水底のマリア−後編−
written by Miyabi KAWAMURA
2007/0118
(ディノヒバ接触度が高め故、R15とさせて頂きます)
跳ねる身体を抑える為に掴んだ腰骨の鋭角さを掌で感じ、抱いている身体が華奢である事に、改めて気付かされる。
平坦で柔らかな下腹部に口付け、指であやす様に触れている中心に息を吹きかけると、先端に溜まっていた液が流れ落ちた。
「うぁ……っ」
蜜をこぼす小さな孔を強く擦ると、他人の手に触れられる事に慣れない部分は途端に充血する。その様を間近に見ても、嫌悪感など感じない。むしろ、敏感な反応を返す身体をもっと啼かせたいという気持ちが強くて、ディーノは顔を寄せた。
最初から、喉奥深くまで銜え込む。
肉塊に纏わり付く粘液を舐め取りながら、舌と唇で食む様に刺激して先端に口付ける。
「や・・っ!! ァ、あっ!!」
一番弱い所を咥えて甘噛みし、押し当てた舌で抉る様にしてから吸うと、再び溢れ出したものは、ディーノの口腔でくちゅりと音を立てた。
濡れそぼる部分を追い立て液を飲み込み、それを何度も繰り返す。
雲雀の身体はディーノの下で幾度も跳ねる。……が、それは既に、無理に引き出される快感から逃げる為のものではなくなっていた。
「っ、んん、……っ」
先刻、行為を止めさせようとしてディーノの肩を掴んだのと同じ手で、雲雀は自分の口元を覆った。ぎゅっと目を閉じ、漏れる声を耐える事で、腰の奥に溜まる熱を遣り過ごそうとする。けれど反して、投げ出されたままになっていた脚は、もどかしげに膝を揺らしていた。ソファの上に二人で居るのだ、もとより逃げる場所は無い。挙句、掴まれた腰で下肢は固定されている。不自由にしか動かない身体では、快楽を紛らわす事も出来なかった。
一旦、含んでいた肉塊を解放すると、ディーノは自分の唇と、雲雀自身との間に引いた糸を指先で拭いた。
透明な先走りに混ざった唾液。ぬるりとしたそれにまみれて立ち上がり、欲を溜め込んで震えている箇所。……数ヶ月前、初めて触れたときからひどく敏感だったそこは、快楽を追うことを覚えてからは、与えられる刺激に従順だった。
しかしだからといって、雲雀の理性はその状況を認める気は無いらしい。
「もう、離……っ・・」
乱れた呼吸を押さえ込み、視界に入った金色の髪を掴む。
下肢からディーノを遠ざけようとすると、逆にそれを咎める様に、先端に息を吹き掛けられた。
「……ッ!!」
指や口で、直接されるのとは異なる緩い快感が走る。
ディーノの見ている前で、ひくついた雲雀の先端が粘液を溢れさせた。
「は、……、んぅ」
「指、離せ」
恭弥、と。
囁かれた名前と一緒に吐き出された息が当たるだけでも、蕩けた身体は堪らない。
ディーノの髪に絡んでいた雲雀の指が、ぬるい刺激に焦れて動いた。
ディーノを引き剥がしたいのか引き寄せたいのか、明確には分らない仕草。……震えて濡れている所は、確実にもどかしさを訴えているのだろうに。
舌先を尖らせると、ディーノは立ち上がった雲雀の裏筋に沿わせる様にして動かした。途端、大きく跳ねた下肢をより強く抑える。
流れ落ちてきた粘液を受け止め、根元の柔らかな部分を口腔に含んで噛んだ。そうしながら握りこんだ指で先端を強く扱くと、雲雀の下肢から絶え間なく水音が生まれる。
「……ッイ、ディーノッ」
呼ばれ、雲雀を銜えたまま目だけを上げる。けれど、ディーノはすぐに視線を組み敷いた身体に戻した。首を傾け、固くなったところを横から齧る様にして、また舐める。
溢れ出す端から蜜を吸い、全体を口腔で覆うと、ゆっくりと頭を動かした。
