8/16 Gondan / 174.5km
8/17 Mondonedo / 160.3km
8/18 Gontan/143.3km

8/16 Gondan / 174.5km

私だって寝坊したい。
二日間寝ていないのだから。
今日は、ここから8.5kmのRibadeoでの橋を渡るという仕事がある。
その先も合わせて、合計30km。
早めに出なければならないというのに、まだ雨が降っている。
このままじっとベッドの中で、雨が上がるのを待とうか。
いや、私はみんなより早く出なければ、どんどん遅れてしまう。
毎日少しでも早く進んで行かなければ。
ずっと地図をめくって見ていくと、先の方で、距離が長くなる。
後で楽をしたい私は、前半距離を稼いで、後でゆとりを持ってみんなを待てばいい。 そう思い直して、気合いを入れて出してベッドをでる。

しかし...外はまだ薄暗く、雨はやまない。
ファビーの馬は、レインコートを着せられて、静かに出番を待っていた。
私は馬に挨拶をして出発。
あーあ。なんでこんな雨の中、歩きに出るわけーーー?
Tapiaに行った人達のことが見えないから、想像するしかない。
せっかく昨日のうちに、遠くのTolまで来たのだから、朝からTapia組に追い越されたくはない。

普段は嫌う舗装路も、雨降る暗い朝はこの方が都合が良い。
道を間違えることはないし、足元もまだ良いから。
でも、靴下はびしょぬれ。このまま歩いて雨が止まなかったら、厳しいことになるだろう。
マメができるだろうし、気持ちも悪い。
足取りは重い。
よけいに疲れる。

どこまでも長い道。
ひたすらまっすぐに進む。
道幅が狭くなって、立ち止まったそのとき、一台の車が止まった。
「このまままっすぐ行くとRibadeoだけど、今、橋を渡れないから、こっちの道を行った方がいいよ。」
振り向くと看板があり、巡礼路は二つに分かれていた。
一方には、馬のファビーが行くと言っていた地名が書いてある。
「船も出ているけど、お昼までないんだよ。行っても待っていなけりゃいけない。どっちにするかは好きずきだけどね。」
親切なおじさんは、そう言い残して行った。

どうしよう!?
そうだ!ダビデとヘスースに電話してみよう。
いくら鳴らしても、二人とも出ない。
歩いている途中なのだろうか。
二人はどちらに行くのだろうか?
何しろ、直前の情報が私にはない。
そして考えあぐねた。
もし、ファビーの行く道へ行くなら、私には地図がない。 その先、どうやって巡礼路に戻るかわからない。
こうなったら、とにかくRibadeoに行ってしまおう!
せっかくのおじさんのアドバイスだったが、自分で選択することが重要だ。

昨日はTolまで来て良かった。
Tapiaだったら、こんなに道は簡単ではなかったはず。
後で知ったことだが、Tapia組はこの日、ほとんどの人が、Ribadeoまでの12kmほどしか歩かなかったのである。
Ribadeoは、滞在するに足りる素晴らしい場所であることは事実だが、実際は、この朝の雨のため、川を渡るのがやっとだったらしい。 でも、Tapiaはきれいな村だったようで、いつかここにもう一度戻ってみたいと思う。

さあ、Ribadeoの手前までやってきた。
大きな港。
巨大な船が停泊している。
私が乗る船はどのくらいの大きさなんだろう。
タクシーなんて、どこから乗ればいいのだ?
人に聞こうにも、誰も歩いていない。
港が見渡せる場所まで来て、大きな川を眺めた。
どうやって渡るのだろうか・・・・・。
聞く人間もいない。

ふと見ると、すぐそばの車に人が乗っているではないか。
「あの〜、船乗り場はどこですか?」
「あっちの方だよ。」
「何時に船は出るんでしょう?」
「よく知らないけど、タクシー探しているのなら、私が運転していくよ。」
なぁ〜んだ、人待ちのタクシーだったのだ。 7ユーロで橋を渡った街の中心まで行ってくれる。

