俺SFメカコンテスト


動く戦車オフ会毎年恒例の俺SFメカコンテスト、2008年のテーマは…
SF装甲車「俺ワイルドキャット」 &
SF装甲車「俺ストロンガー」 だ!

画像提供:助手さん


★SF装甲車「俺ワイルドキャット&俺ストロンガー」コンテスト 参加要領

 ・タミヤの往年のSFプラモデルの名作、SF装甲車「ワイルドキャット」または「ストロンガー」をオマージュ
  して参加者自身が製作したオリジナルSFメカである事。
 ・6輪(ダブルタイヤの場合は12輪)のSF装甲車である事。
 ・自走可能である事。但し6輪全駆動でも、4輪駆動、2輪駆動でも構わない。
 ・武装は自由だが、オリジナルデザインコンセプトに通ずる「心」がある事。
 ・市販キットからの部品流用は自由。
 ・屋内でのデモンストレーション可能であれば、サイズや動力等に関する制約なし。
  (但しシングルレースに出場する場合はそちらのレギュレーションに従います)
 ・400字程度の、作品のバックグラウンドとなる紹介文の添付を推奨。
  (紹介文は任意です。ウェブでの作品紹介時に公開させて頂く事があります)
 

 2001年「俺タイガーキャプテン」、2002年「俺クローラー」、2003年「俺Zライザー」、2004年「俺ジュピター2号」、2005年「俺ロボット戦車」、2006年「俺ガネフ」、2007年「俺バンガード」と歴史を重ねてきた栄光ある「俺JOSFメカコンテスト」ですが、今年はちょっと趣向を変えたテーマ立てとなりました。
 そもそもJOSFメカとは、マンガや映画などの原作に頼らない日本の模型メーカーが独自にデザインしてプラモデル化したオリジナルSF模型の楽しさに敬意を表して始った企画でした。

 そんな中で、十分にJOSFプラモデルの「動き」の資質を持ちながら、何らかの原作をその出自としているという理由からノミネートから外されていたキットがありました。それが今回のテーマとなった「ワイルドキャット」と「ストロンガー」でした。
 毎年のオフ会終了直後のミーティングで次回の俺メカコンテストのテーマ検討会議を参加者全員で行うのですが、2007年のミーティングではこの2つのキットが元々はSFテレビシリーズ「ジョー90」の出演メカであった点が問題となりました。
 しかし議論を重ねた結果、以下のような意見が次々と出されました。

 @キットの独特な走行装置のインパクトは、他ならぬJOSFテイストそのものである。
 ASF装輪装甲車という魅力的なデザインにも拘らず、純粋なJOSFキットには装輪装甲車のキットが殆ど無い。
 B原作ものであっても出自の知名度が低く、当時の多くの子供達はタミヤのオリジナルメカだと信じていた。
  故に、これをテーマとしても原作世界に引きずられる事無く、元キットだけを重視した自由な俺メカ作成は可能。

 その結果、本年度俺SFメカコンテストのテーマとして「ワイルドキャット」と「ストロンガー」が決定されました。
 

★SF装甲車「ワイルドキャット」「ストロンガー」とは?
 1966年に日本で放映されたイギリスのSF番組「サンダーバード」は日本でも大人気となり、イマイのリリースしたプラモデルは空前絶後の大ヒット商品となりました。
 製作者のジェリー・アンダーソンはその後更にビジュアル上のリアリティを高め、ストーリーもやや大人向けに色付けした「キャプテン・スカーレット」を制作し、日本でも1968年1月から放映されました。しかし「キャプテン・スカーレット」はシリアスな脚本がストーリーを難解にし、またリアルな演出が子供には逆に地味に写ったのか、イギリス本国でも日本でも人気はいまひとつパッとしないものでした。

 そこで原点回帰を狙い、子供(ジョー少年)を主人公にして分かりやすいストーリー仕立てとしたSFマリオネーション作品「ジョー90」が制作され、日本では1968年10月から放映されたのです。
 ジェリー・アンダーソン作品のプラモデルとしては何と言ってもイマイのサンダーバードシリーズが有名ですが、そのイマイは「キャプテンスカーレット」のメカで二匹目のドジョウを狙いました。しかし、そのイマイは作品そのものの不人気のあおりをモロに受けて営業的には失敗商品となり、遂に同社は会社更生法を適用するまでの大打撃を受けたのです。

