蘇るドリル戦車!

ミドリ(童友社再版) ジュニアモグラス (デミタス氏作)



製作・撮影:デミタス

 宇宙戦車ファンさんのビッグモグラスギミック再現計画に続いてプラモデルの王国へ届いた改造モグラスはデミタスさんがレストアしたジュニアモグラスです。塗装もバッチリ決っていてカッコイイですネ!原体験の有るオヤヂならずとも、日本が世界に誇るメーカーオリジナルのSFメカ、中でも人気の高いこのモグラスシリーズは魅力的に写るに違いありません。
 無骨な長兄キングモグラス、シリーズ中最高のプロポーションと安定感を持つ次男ビッグモグラスに続く三男が、このジュニアモグラスでした。(この他に発売時期からいくと末弟の四男にあたるウルトラモグラスがありますが、これは今回の童友社再版には入っていませんでした。)そのモグラス4兄弟の中で最も小型で、尚且つパワーソースも他の兄弟が全てモーターライズであったのに較べてゼンマイ動力だったこのジュニアは、当時やはり格が低く見られていたのは否めませんが、あらためてこうして見てみるとチンガード風ドリルスカートからフェンダー、車体に繋がるラインの流麗さやキャタピラ長とトレッド幅の比からくる安定感、胴体カッター回りのデザインの処理など、実はシリーズ中最も洗練されたSFデザイン感覚で構成されている事が判ります。
 デミタスさんの作品はその魅力を余す所無く伝えてくれるすばらしい仕上がりです。
 

製作・撮影:デミタス

 車体中央部分のアップ。オリジナルのコックピットは、尾翼付け根のバルジ(背もたれ部分)とカッター部分の上部カバーで構成されるL字型の平坦な部分にキャノピーを被せただけのカンタンなものです。ミドリ最後期版はキャノピーが赤い着色半透明だった為に内部のがらんどうさが視覚的に緩和されていましたが、童友社再版のこのキットはミドリ初版と同じく、全くの無色透明である為に、最も気にかかるところです。デミタスさんはそのコックピット周りを作りこみ、きちんとドライバーまで搭乗させています。子供の時分にはプラモデルにフィギュアを乗せるか否かで意見が分れたものですが、今回のように「動くモデル」をレストアした場合、無人で走るよりもやはりドライバーが乗っているほうが雰囲気が出ると思うのは筆者だけでしょうか?
 

製作・撮影:デミタス

 「一応スペックとしては、定番タミヤのユニバーサルギヤを使用、手持ちのギヤを組み合わせてドリルとカッターを回転させています。(デミタスさんからのメールの解説文から)」との事。こうしてみると130タイプモーターやユニバーサルギアボックスとの対比から、キット本体が意外に小さなものである事がお分かり頂けるでしょうか。しかも一見車体幅はユニバーサルギアボックスの倍ぐらいはありそうですが、実はその幅が確保されているのはフェンダー部分までで、ギミックの実体の殆どの部分を収める車体部分はドリルの直径よりも狭いのです。
 上の写真で前部起動輪シャフトの切り欠きから覗くオレンジ色の部分(車体内部表面)が、フェンダーのラインに沿ってほぼユニバーサルギアボックスの幅いっぱいぐらいに”キュッ”と絞り込まれているのが判るでしょうか?仲間うちで「将にこのミドリのドリル戦車シリーズレストアの為にこそ存在するようなもの」と評されているタミヤのユニバーサルギアボックスですが、ウォームギアを使ったそのコンパクトさをもってしても、ジュニアモグラスに組み込むのは非常に困難な作業である事は想像に難くありませんね。
 

製作撮影:デミタス

 ドリル、カッターが高速回転する様子です。『山椒は小粒でぴりりと辛い』の諺の様に、掌に乗るほどの可愛いキットながら、こうして再現された可動ギミックを見ると迫力がありますね。
 実はゼンマイ動力であったミドリのオリジナル版では、カッターはワインドアップ用の四角シャフト直結で、ドリル部分も減速されていたので、双方のギミック共にかなりゆっくりとした回転でしたが、モーターライズでレストアされたこのモデルでは、その迫力に一層の磨きがかかっている様です。しかし、ここにもう1つこのモデルの秘密が有ります。それをデミタスさんからの文章で説明すると…。
 「上部カッターは高速回転させたかったため、ウオームギヤではなくクラウンギヤで接続しました。ただし、そのまま手で触ってしまうと非常に危険なため、軸とカッターは接着せず手に触れた場合、空回りするようにしてあります。」
 そうです、カッターの回転は軸に直着けではなく、過負荷によって滑るようになっており、安全面にも配慮してあると言うわけです。こんな所にも長年の経験が生きているんですね。
 

製作撮影:デミタス

 「電源は単5電池2本を内蔵し、後部ノズルに発光ダイオードを仕込みました。」との解説が語る様に、怪しくも内部の強力機関の働きを暗示するようなノズルの発光ギミックです。動きばかりではなくこういった味付けがキットの魅力に厚みを持たせるという好例です。
 

作図:デミタス

 レストアに使用したタミヤ「ユニバーサルギアボックス」は、左右に出たシャフトと前方に突き出たシャフトという構成から、誰でもが「ドリル戦車に使える!」と発想しそうですが、この設計図を見てみるとギアボックス以外に6個のギアが使われている事が判ります。現実はそう簡単にはレストアを許してはくれない様ですが、逆にこういった所がレストアラーの腕の見せ所とも言えるでしょう。
 解説によると「ピニオンギヤ、ミニ4駆ギヤは、軸方向のずれを厚みでカバーするため使用。」とあります。確かにギアボックスやドリル軸などの位置調整に変更余裕度の少ないこのキットのレストアでは、こういった微調整を各所で行う必要が出てきますが、それを厚みの有るギアで吸収するという発想は、一朝一夕の経験では出てこないように思われます。このあたりにもデミタスさんの経験が遺憾なく発揮されているといえそうですね。
   

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