タクシーは橋を渡る。
工事中で、歩行者の往来は禁止されているとのことだった。
うしろめたい気もするが、これは不可抗力である。
あとでダビデとヘスースに、どうやって渡ったか聞いたら、
「僕たちもわからなかったので、とにかく橋のたもとまで行ってみたんだよ。そうしたら、親切な人が車に乗せてくれたんだ。」

雨も上がり、Barで朝食タイム。
これから更に今日は22km先のGondanまで行こう。
そこで電話が鳴った。
ヘスースからだった。
「どうした?だいじょうぶ?Ribadeoに着いたの?」
いつもは早く出発する彼ら。 雨と、ダビデが帰るということで、遅く巡礼宿を出たらしい。 ダビデはこの日、このRibadeoからMadridに帰って行った。
そしてヘスースはここ、Ribadeoに泊まった。

地図を見ると、今日の目的地のGondanには店もBarもレストランもない。
手前にあるのは、Vielaという村。ここに一軒のレストランがある。 到着したのは12時。
今日はここでお昼をしっかり食べなければならない。
しかしランチは13時過ぎから。
仕方ない。Barでジュースを飲みながら待つことにした。

やっと時間になりレストランに入場したが、量 がすごくて三分の一しか食べられない。 デザートもパスしてコーヒー。
いよいよガリシアに入って、人の感じが違う。
慣れないうちは違和感があるが、入ってしまえばやっぱりいい人達だ。
パンもいきなりおいしくなっている。
今日の夕食はどうなるのか。
念のため、Barでポテトチップスを買っておこう。

そして一気に350m高低差の登り。
それを越えたらあと4.5km。
ここでも登ったり下ったり。
朝は雨が降り、Ribadeoの橋を渡ったり、レストランで時間を取られたせいもあり、やっと巡礼宿に辿り着いたのは、もう7時だった。

今日の巡礼宿は、山の中にあった。 そして知らない人ばかり。
現在、過去、未来・・・一日だけ未来の国にやってきたのだ。
私が宿に恐る恐る入ると、この未来の人達は、
「やぁ、いらっしゃ〜い!」
と、フレンドリー。 スペイン人の男ばかりの中に女性が一人入った7人組だった。 紅一点の女性の名はエステル。
彼女は、
「今日は最後まで、アップダウンが激しかったから、大変だったわよね。」
感じの良い美人だった。
「ところで、ベッドはまだある?」
そういう私を二階の部屋に連れていってくれ、場所を空けてくれた。

助かった!ここまで苦労して雨の中も歩いたし、無事に橋も渡ったし、ガリシアにも入って来た甲斐があった!
そして親切な人達。
「僕の名前はダニー、よろしく!この辺りにレストランがないから、近所のBarがデリバリーしてくれて、夕食を頼むんだ、メニューはここにあるから、注文するといいよ。昼間も頼んだけど、おいしかったし。他の連中は、英語を話さないけど、いいヤツばかりだよ。」
英語が話せる彼は、グループを代表してこう聞いてくれた。
なんかおもしろい。
一日違うと、がらっとメンバーが変わり、雰囲気も異なる。

こうやって、だんだんに気が合うものが吸い寄せられてグループになるのが自然だ。 私はまだ、特に誰と仲間という意識はない。
もしかしたら、これからそうなるのかもしれないし、一匹狼で、こうしてあちこちのグループと知り合うのも悪くない。
そして、まだ、一人で歩くのが楽しかった。

シャワーを浴びて、庭でストレッチ。
みんなも、それぞれくつろいでいる。
巡礼宿の庭も広いけれど、借景もなかなか素晴らしい。
いくら大声を出しても、近所迷惑にはならない。

