ゆがみ、歪む
(それでも、この恋だけは)
written by Miyabi KAWAMURA
2008/1001
ファミリー間で結ばれる同盟というものは、武器であると同時に盾であり、そして何よりも枷であると、キャバッローネの跳ね馬は思っている。
その存在によってもたらされる、非恒久的な安定。決して無くなることのない軋轢を、同盟という枠に固めて築く礎。それに拠る見返りとして不自由に縛られているのは、なにもキャバッローネだけではない。他の数多のファミリーは勿論、大ボンゴレですらも、決して例外ではないのだ。……そしてだからこそ、ひとときの平安を得るために見逃してきた多大なる「歪み」の代償、もしくは清算だと言わんばかりに、時として信じられないような出来事が起こることもある。
――そう、例えば。
突然にディーノに与えられた、この「十日間の猶予」もまた、その悪趣味めいた奇跡のひとつだと言えた。
キシ、と、革鞭が擦れる音が響く。しかしどれだけ相手が暴れたところで、ディーノには、両腕を戒める為に巻き付けたそれを解いてやるつもりは無かった。
相手が身じろぐたびに、踝(くるぶし)の骨の固さが指先にぶつかる。掴み、力ずくで開かせた脚。思っていたよりも尚細い獲物の――雲雀の足首を掌に捕らえたまま、ディーノは腰を揺らした。
乱れた呼吸を隠すことは最早出来なくても、声だけは絶対に出したくないのか、雲雀は行為の初めからずっと、唇を噛んで頑なに顔を背けている。その、如何にも彼らしい反応に、ディーノは心の内で苦笑した。
自分にとって、おそらく最初で最後の教え子になる少年は、ひたすらに気が強くプライドも高い。どんな方法を取られたにせよ、何者かに負けることも屈することも、認められないのだろう。確かにそれは、悪い傾向ではない。むしろ、孤高であれと求められた、ボンゴレの雲の守護者に相応しい資質であると思われた。……けれど、今雲雀が置かれている状況に於いてのそれは、不幸なことに逆効果なのだ。彼が見せる仕草や表情の全てが、ディーノの欲情を煽る材料にしかならない。
雲雀の中の浅い場所で遊ばせていた自身を引き抜くと、ディーノは雲雀の足首を掴んでいた手を膝裏へと滑らせた。そのまま力を篭めて押し上げると、隠された場所は、簡単に露わになる。
「……っ」
雲雀の唇から漏れた息に気付いて、ディーノは目を眇めた。
「――恭弥?」
問いながら、しかしディーノは動きを続けた。固く張り詰めた切っ先を雲雀にあてがい、体重を乗せていく。先端を沈み込ませた刹那、掴んでいた膝裏から震えが伝わった。
穿つ身体と、穿たれた身体。隙間なく触れ合ったそこから生まれる鈍く濡れた擦過感が、どうしようもなく気持ちがいい。一度息を詰めた後、ディーノは雲雀の奥に向かって、真上から抉るように突いた。
「ッ……! ン、ぁっ」
きつく閉じ、拒もうとする内襞を割り裂かれ、黒い目が見開かれた。
射殺す強さで睨まれて、ディーノの胸の内に湧いたのは後悔よりもむしろ愉悦だ。色付いた眦に涙を滲ませた雲雀の表情なぞ、ディーノ以外に見たことがある者はいないだろう。ひとつずつ、ゆっくりと雲雀を暴いていくことの快感を前に、正常な思考は簡単に負けた。
「ゃ、だ……、……っ」
腰を退き、穿つたびに深くなる交わりを嫌がって、雲雀が身を捩った。動けば余計に中が締まり、自分を犯している肉塊を悦ばせるだけだというのに。
「……っ、暴れるなよ」
自身に絡み噛み付いてくる襞の感触を遣り過ごすと、ディーノは雲雀の大腿を掴み直した。少年らしい骨張った身体の内、柔らかな肉の張った数少ない場所に爪が食い込む。おそらく傷になってしまっているだろうが、後でその上に口付け、新しい痕で隠してやるのも悪くない。
これ以上は無理かと思われる場所で止まると、ディーノは右手を、それまで放置していた雲雀自身へと伸ばした。
「ン、ん……っ!」
指を絡め、きゅ、と握り締めてやった途端、鳶色の目が見詰めている先で先端から雫が滴り落ちる。
「や……っ、ァ、んんッ」
肉塊を扱くたびに、雲雀の身体はびくびくと震えた。頭上で纏められ、革鞭で縛られた両腕を不自由に揺らしている彼は、無理矢理に与えられる快感を堪えるのに精一杯で、自分の声に甘くねだるような響きが混じり始めていることになぞ、気付いてはいないだろう。
指を濡らす雲雀の先走りを舌先で舐めると、ディーノは雲雀の薄い腹部に滴ったそれを、掌で塗り広げた。
「……なあ。もっと、いいだろ?」
「ん……ッ、ぅ」
「恭弥の、一番奥に、入れたい」
「ひ、ぁ……っ」
ディーノを咥え込み、限界まで開かされた雲雀の後孔の淵から、白濁としたものが溢れ出した。――二人きりのこの部屋に雲雀を引き摺り込んでから、何度も中に注いでやったものの名残だ。湿った音を立てるそのぬかるみを使って、切っ先を雲雀の奥尽きに突き立て、殊更にゆっくりと抉っていく。
「ぁ……っ、ぅ、んっ」
「……オレの、全部」
ここに、と、雲雀の下腹部に当てた掌に力を篭め、場所を知らしめるようにしながら言ったディーノの頬骨を伝った汗が、雲雀の肌に落ちて、融けた。
>>後編
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