俺SFメカコンテスト


動く戦車オフ会毎年恒例の俺SFメカコンテスト、2016年のテーマは…
「サンダーキャプテン」だ!

コラージュ:テルスター中尉
★「俺サンダーキャプテン」コンテスト 参加要領

 ・アオシマの合体戦車「サンダーキャプテン」をオマージュして、参加者自身が製作したSFメカである事。
 ・自走可能である事。(”動く”戦車オフ会なんで)
 ・「サンダーキャプテン」の最大の特徴である、三角キャタピラの合体戦車を創作して下さい。
 ・先頭車との分離合体は必須とはしませんが、そこが再現できれば高得点が期待できます。
 ・市販キットからの部品流用は自由。
 ・屋内でのデモンストレーションが可能であれば、サイズや動力等に関する制約なし。
 ・オリジナル版の「サンダーキャプテン」による景気付け参加も受け付けています。
  
(俺SFメカコンテストのシール貼付投票はスクラッチ作品のみです。オリジナルキットの参加作品は一般の
   ビジュアル、テクニック、ヒストリカル用の投票用紙で評価して下さい)

 さて、それではここでテーマの元となった合体戦車に関して、作品制作の参考のために若干説明を致しましょう。

 
但し毎度の事ながら、作品制作に不必要なほど語ってしまうので、興味の無い方は読み飛ばして下さい。(笑)
 
アオシマの心 自由奔放なカッコよさ!

サンダーキャプテン最終版。
 青島文化教材社(現アオシマ)の創業者である青島次郎氏が、我が国最初期の民間飛行家であった事は既に2011年の水物オフ会のテーマであった「俺ジュニアセブンコンテスト」のキット紹介で述べましたが、その心は飛行機教材をルーツに持つ同社の超ロングベストセラーキットであった大戦機シリーズで花開き、同社の代表的商品として長く記憶されています。
 しかし同社の最初のプラモデルとは?それは意外にも飛行機ではなく1961年発売のスピードボート「ブルーバード」でした。同じ頃発売された田宮模型の発泡スチロールスピードボートに「ブルーバード2世」というキットがあり、これもフォルムこそ違え細長い船体に水平翼と垂直尾翼という相似な要素を持つものなので、当時のトレンドとしてのそのようなパワーボートが欧米で出ていたのだろうかと思いネットで数千枚の画像を検索ましたが、それらしい実艇は見つけられませんでした。という事は青島の最初のプラモデルは自社オリジナル設計のスピードボートでしょうか。確かに波に打たれたら危険極まりない水平翼を船体に付けるのは実艇にはなさそうな発想です。
 そうだとすれば、このアオシマ最初のキットは充分にサイエンティフィックなフィクションの香り漂う不思議なキットです。
 その後トヨタの自動車シリーズ、戦闘機シリーズ、マスコミキャラクターシリーズなどが続く中に、宇宙ロケット、宇宙探検「ロケットセブン」、ミサイル潜水艦「ゴールデンドラゴン」などJOSFの香りが漂うキットを散発的に発売します。
 そしてJOSF奇跡の年に突入した昭和41年(1966年)月世界パトロールカー「サンダーバード1型」、空想科学ミサイル艇「サンダーセブン」、潜航艇「ジュニアサンダーセブン」、翌1967年に宇宙パトロール銀河隊「サンダースペース」と続き、遂に1968年にこの「サンダーキャプテン」がリリースされました。
 

 

「リモコンサンダーセブン」の梱包状況。

 左はサンダーセブン最後期(1973年発売)の、リモコンビッグSFシリーズとして発売されたサンダーセブン。
 ゴージャスなパッキングボックスと余裕のある梱包で、いやが上にも高級感が漂います。
 リモコンボックスは完成済みで、結線すればこのまま使える親切設計。
 車体後部は、その特徴的なデザインが良く分かるように効果的にレイアウトされていますが、ちょっと考えればこれは側面が見えるように左右入れ違えにパッケージされています。
 その左のゼンマイは先頭車用の動力ですが、先頭車が自走するギミックはサンダーセブンだけで、後のタイガーキャプテンでは先頭車の動力走行はオミットされてしまいました。
 その下にあるのはカッチリと設計された専用のツインモーターギアボックス。これはシャフトと平行に配置された4個二組のギアで構成されていますが、特徴的なのはそのインプットとなる最初のクラウンギアに対して、各モーターは直角ではなく、約10度の傾きをもって接触する設計になっている事です。
 ボックス左下に見えるのがキャタピラですが、このシリーズのキャタピラは肉厚で、可塑性分の配合が丁度良い按配なのか、比較的どの梱包でも、40数年経った今も十分な弾力と強靭性を保っているのが特徴です。

