これがフジミ1/700海底軍艦轟天号のパーツ群。
左の2つが儀装関係のパーツで、真中の赤いものが船体下部、そして右端が船体上部となる。船体部分の上にある青いタグの中にはシーウェイモデル(ウォーターラインモデル)とする場合のウェイトが入っており、更にその上に透明パーツ、ビス、ネームプレートが見える。
若干ピンが甘くて申し訳ないが、パーツのきちんとしたレポートは次回以降に行う予定なので、まずはパーツ構成概観として見て頂きたい。
船体下部の赤いパーツのうち、向かって左側のものはシーウェイモデル用の喫水線プレートで、向かって右側がフルハル用の立体部品である。
パーツのキレの良さでは定評のあるフジミのタッチが存分に生かされたパーツの出来である。
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まずはインストに注目してみよう。
左は組み立て説明図の最初の2つの行程のピックアップで、製作は艦橋部分から始まる。艦橋の形状や儀装類など、撮影用モデルを綿密に参考にした成果が現われているのが実感できる。
セイルに付く潜航舵は展張状態と折りたたみ格納状態のコンパチとなっている。
前後の長さが31mm強の艦橋部分(C13、14の全長)でこれだけの精度を出しているキットの精密さが実感出来るだろうか?潜望鏡やマストなどの部品は精緻の一語に尽きる繊細さである。 |
次は電子砲塔の組み立て。撮影用モデルでの砲身は中央部分に透明なバルジが付くが、これを表現する為に7mm足らずの部品にも拘わらず、通常パーツと透明パーツの2種類が用意されているという凝りようだ。
このバルジ部分の実際の設定は、不透明な砲身の中ほどを透明な筒が現用戦車のエバキュエーター(排煙器)のように取り囲んでいるものなので、透明部分の更に「芯」にあたる所に砲身が通っている。
しかし1/700のこのスケールでは砲身直径がシャープペンの芯と同じ0.5mmで、外側の透明部分でさえも直径が0.8mm…つまり砲身を取り囲む筒を再現する場合筒の肉厚が0.15mmというものになってしまう為、実現は不可能である。そこでフジミの設計陣は透明、不透明の2種類のパーツを準備してユーザーに選択の余地を提供してくれた訳である。
不透明部品を使ってバルジを塗り分けるも良し、透明部品でバルジの透明さを主張するも良しといった所である。
撮影用の2mサイズの大型モデルのスチールでも砲身の「芯」は殆ど確認出来ないので、多くのモデラーはセールスポイントでもある透明部品を活用すると思われるが、この部分はスケール上の制約に対するメーカーのひとつの回答といえるだろう。 |
次は少しとんで船体下部の儀装部分を紹介しよう。
艦首潜舵、カッター、三角翼は全て可動ギミックで再現されている。
C19を基部とするギミック部分の組み付けは一瞬「連動ギミックか?!」と思うほどの複雑さであるが、ここは単純に個別可動となる。
ユーザーサイドではメーカーの指示通りに組んでいけば良いだけなのだが、設計者の視点でこの部分を見ると、単に垂直、水平な可動方向だけではなく、正面から見た時に左右に45度づつの取りつけ角度を有するカッターの支持部分の設計などに苦心の痕が偲ばれる。部品C19のW型アームがそれである。 |
先のC19部品の設計図面部分。これはフジミから特に許されて掲載させて頂いた貴重なもので、普段は門外不出で一般ユーザーが目にすることはまずないだろう。記載は全てミリ単位である。
このような部分展開が数個で1枚の図面に納まっているが、その図面がこの「轟天号」だけで数十枚にのぼる!
我国で国産プラモデルが産声を上げて40年が経ち、今ではこのような高度な技術をベースにプラモデルが産み出されている事にあらためて感動を覚えずにはいられない。
これを考えるとこのキットの2,300円という価格、あるいは一般的なプラモデルという商品の価格が決して高価なものではないと思えるのだが如何だろうか? |