蘇るドリル戦車!

ミドリ(童友社再版) ジュニアモグラス (鈴木みずよん氏作)




 童友社再版のジュニアモグラスレストア報告が続きます。今度は動く戦車オフ会の関連イベントとして開催された特撮写真コンテストで見事金賞、銀賞を獲得して「名人」の称号を獲得し、ミニ四駆モデラーとしても実力を発揮している鈴木みずよんさんのレポートです。
 氏は水中モーターを動力部ユニットとして活用している第一人者で、タミヤが同社オリジナル水中モーター仕様の楽しい工作セット「水陸両用車」発売以前に、マブチ水中モーター版水陸両用車を製作するなど、水中モーターに関しては深い造詣があります。実はこの作例も水中モーターをパワーソースとして使用しているオリジナリティ溢れる作品です。
 何故水中モーターなのか?その答えは単純明快。ズバリ「水中ドリル戦車」としての用兵を想定しているからです!
 まずは完成品全景です。無塗装仕上げで童友社キットのモールドカラーがバッチリ判ります。みずよんさんはこの後塗装計画もあるようで、特段無塗装に拘っているわけではなさそうですが、先に御紹介したデミタスさんの作品とは違ったピュアな感じもまた味があって良いですね。
 

製作・撮影:鈴木みずよん
 

 以下、みずよんさんのメールにあった解説を流用しながら各部を紹介していきます。
 まず何といっても特徴的な動力部回りの紹介です。キットの短い全長に合わせて短縮された水中モーターS1『短縮くん』の様子がわかりますね。
 左の画像は水中モーターを台座に固定し、ウォームその他で駆動輪が回るようになった状態です。水中モーターはネジ1本と、エボキシ接着剤で固定されています。
 

製作・撮影:鈴木みずよん

 同じ部分のアップです。ギアの取りまわしが極限まで凝縮されているのがわかります。「軸受けはギヤが軽く回る位置で瞬着で仮止めし、エボキシ接着剤を流して固定しています。耐久性は考えずにプラパイプやマルチFRPの切れ端を使い、金属部品はネジ、シャフト類だけでした。」との事。 
 

製作・撮影:鈴木みずよん

 次はボディの右半分に駆動ユニットを組み込み、ドリルと カッター用のギヤを固定した状態です。このジュニアモグラスは、実在・SFを問わず通常の戦車とは違って車体は左右張り合わせの設計となっており、それがまたギミック組み込みの難しさを増しています。みずよんさんはその問題を、車体右側をギミック組み込みのベースシェルとして使う事で解決しています。
 ここで動力伝達部分に関するみずよんさんの製作過程の説明を纏めて引用してみます。

