、それがまた厳しい道であったこと。
すると彼は、ペラに、この話をもう一度スペイン語で通訳し、みんなに言う。
「ほらね、女性ってすごいんだよ。男性よりもずっと強い。かなわないよ。だからわしは女性を尊敬しちゃうんだ。」
気がつけば、私以外は男ばかり、みんな深く頷いている。
ますます調子にのって私は
「オルッホを飲んだから、今からなら、30kmは歩けるよ!」
お店も閉店の準備をしている。 明日は朝食を、一緒に食べようと約束。
いつもの場所(プラテリア門)に、9時に集合と決まった。
ダニエルおじいちゃんはは、明日からフェニステーレへ歩き出す。
「もし、わしが居なかったら、食事に行ってしまってくれ。フェニステーレへ旅立ったと思って。」


















































8/25 Santiago
de Compostela(the 2nd night)
コーヒー味のオルッホを飲んだためか、毎時間ごとに、カテドラルの鐘の音を数えながら朝を迎えた。
6時半にはうとうと眠りについた。
その頃ウリは一人起き出して、出ていった。
8時には、ペラが廊下で宿の主人と話を始めた。
待ち合わせ場所に行くと、昨日のドイツの青年だけがいて、ダニエルおじいちゃんの姿はなかった。
ウリは先に一人で済ませたたからと、4人で朝食を食べにbarへ入った。
チュロス・コン・チョコラテとカフェ・コン・レチェ。
その店の奥で朝食を取っていたのは、あの、イビキのドイツ人ご夫妻。
ほんとに不思議。 Miraz以来、彼らには毎日のように出会う。
この後、なんと、フェニステーレでも再会したのだ。
何かご縁があるに違いない。
クリストフは今日のお昼のバスで空港へ行く。
私とウリは、昨日のミサに出なかったので、今日こそは出席するためカテドラルへ後でいくことにする。
ここで解散し、クリストフのカテドラル観光につきあうことにした。
サンティアゴ様の柩の列と、金ぴかの像の後ろに回ってハグをする列に彼を並ばせる。
そして最後は工事中の「栄光の門」にご案内。
まだミサまで時間があったので、ポストオフィスに、いつかルアルカから送った荷物を取りに行くことにした。
クリストフも一緒に切手を買いに行きたいという。
無事に荷物も受け取り、急いで私も、カテドラルに向かう。
12時からの巡礼のミサはすでに始まっていたが、席を見つけ座った。
こんなに落ち着いてミサに出るのは初めてのことかもしれない。
自然と涙が流れる。
ミサの最後は回りにいる隣人達と握手。
サンティアゴさん、今年もありがとう!
そしてまた巡礼ができますように!!
ここでもまた、イビキのドイツ人ご夫妻に会う。
これだけ度々会うと、うるうるした目で見つめられてしまう。
彼らはドイツ語だけしか話さないから、挨拶しかできないのが残念だ。
ミサが終わり、人々が引き潮のように引いて行くと、私は祭壇に向かって歩き始めた。
そして前の方に、一人で座っていたウリをみつけた。
「ねぇ、見た?ミサでスピーチしたのは、『北の道』を歩いたポーランド人だよ。写
真を撮ったから、後で送ってあげたいな。彼らのアドレスを知っている?」
彼は興奮ぎみだった。
今度はウリにカテドラルを案内。
さっきと同じコースだが、彼は今朝早く目が覚めて、カテドラルに来た。
サンテイティアゴ様の銀の柩の前に立った時、鍵を持った男性が現れ、特別に柩が置いてある狭い部屋の中に入れてくれたのだと言う。
そんなことは滅多にないのではないのではなかろうか。
そして、柩が触れられる距離まできて、彼のお姉さんから託された石を、見えないところにそっと置いてきたのだそうだ。
「これ以上ベストな石の置き場はないね。」
本当だ。
そして、カテドラル前の広場に出ると、
「今度は僕のほたて貝を見せてあげる。最高の場所を見つけたんだ。」
何のことかと思った。
「巡礼中にずっと持っていたほたて貝を、僕だけがわかる場所に置いたんだ。そこは誰にも手が届かない場所。」
案内してくれたのは、オブラドイロ広場にに面するカテドラルの壁。
高さが3メートルほどのところにある窓の枠の上に、まるで置いたように、ほたて貝を投げ入れたのだった。
彼はとっても満足げ。
「今度ここへ来る時には、彼女を連れてきて、それを見せるのが楽しみなんだ。」
「私もまたここへ来ることがあったら、確認してみるね。」
今まで何度か彼女の話は聞いていたが、今日はやけに彼女の話が出てくる。
そろそろ里ごころがついたのだろう。
彼にとってこの巡礼は、ビルバオからの、長いものだったし、感慨深いものだったに違いない。
ウリは、中学校の先生。 英語も数学も国語も教えている。
我慢強く親切、おまけにとびきり明るい。
そして純粋だった。
宿に戻ると、まだクリストフの準備ができていない。
あ〜、のんびり屋さん!!
