動く戦車オフ会毎年恒例の俺SFメカコンテスト、2011年のテーマは…
さて、それではここでテーマの元となった「ラーテ」に関して、作品制作の参考のために若干説明を致しましょう。 但し毎度の事ながら、作品制作に不必要なほど語ってしまうので、興味の無い方は読み飛ばして下さい。(笑) |
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戦車、それは将に陸上戦艦として生を受けた ローマ時代の戦闘馬車チャリオット、紀元前のアッシリアの攻城用巨大車両、中世ボヘミアの動く車陣「ワーゲンベルク」など、戦史に「戦車」として登場するビークルは少なくありません。しかし近代において真に戦車と呼べるAFV(アーマード・ファイティング・ビークル)は、第一次世界大戦において英国が運用したマークI型をその嚆矢とします。 それは「陸の船」(Landship)と呼ばれ、当時の自走陸上兵器の概念を大幅に超えた、将に陸上戦艦として誕生したのです。 |
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1914年から始った第一次大戦は、やがて塹壕戦による泥沼のような一進一退の膠着状態の様相となりました。 そんな中、フランス国内を「ロシア戦線に送る飲料水タンク」と呼ばれる貨物が列車でひっそりと運ばれていました。そして…。 1916年9月15日、激戦地ソンム平野の朝霧を突いてドイツ軍の前に現れたのは、何十台ものあの「水タンク」だったのです。 小銃弾を跳ね返し、塹壕を乗り越え、時速5.9kmでゴロゴロと進んでくるこの新兵器は、あるものは機関銃を発射し、あるものは57mm海軍砲を撃ちながらドイツ軍陣地を次々と突破したのです。 これこそがイギリスの「陸上軍艦委員会」が開発した新兵器、マークI型戦車の初陣だったのです。 列車砲を除けば当時最大の陸上兵器だった戦車は、登場した時から陸上戦艦の名に恥じない、最強ビークルとしてその後の戦争の様相を変えていったのです。 |
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マーク戦車の登場で一時はパニックに陥ったドイツ軍でしたが、僅か1年後にはマーク戦車に対抗できる独自の戦闘車両を戦場に送り出しました。それはマークI型の28トンを上回る32トンという重量ながら速度、防御力、行動距離などでイギリス戦車を凌いだスーパー戦車だったのです。 その戦車こそ緑の悪魔と恐れられたA7V重戦車でした。 1918年4月24日フランスのブレトネスク村において、A7VはマークI型の改良型であるマークIV型と史上初の対戦車戦闘を行いましたが、これは陸上戦艦同士の砲撃戦とも呼べる戦闘で、彼我の陸のモンスターががっぷり四つに組んだ戦車戦だったのです。 しかし戦車としての性能に勝るA7Vでしたが、経験に勝るイギリス軍の戦いに押されてこの戦闘に勝利する事は出来ず、僅か20両ほどしか作られなかったA7Vは、その後もドイツ軍に最終的な勝利をもたらす事はありませんでした。 |
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時は移って第二次世界大戦。戦車は重量2トン程度の豆戦車から75トンのハンティングタイガーまで様々なサイズのものが実戦に投入されましたが、世界中で陸上戦艦たるマンモス戦車に対する妄信にも似た開発が進められました。 戦車に関しては貧弱な印象しかない我が国でも岩畔豪雄(いわくろひでお)大佐の私的命令で開発に着手された100トン戦車(左イラスト)や、1944年に開発された120トン(一説には140トン)戦車「オイ車」などがあります。前者は車体のみがテストされただけでしたが、後者は終戦直前にほぼ完成し、対ソ戦を想定して満州への移送待ちまで漕ぎ着けていました。 またドイツのマウスは今では実戦出動をした事が分かっています。出動後に故障して戦闘はできなかったようですが、自重188トンのマウスは、実戦投入された最大の戦車といえるでしょう。 |
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このソビエトの1,000トン戦車は、戦艦の25センチ砲を装備して敵のトーチカや戦車を踏み潰す目的で計画されました。 素人考えでも通れる道も渡れる橋もなく、限られた範囲だけで荒野を移動するしかないのでは?と思われますし、時速は7〜8km程度と想定される性能では、”踏み潰される側”の通常サイズの戦車の速度がその4〜5倍になっていた当時、既にその目的の半分は破綻していたともいえます。 しかし、どんな攻撃にも屈せず敵を蹂躙して進撃する無敵戦車という用兵側のイメージには、単に妄想と片付けられない「力に対する人間の素朴な憧れ」がある事が感じられ、かすかな共感を覚えずにはいられません。 |
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そしていよいよ今回の俺SFメカコンテストのテーマである、ドイツの計画戦車「ラーテ」の登場です。 一概に「大きい、大きい。」と言っても、それがどの程度のものかは直感的には分かりにくいので、まずはこの画像を見て下さい。ラーテの全長30mという長さ、14mという幅、そして11mという高さが如何に異様なものかが良く分かるでしょう! |
