ニットー

1/35  M4−18トン トラクターカーゴ



 日東科学は、1度1960年代中期に1/25スケールの陸上自衛隊61式戦車をリリースしたものの、その後リモコン地雷戦車(簡便なシングルモーターリモコン戦車とバネ仕掛けの地雷を組み込んだトーチカをセットにしたトイ・ライクなキット)を除けば1/76ジオラマシリーズを発表する迄の四半世紀に渡り、所謂普通の戦車というモノを作らなかったメーカーです。これは我国プラモデルメーカーの中堅所としては極めて珍しい選択であったといえます。

 しかし同社は決して精密AFV関連キットを出していなかった訳ではありません。アリゲーター、ウィーゼルといった上陸用舟艇から米軍、独軍のハーフトラック等、明かに「戦車以外の軍用車両をキット化する」という商品戦略の下にキット化された優れたラインナップを提供した素晴らしいメーカーでありました。そんな同社がリリースした戦車以外の精密モデルの一つが、この1/35 M4−18トン トラクターカーゴです。
 これは初版はモーターライズのキットでしたが(パッケージ上段、中段)暫く休止期をはさんだ再版では、純粋なディスプレイキットとしてお目見えしたものです(パッケージ下段)。

 初版パッケージは何とMig-25を威嚇射撃?する自衛隊という実に興味深い緊迫したパッケージですが、中段の再版パッケージでは友軍のセイバーと共に進軍する晴れ晴れとした構図に変わっています。
 その再版時ボックスアートは巨匠小松崎茂氏のもので、最終版の白箱もタッチ(注)からすると同じく小松崎先生の作品ではないかと思います。但し筆者の知る限りでは小松崎先生が背景の無い所謂ホワイトボックスを描き下ろされた例は無く、このパッケージも本体と手前の立ちポーズの兵士のみをトリミングして白箱としたもののようです。とすると、その原版となった背景付き原画があったはずですが、そのようなボックスは現在確認されておりません。
 ニットーのミリタリーキットは当初背景付きモーターライズ版で出されていたものを、ディスプレイ版として再版する時に白箱とした経緯があるので、もしかしたら白箱版と同じ原画(背景付き)で出された最終版モーターライズのM4トラクターカーゴなどというものがあったのか?あるいは新箱用として背景付き原画を依頼したものの、その後白箱ディスプレイキットに企画が変更された為に急遽バックをオミットした…つまり最終版構図で背景付きボックスは遂に幻のものとなってしまったのか?興味は尽きません。

 注:1975年以降の、荒いタッチでダイナミックに仕上げた作風の時期。ニットーやバンダイのミリタリーキットに多く見られる。


資料提供:あうとばぁん氏
資料提供:松井康真氏

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