あせっていているのだろうけれど、そうは見えない。
やっと支度ができたので、総出でお見送りにバス停まで行く。
いよいよドイツに帰るのだ。
彼はお姉さんに宛てたポストカードを、私に投函するよう託した。
お別れをしている間にバスが来て、クリストフは乗り込んでいった。
ちょっぴり寂しそうでもあるけれど、新しい彼の人生のスタートラインに立ち、希望をたくさん抱えて出発である。
手を振りながら、私たちもバスが進む方向へ向かって歩き出した。
角まで行くと、黄色いポストが目に入った。
私はバスが来るタイミングを見計らって、ポストにカードを投函する姿をクリストフに見せた。
遮光ガラスの向こうに、クリストフの笑顔が見えた。
そしてバスは遠ざかって行った。
このあたりは新市街。
地元の人がお昼を食べるような店がたくさんある。
その中の一軒に入った。 ボリュームもすごいがおいしかった!
マリアに電話をすると、ちゃんと早朝のマドリード行きのバスに乗っていた。
「足がね、すごく腫れちゃって、マドリードに帰ったら、病院に直行するわ。 向こうに着いたら電話をするからね!」
どうしちゃったんだろう!?
飲み過ぎて転んだのか?!!??
後でマドリードに行った時、マリアのファミリーに招かれ、ご馳走になった。
その時は、車椅子を妹が押してきた。
モンテ・ド・ゴソを出て、サンティアゴまでの4,4kmの間に、足を痛めたという。
全治4週間。足の指を二本折ったらしい。
「サンティアゴさんは、私にとってはご利益がないわ。でも、来年はバスクを歩いていないから、そこだけ歩きたいの!」
懲りてはいなかった。
宿に戻り、それぞれ思い思いの時間を過ごす。
昼寝をしたり、日記を書いたり。
部屋に鍵は一つしかない。
バラバラに出かけたときは、ドアの前で合い言葉を言おうということになった。
ペラは
「ホンダ!カワサキ!」
と言っている。
「じゃ、『ヤマ』、『カワ』、そして三人目は『サキ』にしよう!」
と私。
三人で練習して、それぞれの用事を足しに外へ出て行く。
最初はウリが床屋を探しに行くという。
ペラも洗濯屋さんに行ってすぐ戻ると言い出ていった。
どちらかが帰ってくるまで、私は外に出られない。
待っていると、ペラがソフィを連れてきた。
あの、フランス人のソフィだ。
「あなたに会いたくてきたのよ。」
そう言われると、邪険にはできない。
でも、私はどうしても今日じゅうに、やりたいことがあった。
それは、本屋でガイドブックを買うことと、以前に行った何度探してみつからないお土産屋を探すこと。
ソフィを連れてすぐに外に出た。 彼女のペースに巻き込まれてはいられない。
まず本屋。ここではいつか歩きたい「ポルトガルの道」のガイドブックを買う。
今までは出ていなかった本だ。 でも、そろそろ出版される頃だと思っていたのだ。
予想は的中。新しい本が出ていた。
ソフィは
「ガイドブックは、使う時に買った方がいいよ。」
確かにそうだ。新しい情報があるから。 でも、私はそれを今買って、いつかのその時まで、楽しみにしたいのだ。
本屋を出ると、あのアフロヘアーの男の子が座っている。
ソフィは彼に声をかけた。
「お姉ちゃんを待っているのね。一緒に行って探さない?」
彼はお姉ちゃんとはぐれたのだった。
心細げな顔をして、私たちにくっついてきた。
今度はお土産屋探し。
これは難しい。
どこの地区だかも覚えていない。でも、一カ所だけ、まだ探索していなかった所があった。
以前泊まっていた宿の方だ。
気に入った手作りの財布を売っている。
それ以来、何度来ても見つからなかった店だ。
ヒーリングのソフィと一緒にいると、なんだか今日こそは見つかる予感がしていた。
でも、あちこち回らせるのは悪いので、待ち合わせ場所を決めて一人で探した。
案の定、店があった!