おしゃべりが突然止まった。
ドイツ人のおじさんが、笛を吹き出した。
みんなそれに聴き惚れ、終ると拍手。
この景色に似合っている。
なんて平和な場所なのだろう。

そこへ頼んでおいたBarのデリバリーの車が到着。
美味しい料理がたくさん乗せられていた。 私は軽く、ミックスサラダ、そしてビールを2本。(実はすでに、到着してすぐに1本もらっているので、3本目)
食事は室内のテーブルを囲んで。
ダニーたちは、私と同じAvilesから歩き始めた。
イタリア人が一人、ドイツ人の笛吹きおじさん、美人のカタラン女性エステルと、4人のバレンシアの大きな男達である。
またほかに、中年の男女3人組、ドイツ人3人組などがいた。
食事の後、とても感じが良いイタリア人のレオナルド(青年かも?)が話しかけてきた。
「銀の道」をセビリアから歩いたという。
初めてだ。セビリアから歩いたという人。
それだけで、信頼度がぐっと上がる。
しかし彼は、さすがに健脚。
翌日は40km以上歩いて先に行ってしまい、もう会うことはなかった。

8/17 Mondonedo / 160.3km

睡眠てなんだっけ?
二日続けて眠れなかった私は、「眠い」という感覚を忘れてしまい、昨夜も一睡もできなかった。

今日は今まで余分に歩いてきた貯金(!)がある。
そろそろゆっくり歩こう。
目的地は15km先のMondonedoまで。
みんなRibadeoに、まだいるのだろう。
そうなると、私がいる地点と22kmの差があるが、今日は短い距離にすれば、明日になったら追いついてくるに違いない。
Ribadeoから、今日の私の目的地までは37km。
健脚な人なら、今日にでも、追いついて来るかもしれない。

3kmほど歩くと、昨日夕食をデリバリーしてくれたBarに着いた。
今日はここで朝食を取ろう。
Barには、若いおばさんとそのお母さんらしき人がいて、とても温かい眼差し。
幸せに包まれながら、店を後にする。

途中で、ポーランド人の親子に追い越された。
娘さんは20代、お母さんは50代だろうか。
とても元気で、常に二人はおしゃべりしながら歩く。
休憩する時は、景色の良い場所を選び、リンゴを頬張る。 仲が良い。
その後も追いついたり追い越されたり。

Lourenzaという町には立派な修道院があった。
中には入れないようだったので、外から写真を撮って、珍しくBarにも寄らずに素通 りだ。
北の道には、バスク地方に始まり、カンタブリア、アストゥリアス、そしてガリシアを通 過するが、どこも雨が多い地方であるため、高床式の倉庫がある。
カンタブリア、アストゥリアスのそれは、とても大きく家のよう。
でも、ここガリシアに来ると、細長く、大きさもぐっとコンパクトになる。
今は実際に使われることも少なくなったが、宗教的意味合いをも持つらしい。
毎日のようにみかけるが、今日はその下をくぐることが「道」になっていた。

今日の目的地、Mondonedoは大きな街だった。
街の中心にはカテドラルがある。
巡礼宿はカテドラルから3分ほどの場所にあった。
今日は暑かったので、15kmとは言え、やっと...到着。
一番乗りはポーランドの親子。 私は二番目だった。
昨日初めて会った連中は、まだいない。
きっとここを通り越してもっと先に進んだのだろう。
洗濯を済ませて近所のBarで、まずビール。
ムール貝が出てきた。味が濃くておいしい。
二杯目のビールを注文すると同時に、タコを注文した。
ここのタコは、今まで食べたどこのものより柔らかくておいしかった。

今日は昼寝をしてみよう!
巡礼宿に戻ると、昨日会った中年3人組や、ドイツ人3人組が到着。 みんな疲れきった顔。
もっと先に進むかと思っていたら、ここまでしか来ない。
そして最後にどっと来たのが、例のスペイン人を中心とするダニーの男組。
あれ〜?何でみんなこんなに遅いの?
しかも、40kmも歩いたような顔をしている。
ここでわかったのは、昨日会った一日未来にいた人達は、歩くのが遅く距離も短い。 だから、すぐに追い越す結果となっていくのだった。

私は一番隅のベッドを取った。 ダニーたちがベッドを取った後も、私の上段だけ、たった一つだけまだ空いていた。
この道で、初めての昼寝を試みるとしよう。
うとうとしていると、静かに私の上段のベッドに荷物を置いていた人がいた。
目を開けると・・・・あのヘスースだった!
ダビデと別れて、今日は40km近く歩いてここまで来たのだ。
さすが「銀の道」の人。
ちなみに、昨日初めて会ったレオナルドだけは、この先まで進んで行った。
こちらもさすがに「銀の道」の人。