  

「サンダーセブン」の先頭車のプロフィール。

 サンダーセブンと言えば、他に例を見ない縦三角配置のキャタピラと、このキャプテンスカーレットのパトロール車を彷彿とさせる…っつーか、まんまの先頭車。
 色々と版権問題がかまびすしい昨今、ズバリ書いてしまうと問題があるかもしれませんが、だってそうなんだからしょうがないですね。
 名前からして、サンダーなバードと、キャプテンのスカーレットから来ているのは明白ですから、ここは半世紀近く前の事として関係諸氏には温かい目で見守って頂きましょう。
 ただ、まんまパトロールカーの前半分をちょん切っただけかというとそうではなく、御覧のように後部キャタピラカーとの連結時のバランスを考慮し、若干寸詰まり気味にデフォルメされているのが分かるかと思います。
 あとちょっと気になるのがこのパーツの「抜け」。ドアの下部にパーティングラインが見えるので、これはそこで上下に分割された金型である事は一旦明白なのですが、実はこのパーツの側面はほぼ垂直のツライチで、そうだとすると真上に引き上げる上部のメス型で、どうしてドアのナナメに走る凹モールドと、その下の斜めモールドから繋がっている垂直の凹モールドが抜けるのか分かりません。もしかしてここは立体金型か?と思って見ても、他にパーティングラインは無く、オス型を抜いた後で、ちょっと車体側面をつまんで内側に曲げながら成型後のパーツを抜いたものか?などと想像を膨らませてしまいます。どなたかこういったトリッキーな金型テクニックについてご存知の方がいらっしゃいましたら是非御教示を。

 

宇「サンダーキャプテン」のスプロケットホイールと他のキットのホイールの比較。

 今度もちょっと気になる「重箱の隅」な話で恐縮です。
 後述の完成車体全景で確認してほしいパーツの一つに巨大な起動輪(スプロケットホイール)があります。これがまたデカイ。
 比較の為に左に他のキットのホイールと並べた画像を張ってみます。
 左から「サンダーキャプテン」の起動輪。二番目はタミヤの1/35初版「グレイハウンド」 のタイヤ。次はタミヤの1/35III号戦車の誘導輪(アイドラーホイール)。右端は同じくタミヤ1/35のハンティングタイガーに付いていたゴムキャタピラ走行用の(成型色がダークイエローなので再販時のパーツと分かる)起動輪。こうして見ると「サンダーキャプテン」の起動輪が如何に巨大なものか実感して頂けるでしょうか?直径は実測で30mmをわずかに下回るもの。
 何故これが気になったかというと、将に今回のテーマである自作サンダーキャプテンを作るに当たり、足回りで最も目立って「サンダーキャプテン」らしいインプレッションを得る為の大きなポイントだからに他なりません。皆さんはどう対処するのでしょうか?気になる所ではあります。


 

「サンダーキャプテン」の完成品。

 さていよいよ「サンダーキャプテン」の実像に迫ります。右の画像がその完成品になります。
 完成すると全長245mm、全幅121mm、全高102mmという、当時としては巨大なビークルが姿を現します。
 特に後部の箱型車体は、スカスカ感の全くないマッシブな印象を以て見る者に迫ります。
 これほどのサイズと重量感は、ミドリのトーキング戦車「ビクトリー」と、同じくミドリの地中戦車「ウルトラモグラス」ぐらいでしょう。
 同じ青島の「サンダーキャプテン」の弟分「タイガーキャプテン」ですら、これより一回り小さなサイズに纏まっています。
 こうして見ると、キャプテンスカーレットのパトロールカーをパクってモドキ戦車とした、パチものJOSFとしか見ていなかった人も、違和感なくモディファイされて全く新しいカタチを創造した「サンダーキャプテン」というメカの魅力が分かって頂けるでしょうか。これが最前タイトルにした「アオシマの心、自由奔放なカッコよさ」そのものなのです。
 