これでもう、サンティアゴで思い残すことはない。
ソフィとアフロヘアーの彼とでカテドラル前の広場に行く。
ソフィがパラドールのトイレを使っている間、彼と話をする。
「今夜出発なんだ。」
ここに居れば会えるかもしれない。
ここでまた、マックス6人衆に出会った。
こちらのドイツ人の女性の名前もソフィと言う。 彼女とは、あまり話をしたことがなかったが、
「これから食事に一緒に行かない!?」
「うん、ウリとペラも一緒に行くかもしれない・・・・。」
フレンチのソフィが戻ってきてこう呟く。
「この道じゃ、会いたい人にも出会えるけど、会いたくない人にも出会っちゃう。」
マックスたちのことを言っているようだ。
私は、ウリたちが待っているから行くね!と、この場を去った。
ソフィも、私と同じく明日から、フェニステーレへ向かって歩くと言っている。 向こうで会えるだろう。
しかし、この後二度と彼女に会うことはなかった。
彼女は好きな人に再会できたのだろうか?
アフロヘアーの彼はお姉ちゃんに会えて、無事に国へ帰ったのだろうか?
部屋に戻ると、二人は本を読んだり、写
真の整理をしたり、すぐに食事に行く雰囲気ではない。
「ドイツのソフィたちが一緒にごはんを食べようって言っていたよ。」
返事が聞こえない。
私も明日の出発の準備をはじめた。
明日から、フェニステーレにに向かって歩き出す。
できればムシアにも行きたいので、片道120kmの旅となる。
ウリは朝のバスで空港へ行き、ドイツに帰る。
ペラはもう一日滞在して、バスでフェニステーレまで日帰り旅行。
飛行機のチケットを取る際、計算をしたより早くサンティアゴに着いてしまったので、3日間滞在することになってしまったため、もう一晩サンティアゴに残るのだった。
そこへ、ちあきちゃんがやってきた。
明日のフェニステーレ行きの打ち合わせをするためだ。
そして、明日は8時半に出発と決めて帰っていった。
そうだ、まだ余っているメディアに、二人の動画を撮ろう。
「ウリ、カメラに向かって、何でもいいから喋ってよ。」
ウリははっきりとした英語で話す。 さすがに英語の先生。
カメラ目線で、完結に話してくれた。
次はペラの番。
「カタルーニャ語で話してみて。」
初めて聞いた、ペラのカタラン。
なんだか新鮮な響きだ。
ウリが、次は英語で話せと催促する。
ペラは頭をかきむしり、唸り始めた。
「う〜ん、う〜ん、ニンテンドー、ニンテンドー。」
と自分の頭を叩く。
私がスペイン語の単語を忘れて唸っている時に彼は
「フジツー、フジツー、、、」
最初は、何のことかわからなかった。
「私のパソコンははマッキントッシュなんだけど。」
と言えば、
「マッキントッシュ、マッキントッシュ!」
と声をかける。
これは、頭の中のコンピューターを接続するおまじないだった。
長い間、ニンテンドーが接続されなかったが、とうとう喋り出した。
なかなか長くて立派なそのスピーチを聞きながら、みんなで大笑い。
この部屋の中でだいぶ盛り上がってしまった。
さあ、これから本当の、「最後の晩餐」にでかけよう。
今夜は、私が以前によく利用したオスタル(安宿)の近くへ行ってみよう。
こちらはぐっと静かだった。
ハムやサラミの盛り合わせ、ミックスサラダ、トルティーヤ(ポテトオムレツ)チュピロネス(小イカ)、お肉。
三人でも食べきれないほどのご馳走がテーブルの上に並んだ。
サラダには、大きなアスパラガスが二本並んで乗っている。
食いしん坊としては、ついそこに目がいってしまう。
三人なのに二本しかないのだ。
どうしよう!? 悩んで(?)いると、迷わずウリが1本を自分の皿に取った。