 ●カッターはポッチを切り取り、1.5ミリの穴を開けて50Tのギヤと一緒 に2ミリ皿ネジで貫通しています。カッター上部の軸受けはぶかぶかなので3ミリパイプをネジに被せました。
 ●この50Tとモーターからの動力を繋ぐ30Tは斜めになっています。この位置で軸受けを固定しました。このへんは力がかからない部分なので気楽。
 ●ドリル軸受けの部分は、3ミリ、5ミリ、8ミリのプラパイプを重ねて接着 したものを使っています。ドリル軸自体はミニ四駆の中空シャフトです。特に四駆部品にこだわったわけでなく、たまたまパーツケースに転がっていたので、13TはミニF用のハイスピードギヤセットから。切って厚みを半分にして使用。軸受けやらの関係で、ドリルは正規の取り付け位置より4ミリほど前に出ています…けど、ちょっと見わかんないよね(ドリルはプラパイプを内蔵して接着。この軸には差し込むだけです)
 ●S1の軸に先に8T(中空プロペラシャフト付属の紫ピニオン。半分に切って使用)を入れ、さらにウォームギヤを押し込んでます。S1のシャフトにはローレット加工がされてるので、半分刺さってれば平気。スイッチは車体後部を部品ごと外すとS1が見えるので、そこを直接捻ります。スイッチ入れたら部品をまたはめるのね。『短縮くん』はS1の電池ケース部を切り詰めて、単5電池対応にしたものです。ボディの圧力隔壁(?)に穴を開ければなんとか入ります。
 ●モーターのウォームからは16Tのピニオンで受けます。軸受けは台座からマルチFRPを伸ばして固定。その外側に同軸で8Tを装着。
 ●車軸の32Tと8Tの間が開いてしまったので(8Tより大きいギヤだとボディに干渉)、間に動力伝達用の14Tを噛ませました。
 ●で、最後に車軸の32Tです。これを入れるために台座を少々切り欠いた他はボディに変更はありません(当たる所をリューターで削りまくったけど…)。ただ、テスト走行中に動かなくなったのでチェックしたら、このギヤ、6角シャフトをなめちゃってました。スペースの関係で薄く削ったのが敗因のようです。しょうがないんで予備のギヤを同様に加工した後、根元に1ミリの穴をあけて、精密ビスをイモネジ代わりにねじ込んでみました。今の所は大丈夫みたいですけど、あまりハードな遊びには耐えられないかもしれません。そうそう、この付属のホイールは2.5ミリ程度のシャフトが適正なんですが、6角シャフトを使う関係で一度3ミリの穴を掘り、中にプラパイプ(外径3ミリ内径2ミリ)を接着しています。このままだと緩いので細く切ったビニールテープと一緒に押し込んでいます。(ドリルも似たような構造です)
 

製作・撮影:鈴木みずよん

 いよいよスイッチオンです!非力に思いがちな水中モーターですが、これは単5電池1本ではなく、1/3AAニッカドを2本使った状態での撮影らしく、RE140のトルクが遺憾無く発揮されて中々のパワーを出しているようです。
 ここで気になるのが冒頭で述べた水中戦車としての能力ですが、この点もみずよんレポートはしっかりと報告しています。

 「さて、気になる水中行動力ですが(^^; かなり最低でございました。 というのも、ドリルが空器室になってしまい前が浮いてしまうのと、スロープから上陸させようとするとドリルが半分水から出た時点で猛烈に水を巻き上げ、挙動不審になってしまうのです。ミサイルの代わりにフロートをつけて水上を行くか、うんと重くして浮き上がりや挙動不審を押さえるかしないといけないようです。そんなわけで水中戦車と言うよりは、生活防水戦車と呼ぶのがふさわしいようでした。」

 めげるなみずよんさん。これも貴重な開発データであり、次に繋がるかけがえの無い知見です。次はビッグモグラスで水中戦車に挑戦だ!
 

製作・撮影:鈴木みずよん

 今回のオールスターキャスト。このあとネジを3本はずすとボディが分割できます。水中モーターは単5電池用に切り詰めたもので、これだ けでも走ることは走りますが、パワーが欲しいときは右下の黄色い電池、1/3AAニッカドを2本入れます。 短時間ですが、ドリルがタミヤのリューターのような高速回転をしてくれます。でも、壊れるのも早そう。その横の透明の筒は、セル(透明塩ビ)を巻いて作った単5電池用のスぺーサーです。

 冒頭で紹介した素組と変わらぬ外見の中に、これだけの仕掛とノウハウがギッシリと詰め込まれているんですね。ここまで読んだ方は、もう一度初めの画像を見ても、最初に見た時とは全然違ったインプレッションを感じられる事と思います。
 
 ただ、惜しむらくはみずよんさん御愛用のマブチ水中モーターは、1999年をもって製造中止となり、入手可能なものは現在店頭在庫となっているもののみ、という状況にある事です。皆さん、愛する孫子(まごこ)の為にも、お店屋さんで見かけたら買っておいてくださいね。そうはいっても、製造中止になるというのは売れないからで、焦らなくてもまだ充分に模型屋さんで見かけますから御安心を。
 

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