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水底のマリア−前編−
written by Miyabi KAWAMURA
2007/0114


 



 かくん、と力の抜けた身体から、深くへ穿っていた自身を引き抜く。

意識はもう無い筈なのに、達したばかりの柔らかな内襞は、擦られる感触に反応して細かに震えていた。
余韻の快楽に耐えると、ディーノは大きく息をついた。

身体の下に抱いた相手の額には、汗で黒い髪が張り付いている。重なる肌は湿り気を帯びて、未だとても熱い。


「……?」


滑らかな肌の上に幾度目かのキスをしたその時、寝室のドアの向こうに、腹心の部下の気配を感じて、ディーノは身体を起こした。
……こんな時刻、こんな状況にあるときに、ボスであるディーノに伝えなければならない用件ならば、間違いなく重要度は高い筈だ。早急に事態を把握する為、動くべきだろうが、しかし……。


ディーノは一度、雲雀の顔を見た。
墨の入った左手で、細い顎を捉えると、唇を重ねる。



肌蹴てしまった毛布を肩まで掛けてやり、立ち上がった時にはもう、思考は完全に、切り替わっていた。







 全てが片付き部屋に戻れたのは、数時間を経た後だった。

 月曜の、朝。
並盛に滞在するときに最上階とその下のフロアを貸し切る事にしているこのホテルは、館内の採光に工夫を凝らしていて、どのフロアの廊下も、窓から入る光で明るい。快晴である今朝はそれが尚更だった。
結局徹夜になってしまったディーノにしてみれば、その明るさは些か眩しく感じられたが、しかしそれでも天気が良ければ悪い気持ちはしない。

 並盛中では風紀委員による遅刻者の取り締まりが厳しく、特に週の初めは委員長が直々に指揮をしているから余計に怖い、と、以前ディーノに零したのは未来のボンゴレ十代目だった。

もう、午前九時を回っている。
件の取締りを行う為に、雲雀は帰ってしまっているだろう。

そう判断して、ディーノは部屋の前に立っていた護衛の一人に、欠伸をしながら「しばらく起こすな」と声を掛たのだが、逆に「まだ中に……、」と告げられて、思わず扉に伸ばした手が止まった。
こんな時刻まで雲雀が帰らずにいるとは思わなくて、正直意外だったのだが、部屋に入り中の状況を目にして、ディーノは納得した。



 雲雀は、眠っていた。



 部屋の中央に据えられたソファの上で、微かな寝息を立てている。

おそらく、本人は定刻通りにホテルを出、登校するつもりだったのだろう。制服を身に着けているし、ソファ横のローテーブルには、風紀委員の腕章が付いた学ランの上着が置かれている。
起きる気配を見せない相手に近付くと、ディーノは雲雀の横に腰を下ろした。
手を伸ばし、黒髪に触れた指が頬を掠めた瞬間、薄い瞼が揺れたが、やはり目を覚ましそうにない。
それを見て、ディーノは苦笑した。


 昨夜、無理をさせた自覚は、十分にあった。
久しぶりに抱く身体に負担を掛けたくないからと告げて、敏感な肌の隅々にまで触れた。離れていた間に頑なになってしまっていた雲雀の内側を、充分に柔らかくなるまで指で愛撫していた途中には、堪えきれなくなった相手が欲を吐き出してしまわない様に、その根元を握った指で戒めた。

最初は息を詰めて堪えていた身体が次第に蕩け、声を零していく様子に煽られない訳が無く。

雲雀が意識を手放すまで続けてしまった行為が終わったその直後、本国から舞い込んできた数件の問題を片付ける為にディーノは雲雀を残して、部屋を後にしたのだ。


「……、ん・・」


ようやく傍にいる人の気配に気付いたのか、その時、雲雀の吐息が微かに乱れた。
どうせ目を覚ますなら、と思い、ディーノは唇を寄せた。
急速に眠りの淵から浮上しようとしている相手が苦しくない様に、掠めるだけの口付けをして離れると、名前を呼ぶ。
身じろぎに合わせて自分に当たった雲雀の右腕を取る。

恭弥、と重ねて呼ぶと、黒い眸がゆっくりと開かれた。

一瞬彷徨った視線が、ディーノを捉えて眇められる。

「目、覚めたか?」
「……何時、今」
「並盛の登校時間なら、とっくに過ぎてる」

耳にした言葉に、雲雀の眉が寄る。
……が、睡魔は余程手強いのか、冗談じゃない、と呟くと、雲雀は眠気を振り払う様に、左手で目を擦った。

「どうせもう遅刻だろ。寝直してけよ」

基本的に目覚めの良い雲雀が見せる珍しい仕草に、ディーノは口を開いた。
言いながら掴んでいた雲雀の右手を離すと、それはぱたん、とソファの上に落ちてしまう。不思議に思い、触れた指先を握るが、どうやら雲雀の右手は痺れてしまっている様だった。
いくら雲雀が小柄で、大きめのソファで眠っていたといっても、自由に寝返りを打てるだけの広さは流石に無い。右半身をやや下にしていたので痺れてしまったのだろうが、痺れを取ろうと雲雀が何度か手首を動かしているのを見遣って、ディーノは溜息をついた。