ペラは二本しかなかったことを知っているようで、私にすすめてくれる。
「ペラが食べなよ。」
私はそう言って、ペラの皿に乗せた。
するとペラはそれを半分に切り、頭の方を私の皿に置いてくれた。
そんな気遣いをしてくれるのが、ペラであり、スペイン人である。
しんみりと、思い出を語り合った。
そして私は二人に感謝の気持ちを伝えた。
「二年前の『北の道』は、とても景色が良くて素晴らしいものだったけど、サンティアゴに着いても、満足できなかったの。何かが足りなかった・・・・。今回、マリアやペラやウリ、クリストフに会えて、その足りなかったものが埋められたの。ありがとう!」
ウリは言う。
「昨日ドイツで待っている彼女と電話で話したら、受話器の向こうで泣いていたんだ。今度来る時は彼女を絶対に連れてくるよ。そしてペラとHiromiと、もし休みが合えば、来年また一緒に歩きたいな。」
デザートは、タルタ・デ・サンティアゴと、タルタ・デ・ケソ(チーズケーキ)。
仲良くわけあって食べた。
お勘定になり、それぞれが支払うと、ペラがカードで払い、今払ったお金を丸ごと返してくれる。
「これはHiromiに、これはウリに。」
えっ?おごってくれる?なんで?そんなの悪いよ。
宿に帰る前に遠回りをして、カテドラル前のオブラドイロ広場を通
ることにした。 ペラに、あの特別なほたて貝の場所を見せるためだ。
いつかまた、このメンバーで、これを確かめに来れたらいいな。
窓から漏れる街灯だけが頼りの薄暗い部屋に戻り、私とウリは、いま一度、ペラにお礼を言った。
「もう一度、ありがとう!」
するとペラは、たどたどしい英語でこう言った。
「僕と一緒にいてくれて、ありがとう!」
2006年、フランスとの国境、Irunから始まった、私の『北の道』がようやく完結した。
2008年8月25日 サンティアゴ・デ・コンポステーラにて。


















二週間お世話になった杖(枝?)
カセレスからやってきたアントニオ
幻想的な修道院
「なんちゃって巡礼隊」
Barのおじさんとおねえさん
エスメラルダの黄色い背中
エスメラルダ
エスメラルダとペラ
プルペリア(タコ専門店)
ダニエルおじいちゃんとキャロル
汚れた床は、大繁盛の証拠
たこのファミリー(仕事が終ってお食事中)
私営巡礼宿
ウリとクリストフ
真ん中がマリアと右の二人がカップル
クリストフ作‥ワインとパスタ
お昼ごはん
オルッホのケーキ
ペラとウリ
こんな細い枝にカメラを固定できるのか?
モンテ・ド・ゴソの「歓喜の丘」に立つ
モンテ・ド・ゴソの巡礼宿
氷で足を冷やすペラ
巡礼宿の中(ウリ)
消灯後は一人で読書(ペラ)
日本語だけではなく、ドイツ語も、相当変な訳が書いてあるらしい。
Santiago』の標識を写
す
もうすぐカテドラル(左から、ウリ、クリストフ、ペラ)
もうこの場に座って動かない・・・
やっとオブラドイロ広場に到着!
カテドラル前で記念撮影
ヘスースおじさんです
宿の部屋から見た風景
部屋から顔を出すウリ
マックス六人衆と再会
左から、サムエル、マックス、ゴマ
キャロルはここでお別
れ
キャロルとクリストフ
アラゴンの道で別
れて二週間、ヌノとエルネストに再会
巡礼オフィスにて
イタリアの早足三人組。どれがダニエレなんだか?
フランスのソフィ
左手前はクリストフの友人、奥がちあきちゃん
夜のカテドラル
アイスクリーム
いびきのドイツ人ご夫妻
チュロス・コン・チョコラテ
カテドラルのミサ
さようなら、クリストフ
新市街で昼食
「最後の晩餐」