濡れた柔らかな粘膜で、包み込んだ肉塊を嬲る。
開放を促す様に、幾度も小さな孔を舌で擽り抉って、吸う行為を繰り返した。
「ぅ、んんっ、……ッ!」
雲雀の下腹部が引き攣る。
「ィッ……、ぁあ!!」
煽られるままに息を詰めた瞬間、熟れきった先端が弾けた。
口腔内で跳ねた肉塊の根元を押さえると、ディーノは喉奥に吐き出された粘液を飲み込んでいく。
「……ッ、、ぅ」
喉を鳴らして飲み下すと、その舌と口腔の蠢動に反応した雲雀はまた震えて、新たな蜜を溢れさせた。
唇の端から伝った白濁が雲雀の下肢を汚すのを見て、ディーノは浅い息を零す身体の秘所にまで舌を這わせ、清める。
「……ッ、−ノ」
舐め取った全てを嚥下して、ディーノは身体を起こした。
無意識の内に自分の名前を呼ぶ雲雀の眦に浮かんだ涙を見て、苦笑する。
……確かに身体を開かせこそはしなかったが、こと雲雀に関しては、自分の中の箍は時折その効きを弱くしてしまうのだ。
唇の端と、そして掌に付いた白濁の残りを適当に舐め取ると立ち上がった。
続き部屋になっている寝室から戻ってきたとき、ディーノはブランケットを手に持っていた。
雲雀の背に腕を回して抱き起こす。
制服のシャツは、薄らと汗ばみ、すっかり皺になってしまっていた。
細い肢体の、一番弱いところだけを弄られていた間、雲雀がどれだけ身体に熱を溜め込んでいたのかが知れる。
自分に凭れ掛からせた脱力した身体を、ディーノは広げたブランケットで包み、抱き締めた。
「……」
一瞬息を止めた雲雀はしかし、吐息をつくと、ゆっくりと身体の力を抜いていく。
恭弥、と呼ばれて目を上げると、唇同士が軽く触れた。……たった今まで、好き勝手に自分を弄っていたそれに噛み付いてやろうかとも思ったが、脱力しきった身体の所為にして見逃すことにする。
ちゅく、ちゅく、と、雲雀の舌に触れるディーノそれには、未だ苦味に似た独特の匂いが残っていた。
その原因は、明らかに淫らだ。……ディーノに飲み下されたときの感覚が嫌でも思い出されて、雲雀の身体に甘い疼きが走る。が、それに気付いても、ディーノは敢えて、雲雀に触れようとはしなかった。
限界まで啼かせてみたいという気持ちと、ただ大切に扱いたいという相反する両方の欲は、いつも同時に胸の内に有る。けれど、今は抱き締めていたいという気持ちが勝った。
「お前、体温高いな。……子供だからか」
「……殺されたいの?」
息を継ぐ間に、ディーノが腕に抱いた温かいものは、可愛げの無い事を言った。
唇から頬、眦まで、薄いつくりの皮膚の温度を確かめる様に触れていくディーノの手を伏せた目で見遣る。
普段、きつい位に強い意志を篭めた目でひとを真正面から見るくせに、雲雀は時々、ディーノの方を見ようとしない。
「あなたの所為で、一日の予定が狂った」
あたまにくる、と、表面だけ見れば咎める意味の言葉。
しかし、その声音に含まれている感情は、多分否定や嫌悪では無い筈で。
微笑うと、ディーノは雲雀の黒い髪を柔らかく撫でた。
琥珀色の視線の先、雲雀の細い肩越しに、カーテンが空調を受けて微かに揺れているのが見える。
窓から差し込む陽光がそれで婉んで、影を創り出していた。
薄い色の、薄い布地越しに生まれる影。
ゆら、と揺れるそれは、潜った水の中から、光差す水面を見上げたときに映る波紋に似ていた。
「……だから今日は、僕に付き合って」
まるで、あたたかな水の底に居る様な。
二人きりの部屋の中で受ける、宣告。
物騒でいて我儘な甘い言葉は、ひどく心地よくディーノの耳に届いた。
>>fin.
and
more...?
(悲恋故、閲覧注意)
□Back□
|