私はやっと、自分の仲間に会えた気がしてうれしかった。
彼は、ゆっくりシャワーを浴びたり洗濯をしていた。
「また会えて良かったね!」
お互いそう言い合う。
しかしヘスースは、
「明日はもっと歩いて先まで行くかもしれない。」
え〜っ?やっと会えたのに。
また明日も40km近く歩くの?!
私の予定は、明日も貯金を使って楽なもの。17kmしか歩かない。
だから、前半がんばって距離を稼いできた。
なにしろその後に、42kmを歩かなければならないタパが控えていたのだから、ここではゆっくりしたかった。

シャワーを浴びたヘスースと一緒に、街の見学に出かけた。
カテドラルを見学して、インフォメーションに行って、そしてまたカテドラルの前に戻って話をした。
ヘスースは、小さな声で静かに話す。
昨日会ったレオナルドの話になった。
『銀の道』をセビリアから歩いた人に会ったよと言うと、
「えっ?レオナルドに会ったの?まだ歩いているんだね。」
と言って、10日以上前にサンビセンテで写した彼の写真を見せてくれた。 私はふと、彼に聞いた。

「ヘスースは英語は喋れないの?」
ダビデとは、時々英語で話したことがあった。
「できるよ。」
「え〜〜〜〜っ?早く言ってよ!」
ここから、会話は英語になった。
そして、
「明日はマリアが来るよ。」
この頃の私は、マリアのことは、まだ顔見知り程度で、馴染みがなかった。
「マリアはとってもいいコだから、一緒に行くといいよ。」
昨日会った連中は、いい人達だけどやたら歩きが遅いし、あの男らしいグループは、親切だけど、そこに私の居場所があるかどうか・・・疑問だ。
ヘスースがこのまま居てくれることを願ったが、彼の考えもある。
初日から数日間一緒だった巡礼達の顔が浮かんだ。
二日目に同じ部屋で楽しい思い出があった、ヘスースおじさん、フランス人の二人、マットをくれたウリたち四人組、マックス四人衆・・・・・。
また明日になったら、徐々に彼らと再会できるに違いない。

「夕食の食料を、早めに買いに行った方がいいよ。今日は日曜だから。」
スーパーなどの食料品店は軒並み閉まっている。
内心、Barで食べればいいんだけど・・・と思うが、ヘスースにつきあうことにした。 今日はケーキ屋さんくらいしか開いていない。
甘いケーキとビール(!!!)を買って巡礼宿に戻った。
ヘスースは、常備している食パンに、パテを塗って食べると言う。
ビールも飲まないし、Barで食べているところを見たことがない。
いつも食パンとか缶詰を持ち歩いている。
んんん〜〜〜っ、彼はいい人だけど、いつも一緒にはいられない。

 

8/18 Gontan / 174.5km

ヘスースと一緒に巡礼宿を出る。
あれ?矢印がない。
「君の地図ではどうなってる?」
「すっご〜く道がクネクネして、左の方へ行ってるよ。」
それをヒントに進むことが出来た。 だいぶ明るくなって、
「じゃ、僕は行くね。」
最後に写真を取り合ってお別れだ。
その後もヘスースとは、携帯メールでやりとりし、帰国までそれは続いた。

ダビデも帰っちゃったし、ヘスースにはもう追いつけない。
一番最初に友達になった二人だった。
でも、なんだかマリアと会えることが楽しみになっていた。
ヘスースと話しているうち、仲良くなれそうな予感がしてきた。
「昨日の朝、マリアと一緒に歩いたんだ。彼女はすごくいいコだよ。」
よく笑うコとしか印象にない。
二日目のあのマットレスの小さい巡礼宿から一緒だったマリア。