 

「サンダーキャプテン」の正面。

 恫喝的なと言えば、これほど獰猛な印象を与える正面形を持ったSFプラモがあったでしょうか、と問いたくなる「サンダーキャプテン」のフロントビュー。
 あの未来的でスマートなパトロールカーの前面をして、威圧的な風貌に変貌せしめた「サンダーキャプテン」のショット。
 両腕を体側に沿わせ、頭から突進するが如きスピード感は、いやが上にも「サンダーキャプテン」の突出した戦闘能力を感じさせずにはいません。何だよこのカッコよさは!

 当時の子供たちはこのキットと同じ頃に跳梁跋扈していたパチものプラモと同じ土俵の上でこのプラモデルを見、当然先頭車が「アレ」である事も承知の上で、しかしこの絶対的なカッコよさを是として受け入れる素地があった訳です。
 それが何より証拠には、弟分の「タイガーキャプテン」と共にミニ、ミニミニ、と展開し、再販に再版を重ねた事が挙げられますが、それ以上に、今この文章を書いている私自身が小学生の時分にこのキットと出会い、その後40数年を経った今も「これはアリだ!」と惚れ込んでいる事です。
 私事で申し訳ありませんが、そこまで言い切るのは、決してそれが私一人の思い入れではなく、当時を知る友人たちの何人もが、このキットの、ある意味唯一無二の魅力を今でも肯定しているからに他なりません。

 単に先頭車と後部車体をくっつけたのではなく、接合部分が微妙なラインで合体しているのが良く分かるショットです。
 こういった細部を丁寧にすり合わせて、違和感のない一体感を持っているのも、他の単なるパチキットに甘んじた商品と一線を画す魅力です。子供の頃には気が付かなかったこんなポイントに改めて感動するのも、日本に生まれて幼少期にこのような上質なメーカーオリジナルSFキットに恵まれて幸せな洗脳を受けた我々の稀有な幸運と言えるでしょう。
 嗚呼、僕ぁ幸せだなぁ。

「サンダーキャプテン」の分離合体部分。

 今度は最大のギミックである先頭車の分離合体の実像です。
 先頭車と後部車体は、大型バネの入った2本のシリンダーに後部車体のピストンが入り込む形で接合され、戦闘車のノッチが後部車体の二枚のカギ型プレートに食い込む事でホールドされます。更に、後部車体の真ん中の発射ボタンが押し込まれる事でリリースされる仕掛けになっているのが分かるでしょうか?
 このホールドの時、後部車体の底面部に先頭車の後輪が圧着される事で先頭車の後輪のゼンマイ回転がロックされ、逆に戦闘差車がリリースされて押し出される事でロックが解除されて先頭車はそのままゼンマイ動力で自走する…というギミックになっています。
 更に先頭車のゼンマイ部分はバネで上下するサスペンション機構が組み込まれていて、ホールド時のロックを確実にするとともに、走行時にもサスペンションが効くという作りになっていますが、これほど凝った設計の走行機能は、数多いJOSFキットの中にも見当たりません。
 もう一つ、車体上部の二基の有翼ミサイルは手動発射されますが、その発射レバーは、何と文字通り「発射レバー」の形をしているではありませんか!
 これはメカニズムのリアルさとは全く別次元の発想…これで遊ぶ子供達の、今で言う没入感そのものを狙った造形であり、子供の遊びのビジョンを想定した設計です。
 「サンダーキャプテン」は子供達にとって客観的な夢のメカという対象でありながら、自分が第一人称で遊ぶ主観的なアイテムそのものでもあった訳です。
 
 さて、今まで紹介させて頂いた「サンダーキャプテン」を、皆様は如何御覧になりましたか。JOSF戦車が最も輝いていた時代のスーパーメカに思いを馳せ、皆さんも想像力溢れた力強い「合体戦車」を作ってみようではありませんか。
 

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