 そんな中で「ジョー90」関連のプラモデルは意外にも田宮模型から発売される事になりました。1969年の事です。
 田宮が原作版権ものの商品を出したのはこれが最初で最後でしたが、「マックスカー(大、小)」、「サムスカー」とともにこの時にリリースされたのが、「ジョー90」のゲストメカであった「ワイルドキャット」と「ストロンガー」でした。
 
★「U59ワイルドキャット」について

画像提供:助手さん

 左の画像は「U59ワイルドキャット」のパッケージ。小松崎茂氏の手になる荒々しいタッチで描かれた迫力ある「ワイルドキャット」の爆走シーンです。
 このシリーズは天下の田宮が満を持して世に送り出そうとしたキャラクター商品でしたが、「ジョー90」も「サンダーバード」のようなブレークに至る事は無く、これもまた営業的には苦しい戦いになったようです。

 その為か先発の「マックスカー(大、小)」と「サムスカー」は「ジョー90シリーズ」として発売されましたが、後発の「ワイルドキャット」と「ストロンガー」は箱絵のバックに小さく「マックスカー」が描かれてはいたものの、パッケージの何処にも「ジョー90」の文字は無く、シリーズ名も「SF装甲車シリーズ」となっています。
 「ワイルドキャット」はその「SF装甲車シリーズ」のbPとしてリリースされましたが、これも当時の子供達がこの二つのSF装甲車を田宮オリジナルメカと錯覚した一因かもしれません。

画像提供:助手さん

 右はその「U59ワイルドキャット」の全景。このモデルは当時タミヤが広告撮影用あるいは販売促進用に作成した完成見本のうちの一つで、田宮オフィシャルモデルと言う意味でも非常に貴重なもの。

 当時の雑誌広告では、迷彩パターンが若干違ったこの個体とは別な完成品を確認できる事から、このオフィシャルモデルは複数個制作されたと思われます。

 1969年といえばまだエアブラシなどは高価で一般の年少モデラーには到底手が届くものではなかった時期でしたが、雑誌広告などでこの明細塗装された作品を見て、そのカッコ良さにシビレた少年達も多い事でしょう。

 「マックスカー(大、小)」と「サムスカー」の金型はその後イマイに売却され、マイナーチェンジを施されてイマイから再版されましたが、「ワイルドキャット」と「ストロンガー」はその後遂に再販されることが無かったのは、実に残念ですね。


画像提供:助手さん
 「U59ワイルドキャット」は第24話『恐怖の爆薬トラック』に登場したゲストメカで、アフリカ某国の道路建設の為に高性能爆薬を輸送する3台のコンボイ(U-58、59、61)の一台です。
1969年10月の田宮の雑誌広告では「動物のサイを思わせるようなボデーに2人の操縦士が乗り危険な爆薬を積んで走るのがこのワイルドキャットです。取りはずしのできる運転室の屋根や分解の出来る車体の下部など面白い設計の装甲車です。」と解説されていました。
 車体側面の”EXPLOSIVES”のマークが如何にも物騒ながら、そのいかつい外見によくマッチしていますね。

 「ワイルドキャット」も「ストロンガー」もキットはシングルタイヤの6輪になっていますが、パッケージに描かれている通りオリジナルモデルは夫々のタイヤはダブルタイヤとなっています。
 この辺りを俺メカ作品で再現するのも楽しいかもしれませんが、そうすると車輪の間隔が大変狭くなり、走行メカの組込みは非常に苦労しそうです。

画像提供:助手さん

 今度は「SF装甲車シリーズ」のbQ「U87ストロンガー」のパッケージです。
 これにもマックスカーがチョイと描かれているものの、「ジョー90」の文字はどこにも記されていません。

 「U87ストロンガー」は第12話『決死のスピードレース』に登場したゲストメカです。
 ジョー少年の所属する世界諜報機構”ウイン”は、それを吸収しようとする世界陸軍情報部との争いに巻き込まれ、双方のいずれが優秀かを賭けたスピードレースが行われる事になりましたが、ジョー90達が乗る「マックスカー」に対抗するべく世界陸軍側が送り込んだのがこの「U87高速装甲車」だったのです。

 ボックスアートは将にこの死闘レースの迫力あるシーンを活写しています。小松崎茂氏の描いたドラマチックなイラストは、当時の子供達に強烈な印象を与えた事でしょう。


画像提供:助手さん
 左はそのキット全景。特徴あるホイールキャップが付いている以外は車体下部は撮影用オリジナルモデルもキットも「ワイルドキャット」と同じものですが、車体上部の形は高速装甲車を謳うだけに非常に洗練されたスマートなものになっています。
 この重量感ある車体の基本設計と、スピード感を感じさせるスマートなボディーの融合が、「ストロンガー」の独特の風貌を生み出しているといえるでしょう。
 力強さとスピード感の絶妙なバランス。これを表現するのが俺ストロンガーに求められるデザインセンスかもしれません。