今日も、ポーランド人の親子が、二人して並んでおしゃべりが途切れることなく延々と続く。
サンティアゴに着くまで・・・?
いや、その後もずっと会話は続くのだろう。
そしてしばらくすると、草の上に仲良く座る。
今まで無愛想だったお母さんが、やっと私に慣れたようで話をするようになった。
「今日はどこまで行くの?」
「Abadinよ。」
と私
するとお母さんが
「Gontanだよ!」
地図を見ると、Abadinに巡礼宿の印があるのに。
500m手前のGontanだと、そう言い張る。
それを聞かなければ、きっとGontanを通りすぎていただろうに、実際Abadinの方には宿はなかったので、助かった。
これまでもそうだけど、いつも、こんな風に必要な情報やヒントが、ちゃんと入ってくる。
今日も距離はないから、余裕である。
それでも、途中ですごい勢いの三人組に追い越された。
初顔である。
若い男の子三人組で、無口でクール。 スペイン人のような顔をしているが、にこりともしない。
後でわかったが、イタリア人の三人組で、とにかく早足。
そして朝も早い。休憩も短い。無駄なおしゃべりはしない。
モクモクと歩く、かっこいい三人組だった。

目的地の5km手前の地点に、なかなか辿り着けない。
ようやくBarがある村に到着。
とりあえずBarに入ってビールを一杯。
おつまみは豚の皮を煮たもの。 親切な常連さんが、取ってくれた。
「Gontanて町まで、あと何キロですか?」
「ここがGontanだよ!」
なぁ〜んだ、なかなか着かないと思ったら、到着していたのだ。

巡礼宿に一番乗りしたのは、イタリア若者三人組。
二番がポーランドの親子。
そして私は三番目。 次に、ドイツ人三人組。こちらは結構バスを使っている。
そしてその次にやって来たのが、マリアだった。

マリアは私に気づき、抱きついてきた。
マリアも私のウワサや話をヘスースたちから聞いていたので、親近感を持っていたのだ。
「ヘスースおじさんはどうした?」
ビルバオから来た、もう一人のヘスースのことをマリアに聞いてみた。
「後で来るけど、教会のとこで、『僕はもう歩けない、ハァハァ・・・』ってくたばっていたわよ。」
マリアとヘスースおじさんは、ほぼ同じペースで歩いていて、朝は一緒に歩いていることも多い。
実際は仲良くもないと言うのだが、なぜか歩くペースが同じなのだ。
「今日は24kmを4時間で歩いちゃった!」
マリアもすごい早足なのだった。
一人出来て、特に仲間も作らず、毎日出会った人達と仲良く楽しくやっている。
まだ21歳なのに、素敵なコだと思う。
急接近した私たちは、12時に始まる巡礼宿の受付を済ませて、買い物にでかけた。 「今日はパスタを作って食べよう!」
早速お湯を沸かした。
「マリアはね、料理を作ったことがないの。いつもお母さん、妹、ボーイフレンドも作ってくれるんだけど、マリアはやらないの。」
と言いつつ、今日は作ってくれるみたいだった。

後で来た、スペイン男組(7人組)も、キッチンで準備をしていた。
全員の分を作るらしく、材料が置いてあるけど、そちらは豪華そう。
サラダも作っていて、切ったトマトを味見させてくれた。
マリアは、お湯が沸く前にパスタを投入しようとして、男組にさとされる。
「まだだよ。塩は入れたの?」
こんな感じだけど、できたトマトパスタはさっぱりとして、おいしかった。
ここ数日、こんなパスタを食べるのが夢でもあったけど、一人で作るのも面倒だった。
もちろん、ビルバオのヘスースおじさんもやってきたし、フランス人の二人組、ゴマとサムエルもやってきた。
過去の人と、未来の人、だいぶ顔が揃った。

ベッドルームへ行くとマリアは
「このブロックに、ヘスースおじさんが来ないことを祈るわ。ヘスースったら、イビキがうるさいのよ!」
しかしやはり、すぐ近くにヘスース、ゴマ、サムエルがやってきた。
懐かしい、二日目の巡礼宿で同じ部屋になった面々だった。
「この近くに湖があるいい場所があるのよ。行きましょう!」
足を冷やすのにいいかも!
ついていくことにした。

