エドちゃんとマドリッド

エドちゃんはロンドンでフラットシェアしていた仲間である。
彼の出身地はカナリア諸島(スペイン)で、現在はお父さんがそこに住んでいて、お母さんはマドリッドで暮らしている。
私と共にその2カ月前に卒業した彼はロンドンを引き払い、就職が決まるまでお母さんの住むマドリッドに身を寄せていた。(その時は結果 待ちの状態であったアウディにデザイナーとして現在に至るまで働いている。)

マドリッド、アトーチャ駅までエドちゃんが迎えに来てくれた。
それから10分後、仕事を午前中で終えたお母さんが車に乗って登場。その日に夜行に乗るまでの半日間のマドリッド観光の始まりだ。
アトーチャ駅からマヨール広場まで伸びる大通りには大きな門のような形のビルが道の両側から二つ、それぞれ道の中央にむかって建設中であった。お昼の時間帯だったので、食事に行く人たちの車で混雑していた。 そんな渋滞でも退屈しないように(?) ユーモラスなボッティーロの彫刻が道の脇に並んでいて、さながら野外彫刻館のようだ。 私たちは車のなかからそれらを鑑賞した。
そして、まずはバルへと繰り出す。
お目当ての歴史あるバルは残念ながら長期の夏休みをとって休業中。外壁は華やかな絵が施されたタイルで覆われ、内装の美しさは想像に委ねられるのみであるが、残念である。
結局、お腹が空いて機嫌が悪くなってきたエドちゃんをなだめてふたたび車に乗ってバルと呼ぶには高級すぎるレストランに入った。ここでは典型的なスペイン料理が出され、チャーミングなお母さんが下手な英語でごめんなさいと言いながらも、一生懸命マドリッドの生活について語ってくれた。 最後に飲んだピーチのリキュールがとてもおいしかったが、その頃には皆、いい気持ちになっていた。
そのあと、マヨール広場や王宮といった典型的な観光も取り入れて、下町の街角やお店ものぞき、古いカフェでコーヒーも飲んで盛りだくさんの一日だった。 そして夕日が沈む頃になると、丘の上に連れて行ってくれ、真っ赤な日没を鑑賞した。
最後に巨大スーパー、ジャンボでお買い物の後、お母さんのマンションに案内され、ミルクコーヒーやお菓子をご馳走になった。 今日は忙しくて掃除をしていないのよと言うけれど、きれいに片付けられた趣味の良い部屋だった。マドリッドという都会で、これだけのスペースに一人暮らしができるなんて優雅である。部屋には二人の息子の写 真がたくさん並べられていた。

今まで、わたしにとってマドリッドと言えば、プラド美術館くらいしか見るものがないと決め込み、何度となく乗り換えで来ていても、興味のない場所であった。大都市だったらバルセロナやセビリアの方がいいと思っていた。 でも、エドちゃんに言わせると、マドリッドはゴージャスな所だという。 確かにその日見たマドリッドはゴージャスであった。他のどの都市にも負けない風格があった。

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