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それに比べてこのラーテの巨大さは異様で、感覚的にはWTM(ワールドタンクミュージアム)シリーズの1/144サイズの戦車の脇に1/25の戦車を置いて「同じスケールです。」といった感じ…というと戦車模型ファンの方なら納得しやすいでしょうか。 自重1,000トンの戦車といえば先にご紹介したソ連の1,000トン戦車同様限りなく制約を受ける機動力が最大の弱点です。 ラーテは17,000馬力のエンジンで、速度だけは時速40kmを計画していたとも言われていますが、主力戦車のコンセプトとは明らかに違うこの戦車を、ドイツ軍は一体どういう目的で使おうと考えていたのでしょうか? ソ連の1,000トン戦車は第二次世界大戦前の「妄想」で描かれたと言えなくもありませんが、自ら電撃戦で戦車の機動力の意義を実証し、その後の実戦で戦車の長所短所を十分に知り尽くしたはずのドイツ軍が、なぜ大戦末期にこのような怪物を計画したのでしょう。 |
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また自走しない巨砲としては口径実に80cmという超重列車砲グスタフとドーラを実戦運用し、難攻不落といわれたセバストポリ要塞を陥落させています。 この列車砲は専用に敷かれたカーブする複線軌条の上に組み立てられ、カーブのどの位置で射撃するかによって砲撃の方向を決めたもので、総重量は1,350トン。軌条の敷設、本体の運搬組み立て、砲の操作などに5,400人の人員を要し、作戦の開始から砲撃開始まで2ヶ月を費やするという途方も無いものでした。 つまりドイツは既にそれまでに自走する100トンクラスの巨砲も、1,000トンを超える巨砲システムも実戦に投入してそれなりの成果を上げている実績があったわけで、それらの延長線上に実現可能なビジョンとしての1,000トン戦車が生まれたのです。 こうして考えると、防戦一方の戦況の中で、通常の兵器では破壊できない動く要塞を夢見ていたのかもしれません。 |
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話は変わってマンガの世界では、星野之宣の「イワン・デジャヴュの一日」の中にジークフリードという巨大陸上戦艦が出てきますし、近未来戦を描いた「サージャント」という作品では、人間に敵対する戦闘機械軍側のメカとして、砂丘地帯に潜む護衛艦型陸上戦艦が出てきます。 また、寺沢武一の「鴉天狗カブト」にはキャタピラで動く鬼面城が出てきますが、これは法力で飛翔し、溶岩の中も進むという驚きのメカでもありました。 方や目を小説に向けると、明治時代の冒険小説家押川春浪の「海底軍艦」には冒険鉄車という探検車が出てきます。冒険鉄車は長さ22尺、幅13尺、機関は440馬力の特殊鋼製ビークルとの事ですので、大きさも馬力も第二次世界大戦中の平均的中戦車程度ですが、密林を切り開きながら進む表現は大迫力です。これはマークI型戦車が出現する15年以上前(1900年)に書かれた小説とは思えないほど戦車に良く似たコンセプトで、無限軌道でこそないものの12輪の走行装置も魅力的です。 冒険鉄車は陸上戦艦のような大型メカではないのですが、俺ラーテを作る上でイメージを膨らませる参考になるかもしれません。 |
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そんな中でダントツの大きさを誇るのは他かならぬミドリが1969年に発売したウルトラモグラスでしょう。 手元にインストが無いのでボックスサイドの側面図と搭乗員の身長から割り出した全長は何と16m!マウスの約1.8倍の全長としてその3乗をマウスの188トンに掛けると1,096トンとなって1,000トンクラスの戦車となります!!これは意外でしたね。 凄いぞミドリ。凄いぞウルトラモグラス! ちなみにキットも大変大きく、小学生の時分にこれを購入した筆者(動く模型愛好会広報担当)は、たった一つのモーターで走行とギミックを確実にこなすミドリのギミックに大変感動しました。 |
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ウルトラモグラスも大きかったんですが、これはもう抱腹絶倒、何をかいわんやな大きさですね。 こうなるともう比べるものも少ないのですが、軍事基地の窓の高さから概算すると全長40mを越す、ラーテを凌ぐ巨大さです。 余りの迫力に重量の計算は控えさせて頂きますが(笑)、一見陳腐に見えるこのボックスアートながら、純粋に巨大なメカが発するパワーというものは中々侮れないという点は否定できません。 子供の掌に乗る他愛ない小さなプラモデルですが、このパッケージを見た少年にとって、このキットは紛れも無く無敵の巨大メカに映った事でしょう。 実はこれこそが今回我々のテーマである巨大戦車作品が現出させようとしている、巨大なものに対する畏怖と憧れの投影された姿に他なりません。 そう考えると最初は陳腐にも見えたこのメカが魅力あるものに思えてきませんか? |
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さて、今まで紹介させて頂いた色々な巨大戦車の数々、皆様は如何御覧になりましたか。中には作品製作に役立つモチベーションを与えてくれたものもあったでしょうか?「おお、これは!」とインスパイアされた戦車はありましたか? 冷めて考えれば「イイ歳をして巨大戦車を作ろう!でもないだろう。」ともいえる企画ですが、震災の復興もまだ道半ばで、水害も多発し、日本も世界も不況に悩む昨今、浮世を一時忘れた模型趣味も良いものかもしれません。 皆さんの想像力溢れた最強の俺陸上戦艦の作品をお待ちしております。 |