そこは湖というには小さかったが、きれいな水がせき止められて、池のようになっていた。
「ここで去年はパーティーがあって、巡礼者もみんな招待されて、すごく楽しかったのよ。」
「去年もここを歩いたの?」
「そうよ。だからいろいろ知っているの。私のボーイフレンドはね、歩くのが嫌いなので、いつも一人で来るのよ。」
私は足を水に浸し、マリアはそれを近くで見ていた。
「サンタンデールから歩き始めたんだけど、最初はずっと、ドイツ人の男の子と歩いていたの。その子って、すごくいいコなんだけど、ぶっ飛んでいるのよ。海辺に泊まった時なんか、夜中の12時に泳ごうって海に入ったのよ。クレージーなの。ものすごく自由で。休憩するのが大好きでね。動作もすごくゆっくりなの。朝は準備と朝食に1時間半かかるのよ。最初の十日は、ドイツ人てものを理解しようとして、頑張って一緒にいたけど、彼といたら全然進めなくて、途中から『バイバイ!先にアルベルゲ(巡礼宿)に行って待ってるわ。もしあなたのベッドがなくても、それはそれで仕方のないこと』こう言って、別 れたの。あんなに自由奔放な人間に会ったのは初めてよ。」
私は頭の中に、勝手にこのドイツ人の顔を描いていた。
ヒッピーの風貌を想像し、そんな人もいるんだーと感心した。
ベランダで休んでいると、昨日から一緒になった、中年三人組のおじさんが、隣に座った。
この人達も、バレンシアから来ている。
おばさん二人と、おじさん一人。 一人のおばさんとおじさんは従兄弟らしかった。 おじさんは、バレンシアの観光案内をたくさんしてくれた。
そしてバレンシアと言えばお米。日本人と米の話。日本人はお米を消化するため、腸が長い・・・なんて話をして、大笑いしていた。

マリアと男組は初対面 だったが、すぐに仲良くなったようで、カードゲームをしている。
ドイツの笛吹きおじさんは、相変わらず笛を吹いているが、もうあまりお客さんは聴いていない。
でも、彼は男組が世話をしているようだった。
食事を作るのも彼らだった。
笛吹きおじさんは、かなり高齢のようで、酔っぱらっていることが多いが、歩くのがやっと。
彼につきあっているから、いつも到着が遅れるのも事実。
でも、決して見捨てないとこが男らしかった。

電話が鳴った。
フェルナンドからだった。
彼は、四年前の巡礼以来のつきあいになる。
「巡礼帰りに、好きなだけ、うちに泊まっていいよ。」
フェルナンドの家は、ここサンティアゴから、さほど遠くはない。
当初の予定では、遊びに行く予定だったが、後に予定が変わって、結局は会えなかった。
過去の巡礼仲間は、今も変わらずに、再び巡礼している私を、応援してくれている。 一番最初に電話をくれたのは、ラファだったし、ロベルトやマティウスとも話した。(どちらも2006年「北の道」)
「銀の道」で知り合ったイサベルは、一番頼りになるアネゴだから、時々様子を聞いて、アドバイスをくれる。
同じ仲間のイワンに連絡を取ったが、アメリカに旅行中で、携帯が通じなかった。後で、そのイワンに、来年の五月に子供が生まれると聞く。
そして、ホセも「銀の道」の仲間であるが、なんと彼とは、後日、フェニテーレに行く途中の巡礼宿で、ばったり再会したのだった。

雨が降る中を延々と歩く
港に到着したけれど・・・
工事中の橋
タクシーのおじさん
線路
よく見ると、矢印が・・・
今日の巡礼宿
笛を吹くおじさん

紅一点のエステル

食物倉庫の下が巡礼路?!
カテドラル
今日の巡礼宿
室内
柔らかくておいしいタコ
今日でお別 れのヘスース
ポーランドの親子
マリア
マリアが作ってくれたパスタと
マリアが連れていってくれた池
足を氷で冷やすゴマとヘスースおじさん
今日の巡礼宿の室内