 パッケージイラストでは車体側面のマークは描かれていないのですが、キットにはイスラエル国旗のダビデの星ような六芒星のマークが入っています。一体どういう経緯でイラストとキットの違いが出来たのか、少々気になるところです。

画像提供:助手さん

 更に別アングルからの一枚。こちらは側面バランスが良く分かるショットです。今から40年も前の完成品とは思えない程良いコンディションで保存されています。

 1969年の雑誌広告では「大きな見とおしの良い運転室にベレー帽をかぶった2人の兵隊が乗っています。車体の後ろに兵隊を入れる大きなスペースがあり横にふくらんだホイルキャップや特徴のあるヘッドライトはダイナミックな装甲車です。」と紹介されています。
 つまり「ストロンガー」は高速兵員輸送装甲車という設定だったんですね。

 この写真では車体上面最後尾の微妙なアールが一目瞭然。その他のディティールも良く分かります。
 基本形は大変シンプルな面取りで構成されているものの、デザインバランスの良さからこれも魅力的なメカになっていますね。


画像提供:助手さん
 さて次は大変気になる走行系メカに迫りましょう。これが「ストロンガー」の走行機構です。
 6輪駆動の為の駆動力伝達の仕組みが良く分かりますね。
 中央のゴムベルトは一見”腹擦りスタック”防止の為のインナーキャタピラーかと思ったのですが、ギアの取り回しの回転方向を考えると、ここはタイヤとは逆方向に回転するようです。
 もっと単純に設計するなら、真ん中の第二ホイールのギアに最前方の車軸と噛み合うトランスファーのギアを接触させれば良いのでは?と思うのですが件のギアは真ん中の車軸のギアとは接触しておらず、例のゴムベルトを介して後軸2輪のギアボックスユニットから回転力を抽出しているのが分かります。
 これは後ろ2輪はその中央ギア軸を中心にシーソー運動でサス機構を実現している為に、第二ホイールの車軸は上下にスィングしてしまい、そこについているギアからは動力を取れない為の苦肉の策といえます。
 更に、シングル走行メカにも拘らずギアの取り回しを左右のどちらか一方だけにせず、同じ回転を丁寧に左右2系統のギアで繋げて安定した走行を意図しているのが流石です。

画像提供:助手さん

 右は「ワイルドキャット」と「ストロンガー」のパッケージサイドに描かれた走行ギミックの解説です。
 当時これを作った事がある方の中には「ワイルドキャット」は中央ゴムベルト方式ではなく車軸左右のプーリーに輪ゴムを掛ける伝達方式ではなかったか?と回想されている方もいらっしゃいますが、この解説からすると「ワイルドキャット」も「ストロンガー」も同じ機構のようで、田宮の輪ゴム方式の動力伝達は「M8グレイハウンド」だけだったようです。

 それにしても何ともユニークなモーターのマウント方法ですね。
 これも車内容積に十分な余裕のあるデザインのなせる業、と言えるでしょう。


画像提供:助手さん
 強力な爆薬をコンパクトにシールドした「ワイルドキャット」と、兵員輸送の為の大型車体を空力的にスマートに纏めた「ストロンガー」の車体設計の違いが良く分かるツーショットです。
 貴方はどちらのメカをオマージュして俺SF装甲車を作りたいと思いましたか?あるいはシャーシの雰囲気やメカ機構をベースに、もっと重武装なオリジナルSF装甲車にチャレンジされるでしょうか?
 色んな構想が湧き上がる、甲乙つけがたい魅力ある二台のSF装甲車ですね。


 パッケージイラスト、キット画像などを紹介して構成した2008年俺SFメカコンテストのページですが、皆さんはどのような印象を持たれたましたか?
 このページによって「是非オイラも俺メカコンテスト作品を作ってみたい!」と思われた方がいらっしゃったら望外の喜びです。
 今年も既に俺SFメカコンテストの戦いは始まっています。

 さぁ、JOSF戦士の皆さん、貴方も是非貴方自身の「俺ワイルドキャット」あるいは「俺ストロンガー」を作り、奮ってコンテストに参加しようではありませんか!!!
 

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