「そんなに眠かったなら」

ソファに横たわったままの相手に、上体を倒して覆い被さる。

「こんなとこじゃなくて、ベッドで寝りゃ良かっただろ」
「……あんな所で寝れる訳ない」

ディーノの言葉は全くの正論。なのに、雲雀はぷいと横を向いてしまった。

「? 何でだよ」
「別に。……そんな事より、早くどいてくれない」

すげ無く戻ってきた雲雀の声は、少し語尾が掠れていた。
寝起きなのだから当たり前かもしれないが、昨夜、あれだけ抱いた後だ。
咽喉の為には、寝直させるにしろ並盛中まで送るにしろ、その前に水を飲ませた方が良いかもしれない、と思ったところで、ふとディーノの頭にある事が浮かんだ。

「ねえ。重いんだけど?」

自分の上から退くどころか、逆に体重を掛けてきた相手に向かって、雲雀が口を開く。……が、押し返そうと肩に当てられた手首を逆に掴んでやると、刹那、雲雀の身体が僅かに反応した。
それに気付いて、ディーノは小さく微笑う。……どうやら、「当たり」だ。


「もしかして、……思い出したらヤバい、とか考えた?」


雲雀の耳元で囁いて、耳朶に舌先を伸ばす。


「……っ、なに」
「一人じゃ、戻れなかったんだろ」

恭弥、と、名前を呼んで耳のすぐ下に唇を押し当てる。
そこには、昨夜付けた痕が残っていた。……此処から首筋を通り、鎖骨を齧るまでの間ずっと自身を弄られ続けて、昨夜、雲雀は幾度も身体を跳ねさせていた。その時の事を思い出してしまうのだろう、自分の下で息を詰める相手に応えて、ディーノは雲雀の身体に掌を沿わせた。
制服の白いシャツ越しに、一気に上がった体温が感じられる。


「オレと、……してた所に戻って、一人でシたくなったら辛いから」
「違……っ、ぅ」
「……嘘つきだな」


わざと昨夜と同じ所を辿り、布の上から、胸元の飾りに舌を這わせる。

「……っ!!」

そこを噛んでやると、雲雀の脚がびくんと震えた。ディーノの身体に、緩く固さを持ち始めた雲雀の中心が当たる。掌でそこに触れ、押すようにすると、びく、びく、と雲雀の上体が反応した。

「やっ……、だ!!」

その時、意外な程強い力で肩を掴まれて、ディーノは雲雀の顔を見た。
……ゆるゆると体温を上げていく快感に揺らいだ目元は赤く染まっていて、我慢する事の方が難しいだろうに、黒い眸に浮かぶ色は、それ以外にも何かを伝えたそうに見える。

 一度身体を起こすと、ディーノは雲雀の両頬を掌で包んだ。
昨夜の相手の様子を思い出して、思案する。……あれだけ啼かせ、開かせた身体の奥には、まだ見た目以上に負担が残っているのだろう。その性格や戦闘能力の高さから失念しがちだが、雲雀の身体は未だ成長過程にあるのだ。間を置かずの酷使には、本人の気持ちよりも身体が付いていかないのかもしれない。

かといって、煽ってしまった身体をこのまま放り出すなど、出来る訳が無かった。
それでは雲雀も辛いだろうし、ディーノの中にも常に有るのだ。



……触れていたい、と想う気持ちは。



「んん……っ!!!」

突然、シャツの裾を下衣から引き抜かれ、雲雀が声を漏らした。
ベルトが抜かれ、ディーノの指が下衣のボタンに掛かった瞬間、それ以上の行為を阻止しようと動くが、狭いソファの上では、体格差もあり身じろぐ程度しか出来ない。
自分を睨む黒い眸に苦笑したが、ディーノは手を止めなかった。
雲雀の制服の前を寛げ、下着と一緒に、膝の辺りまで引き下ろす。

「……ぁ、っく」

固くなった部分が布に擦られ、雲雀の腰が跳ねる。
ディーノは、雲雀の先端に滲んだ透明な液を撫で取ると、自分の指に馴染ませてから、雲雀自身に触れた。

「お前が嫌がる事は、しねーから」

だから、大人しくしてろよ。


耳元でそう囁いて、ディーノはゆっくりと、雲雀の身体に顔を伏せた。


>>後編
※後編は接触度高め故、R15とさせて頂きます



 
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