ビスケー湾を目指せ!
翌朝は再びあの橋を今度は列車で渡った。
橋の上にさしかかると、列車はスピードをゆるめ、そして止まった。 乗客達は立ち上がり、東側のトゥイの村が見える窓に寄ってカメラを構えだした。これが粋なはからいの撮影タイムであったのか、安全のためなのかは定かではない。
ここからビスケー湾に面するラ・コルーニャを目指して列車は進むが、途中のカトリックの聖地、サンチァゴ・デ・コンポステーラに立ち寄ることにした。
信者は国内外から歩いて巡礼をする。私たちは時間が限られていたので、駅に荷物を預け、とにかく丘の上のカテドラルに向って歩き出す。
まず、その大きさに圧倒される。ロマネスク洋式の建築物で、その堅固な表情は、ポルトガルのマヌエル洋式に代表されるような、繊細さや、今にもとろけだしそうな(または崩れ落ちそうな)あやふやな魅力やもろさはない。ここを目指して集まってきた信者の圧倒的な熱意が発散されている。
いつか時間とお金に余裕がが出来たときに、フランス国境からここまでの巡礼の道をたどることが、私の現在の夢である。
その時に迎えいれるファザードは全く別の顔を見せてくれるのではないだろうか。
足早に坂を下って駅に戻る途中にバルに立ち寄り、ワインとチーズで軽いおやつにしたが、どちらも格別
においしかった!
北の最果ての街、ラ・コルーニャは以外にも都会であった。 道行く人もセンスの良い都会風のファッションで、皆、忙しそうに歩いている。
だからと言って私たちを失望させるようなことはなかった。
その理由のひとつが、食べ物が美味しいことと。私たちは可能な限り、食を探求した。
ここは海に面しているので魚介類が豊富で、プリプリした小海老のサラダや蛸の料理(茹でてパプリカをふっただけ、でもおいしい)などなど。そして白ワインの美味しいこと!(私は赤ワイン党であるが)味はさっぱりとしたフルーティーなのにこくがあって、とろっとした舌触りだ。一つのバルでは地酒のように樽から出して、日本の酒杯に似た高台が付いた白い陶器の器で出された。
また、生ハムとチーズ専門のバルもあり、ここの程よい塩加減と柔らかさのハム(生ハム)の美味しさは忘れられない。
デザートのプリンがこれまた美味しくて、私たちはもうフラフラになるほど堪能していた。
こういったバルのハシゴはスペイン旅行の大きな楽しみの一つである。
話は前後するが、港に面したこの街の中心の通りには、ビル一面が硝子窓におおわれていて、新しいビルから古いビルまで立ち並ぶ様は壮観である。
また港とは逆に五分も歩けば今度はそこに砂浜が広がっている。潮の香りが充ち満ちた街である。
今回初めて訪れたスペインのガリシア地方へ行って驚いたことは、緑の深さだ。 これは一年じゅう雨が降っているためであろうが、いわゆるおなじみのスペイン的なイメージ風景とは異なって、その気候風土は人間の性格や生き方にも影響を及ぼす。
そんな新たな発見を通して、つくづくスペインの大きさ、幅広さ、奥の深さを感じた。



